表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/36

二十話 オルディング商会の冒険者

天は未だ暗く星が明るく輝いている・・・夜明けまでもう暫くの時を待たねばならない。

小次郎はいつも通り目を覚ました。

隣のベッドで寝ていたはずのアイリスはいつの間にか小次郎のベッドに潜り込み丸くなっている。

アイリスを起こさないようにそっとベッドを出ると脇に立て掛けていた刀と翻訳のランプを取り部屋を出る。

中庭に出た小次郎は車から木刀を取り出し周りに誰も居ない事を確かめると、日課の稽古を始めた。


空がうっすらと明るくなり始めた頃、物陰からこちらを伺う気配が在る事に小次郎は気づいたが気にせずそのまま続けていると、だんだんその気配が増えてきていた。

いい加減にうっとおしくなった小次郎は一旦稽古を止めて物陰に潜む気配へ向け懐から抜き出した手裏剣を振り向き様、無拍子で打ち放った。

庭に置かれた空き樽へ子気味良い音を立て突き刺さると《うおっ》という声と共に一人の男が転がり出た。


「覗きとはあまり良い趣味では有りませんよ?」


転がり出た男へ声を掛けつつ木刀を手放し、側に置いていた刀を手に鞘を抜き放った。

視線は男から離さずに斜の構に取る。


《まままっ まってくれ、覗いていた事は謝るっ、しょっ商会長のお客人が庭先で木剣を振り出しもんだからっ気になって見ていただけなんだ》


転がり出た男は慌てて両手を前に突き出し謝罪した。


《昨日は商会長が襲われたって言うんで、今夜は店の夜回りの人数を増やしてたんだよ》


そう男が言うと後ろの物陰からさらに3人程、胸当てと剣や槍を身に着けた男達がバツの悪そうな顔をしながら出た来た。


「ふむ・・・警備の方でしたか、それとは知らず失礼しました」


頭を下げると鞘を拾い上げ鯉口や内部にゴミが無いかを確認して刀を納めた。


《いや、勝手に覗いていた俺達も悪いんだ気にしないでくれ》


少しほっとした様子で男が言うと


《俺はこのオルディング商会で雇われてるパーティー大河のレイルって者だ、後ろの奴らも同じだ》


剣士風の男がルストだ、盾と剣を持った男が俺はメイトス、槍を持った男がオイゲンと名乗った。

小次郎もそれに答え


「大平小次郎と申します、こちらで暫くご厄介になります。よろしく」と、短く挨拶を交わした。


少し気が緩んだところで小次郎はポケットから煙草を取り出し咥え、火を付けた。

《お客人、あんた金持ってるんだな》

「は?」

レイルが煙草を見ながら言った言葉に小次郎は思わず間抜けな返事をした。


《煙草さ、俺らみたいな中級に成り立ての冒険者風情にはとても手が出んような上物の香りだ》

「なんだ、吸いたいのか?正直言ってあんまり体に良い物ではないぞ?」

《ああ、そう聞いてはいるがな・・・上級冒険者達が吸っているのを見るとな吸ってみたくもなる》

「吸うかい?あんたらも」


そう言いながら箱をレイルに投げた。


《おっと、良いのか?》


レイルは遠慮気味にタバコを取り出して其々に行き渡らせた。


「ここには暫く厄介になる、まぁご挨拶みたいなものと考えてくれ」


《お、おう。じゃ・・・遠慮なく》


そう言うとレイル達は指先に小さな火を生み出して煙草に火を付けた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



《へぇ、じゃあこの辺りに工房を構える気なのか?》


「ああ、出来ればそうしたいと思ってる」


小次郎とレイル達は円を書くようにしゃがみ込んで煙草を吸っている。

所謂ウンコ座りである。


「鍛冶場と住処の紹介をしてくれるそうなんだ、住処が決まるまで此処に置いてくれるって言うしな・・・有り難い話だよ」


そう語りながらもう一本、ポケットから新たに出した煙草に火を付ける。


《所でオオヒラさんよ、あんたがさっきやってた剣技だがこの辺りじゃ見たこと無いな、何処の国の剣技だい?》


「んー、なんと行ったら良いのかな・・・」


少し小次郎は考えてから良く有るテンプレな答えを返す事にした。


「遥か東・・・海を越えた先に日本という小さな島国があってね其処が私の故郷なんだ、その故郷に伝わる武術だ」


《では、その剣もか》


ついっとあごで示した先には小次郎の腰に差した打ち刀(うちがたな)があった。


「ああ、あんたらには珍しいかも知れんがうちらにとってはこれが普通の形だ、刀って言う」


《成る程な、見た所その剣・・・刀だったか、は鉄製なのか?》


ルストが聞いてきた。


「ああ、鉄製だよ」


《鉄の剣ってのはどうなんだ?俺たちは皆、青銅の武器を使っているが》


「使い方次第だろうよ、青銅は重さを利用して突き抜いたり叩き割るには都合の良い素材だが切り裂くのは鉄の方が向いてる。あと、鉄の方が若干軽い」


《へえぇそう言う物か》


「何でもそうだろ、其々に利点は有るんだ何をどう使うかが大事だと思うよ。ま、私は鉄が専門だから青銅はそんなに詳しくないがね」


そう答えるとポケットから携帯灰皿を取り出して

「吸殻はこれに入れてくれ、人様の敷地にゴミをポイポイ捨てる訳にはいかないからな」


そう言うと男たちは慌てて足元に捨てた吸殻を拾いなおし灰皿に捨てた。


もう空はすっかり明るくなっている。

宝石の鑑定には数日は掛かるだろう、結果を待つまでの間何をしようかと小次郎は思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ