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十三話 星空の下で

星空の下でのんびりと夕食のをとる。

焚き火ではなくカセットコンロを使っているので、すぐに準備は終わってしまった。

コンビニで買ったアンパンは悪くなってしまいそうなので先に食べてしまう。

街で買ったパンと魔物の肉を塩漬けにした物を焼いて挟んだ簡単な食事だがそれなりに美味かった。


夕食も終わり、特にやることが無いのでアイリスに日本語や英数字を教えながらまったりと過ごす。

もう使わないであろう古物台帳にしていたノートを使わせ、書き取りをさせてみるとやはり頭は良いようで、あっという間に仮名文字は書けるようになった。

単語は中々難しいようで「う~ん、う~ん」と唸っている。


「そう簡単には覚えられないさ」

時間はあっという間に過ぎ、時計は午後9時を指していた。

「続きはまた明日やればいい、もう寝よう」

寝袋と毛布を広げながら小次郎は言った。


眠るにあたって、アイリスに寝袋を使わせようとして一悶着あった。

自分だけ良い物で眠る事は出来ないと譲らないのだ。

結局、小次郎が折れて寝袋のファスナーを全開にして、敷物の様に使い2人並んで寝る事になる。

なるべく間を空けようとするが、しっかりと裾を掴まれてしまう。

また、自制心との戦いの夜が始まる。


深夜、小次郎はそっと目を開けた。

アイリスは小次郎の腕を枕にして静かな寝息を立てている。

そっと、起こしてしまわないように注意しながらテントを離れる。


少し離れた場所に移動し、ここ数日怠っていた稽古を始めた。

小次郎は常日頃から道場での稽古以外は深夜に一人稽古をする。

他人に稽古をしている所を見られるのがあまり好きではないからだ。

人によっては見せ付ける様にする者も少なくないが、努力とは人知れず行う物だとの信念からそうしている。

ゆっくりと木刀を振る。

力を入れず、芯はあるがあくまで動きは柔らかく、緩急を付けず等速で。

体が温まった事を確認して、木刀から棒に道具を変え、ゆっくりと棒の素振りを行う。

素振りを十分に行ってから形の稽古を始める。

全ての動作をゆっくりと確認するように丁寧に・・・。

空が明るくなり始めるまでじっくりと稽古を行い、車に戻った小次郎はポリタンクから水を出して頭と顔を洗い、タオルを濡らして体の汗を拭った。


テントに戻った小次郎は夜が明けるまでの数時間、もう一度眠りに就いた。



目を閉じて眠ろうと思ったその時、遠くから馬と思しき足音と車輪の音が近づいてきた。

その後を追うように、さらに馬の足音が聞こえる。

「□□□□□ー□□」怒声のような声だった。

すぐに身を起こして辺りを見回す。


道から外れた平原に居る小次郎たちから少し離れた所を馬車が走っている。

後ろには馬に乗った者達が見える。

「アイリス、起きろっアイリス」アイリスを揺すり起こす。

寝惚けた顔でもそもそと起き上がったが、馬の足音と叫び声を耳にして一気に目が覚めたようだ。

小次郎にしがみつきながらも馬車の方を見つめ、例の翻訳呪文を唱える。

《盗賊のようです》

「盗賊?そんなのが出るのかこの辺りは」

《どこにでも居ます、それよりもどうしますか?このままでは彼らに見つかってしまうと思います》

車体は白だし横にテントも有る、確かにこのままでは見つかるのは時間の問題だろう。

盗賊が目撃者を放って置くとは思えない。


「アイリス、テントの柱と車を結んである紐を切ってくれ、テントは後で回収する」

愛用の剣鉈を渡すと《解りました》と短く答え、すぐに行動に移した。

小次郎は運転席に飛び込み、エンジンを始動させる。

エンジンの始動音に気付いた盗賊がこちらに数騎駆けて来る。

開け放った運転席にアイリスが回り込み《大平様、紐は全て切りました》と叫ぶ。

「早く乗れっ」手を伸ばして引き上げ、膝の上に座らせたまま小次郎は急発進した。

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