十二話 野宿
街を迂回して暫く進んだ所で日が陰って来たので見通しの良さそうな所を選び車を止めた。
暗くなる前に野宿の準備を終えるために急いで荷物を漁り、仮設テントを取り出す。
テントと言ってもフリマ用に買った屋根しかないタイプの物だ。
オプションのサイドタープも有るが四方は覆えないし、地面はブルーシートを敷くしかない。
車のホイールに柱を結び付けてさらにアンカーで固定する。
アイリスは短時間で組み上がるテントに《はぁ~》と、驚きの声を上げている。
仮眠用の寝袋も1つしか無いが出しておく。
後は買った毛布で何とかするしかない。
幸い季節は夏っぽいので大丈夫だろう。
後は折畳みの椅子とテーブルを組み立てて準備完了となった。
「よし、これで寝る分には問題ないだろう」
《すごいです、野宿って言うから車の中で寝るか外で毛布に包まるだけかと思っていました》
「そんな事はしないよ、暖かい季節とはいえ夜露は体に悪いからね、最低でも屋根が無いとダメだよ、車の中では足も伸ばせないし疲れが取れないからね」
《それにしても、あっという間にテントが完成しました》
そう言いながらテントの中に入って《は~》とか《ほ~》とか言っている。
「さぁ、夕食の準備をしよう。今日はお昼を食べていないし、おなかがすいているだろう?」
《お昼ですか?》
「ああ、朝にご飯を食べてから何も食べていないだろ」
《はい、そうですが普通はお昼は食べませんよ?》
「へ?食べないの?」
《はい、食べません。お昼を食べるのは裕福な方々だけで、普通の人たちは朝と夜だけです》
それが当たり前であると答えるアイリスこ小次郎は驚いた。
村で出された食事を思い出し、あれ2食で普通の人は済ませているのかと思うと少々ショックだった。
「それでは栄養が足りないじゃないか、途中でお腹が空いたりしないのか?」
《もちろん、お腹は空きますが・・・3食も食べていたら暮らしていけません》
暮らしていけない・・・その言葉に現実を突き付けられた気がした。
だから、だから、アイリスはこんなに痩せているのか、16歳にしては手足が骨ばっていて、背もあまり高くない。
元居た世界の同じ年頃の子と比べると、余りにも貧弱そうだ。
「じゃあ、今日もお腹は空いていたのか?」
問いかける小次郎に《いつも・・・お腹は空いています》アイリスはそう答えた。
迂闊だった、成長期の子供なのだから当然の事だ。
自身が偏食で不定期な食事をしている為に全く気にしていなかった。
自分に引き取られたのだから、おとなしい性格のようだし、我侭を言えるはずも無い。
気の利かない自分に怒りを覚えつつ、今後はもっと注意しなければと反省した。
「アイリス」
《はい?》
「うちの食事は1日3回だ、場合によっては間食もする。特別な場合を除いて、食事を抜く事はしない。勿論、君も同じ食事をするように」
そう言うとコンビニ袋に残っていたパン等を車から取り出した。
「食事の準備をしてくれ、私は料理が下手なんだ」
キャンピングセットから卓上コンロを取り出し、テーブルの上に乗せながら言った。
《あ・・・はい、解りました》
食事の準備を始めたアイリスを横目に車からタバコを取り出し火を点けた。
「ふぅーっ」
少し離れた所で煙を吐き出しながら数日振りに味わう酩酊感に小次郎は酔っていた。
アイリスが傍に居る為、匂いを気にして我慢していたが限界だった。
クラクラする感覚に身を任せ地面に座り込みながら、また一口。




