十一話 街へ入れない?
車が街の入り口に近づくにつれ、わらわらと兵隊が門の外に10人位出てきて明らかに警戒している。
「そりゃそうだよな、見た事も無い変なのが現れたら警戒もするよな」
《どうしましょうか》
「とりあえず、ここで車を止めて降りて話をしたほうが良さそうだね」
そう言い車を止めた。
「あまり車からは離れない方が良いかな、悪いが彼らと話をしてくれるか?」
《はい、それは構いませんが何と言えば良いのでしょうか》
「う~ん、とりあえず行商と住む場所を探すのが目的と言ってくれ。危険を感じたらこっちに向かって走れ、すぐに助けるから」
《分かりました》
そう言うとアイリスは車を降りて門に向かった。
単眼鏡で会話する様子を見ながら小次郎はいつでも急発進する用意をしていた。
なんだか困ったような顔で会話するアイリスと兵の姿が見える。
やがてアイリスが戻って来た。
「どうだった?」
《あの、得体の知れない物を街に入れる訳には行かないと言われてしまいました・・・ごめんなさい》
まあ、当然だよな。その為の門番だろうし
「どうしたらいいと思う?」
《車を降りて徒歩で入るのなら入れて貰えると思いますけど》
「困ったね、出来るならあまり車からは離れたくないな」
これでは家を探すどころではないな、さてどうしたものか・・・これでは他の街もダメになりそうだよな、とりあえず、野宿を考慮にいれて少し物を買っておくか
「仕方ないな、とりあえず、君だけで街に入って買い物をして来てくれるか?」
《えっ?》
「一人だと心細いか?」
《いえ、大丈夫ですが・・・。》
「なら、野宿する事になるかもしれないから、それに必要な物を考えて買ってきてくれ。毛布とかも有るなら2人分、それに少し日持ちのする食料も数日分・・・お金は足りるな?」
《はい、お金は十分だと思います。私の荷物に調理道具が少しありますから量は少なくて済むと思いますし》
「お?あの荷物は調理道具とかが入ってたのか?」
《はい、使い慣れた物ですし》
「てっきり君の服とかが入れてあるのかと思っていたよ、買う物は君に任せるから行って来てくれ」
《分かりました、では・・・行ってきます》
少しの間何か考えた後、アイリスは街に向かった。
「・・・暇だ」
アイリスの帰りを待つのに門の傍はあまりよろしくないと思い小次郎は少し離れた所に車を移動させていた。
もう2時間は経っただろうか・・・そう思い腕の時計を確認するとまだ1時間程度だった。
街を出入りする人々は、あからさまにこちらを避けて行く。
そんな人々を眺めているうちに小次郎は暖かな陽気のせいもあってか、うとうととし始めた。
車に近づく足音に小次郎は目を覚ました。
荷物を大量に抱えたアイリスがよたよたと歩いてくる。
「お帰り、随分と大量に買って来たね」
車を降りて両手いっぱいに持った荷物を受け取りながら小次郎は言った。
《重さは無いのですが、日持ちのするパンとかを多めに買ったら前がよく見えなくなってしまって》
「そうか、何か大きめの袋を用意してあげれば良かったな、次から気を付けるよ」
そう言いながら荷物を車に積み込んだ。
「アイリス、さっき聞いた2つの街と王都、この3箇所で向かうとしたら何処がいいと思う?と言うか何処の町なら入れてもらえると思う?」
《う~ん、どうでしょう、鍛冶屋さんの技術があるならコレオスが良いと思いますが・・・入れてもらえるかは解りません。王都は多分無理だと思います。ロガンは最近、鉱石の出が悪くなったと聞いていますのでお仕事が少ないかもしれません》
「そうか・・・ならまずはそのコレオスとやらに行ってみるか」
《そうですね、その方が良いかもしれません》
「よし、では道案内よろしく」
小次郎はエンジンを掛け車を走らせた。
来た道を少し戻り五差路を曲がってから暫く進み、森に入る。
それなりに手は入れてあるのか、光が差し込み森の中は明るい。
道はある程度整備されていて思ったより速く森を抜けた。
森を抜けると川が見えてきた。
川には石積みで出来た中々立派な橋も架かっている。
橋の向こうには大きな街が見える。
煙突が幾つも立ち並び煙を吐いている。
「これを渡ればもう街に到着か、この街は工業が盛んな所と言っていたがどういった物を作ってるんだ?」
《えーと、青銅や木材の加工をしている筈です、街の先にある王都からの注文も多いと聞いています》
「ここには王都が有るって言ってたよね、この国は結構大きい国なの?それとも小さい国なの?」
《国としてはそんなに大きくないと思います。もっと大きい国が幾つも有るそうですが私は行った事がないので解りません》
「そうなのか」
《行商人や冒険者でなければ・・・普通でしたら、国から出た事の無い人の方が多いと思いますよ?》
「そういうものか・・・。」
転移前の世界では当たり前のように彼方此方へと出掛かりけていたが、確かに日本も昔は地元から出ずに一生を終える人は結構居たはずだ・・・。
そう思い便利な生活に慣れすぎていたんだなと小次郎は思った。
「さて、困ったね・・・」
橋を渡り街の入り口に近づくにつれて、見たことの有る状況が起こっていた。
街を守る兵が入り口に集まっている。
前の街と同じ・・・いや、それよりも兵の数は多い。
「これは入れてもらえそうな雰囲気じゃないな」
《はい》
「仕方ないか、街には入らず他を当たるか、もう一つ街が有るって言っていたね?」
《はい・・・でもこれでは同じ事になりそうです》
アイリスの言う事はもっともだ。
入れてもらえなければ彷徨うしかない、だが燃料が尽きてしまう。
どこかに拠点を作り燃料を作らなければ・・・。
「とりあえず、何処かに野宿できそうな場所を探そう」
時計は17時を表示している。
元居た世界との時間差は変わらないようで24時間で回っている様だと言う事は村に滞在している時に確認していた。
もう少しで薄暗くなってくる。
「鉱山が有る町に向かう道で良さそうな場所を探そう、案内してくれ」
《解りました・・・とりあえず、街を右に迂回してください。暫く進むと大きい道が有る筈です》
「わかった」そう言うと街を迂回した。




