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十話 街へ

街へ続く森を抜け、アイリスと出会った平原の道を進む。

《早いですね、もう森を抜けてしまいました》

「これぐらいに速度で走るのが一番燃費が良いんだよ」

《「ネンピ」ですか?》

「燃料消費率・・・この車は油を燃やした熱で動いてるんだよ、だから走る速さで油の消費量に差が出るんだ」

《油を燃やすと車が進むのですか?》

「エンジンと言ってね、狭い空間で燃料を爆発させて使って、その力で車輪を回してるんだ」

《エンジン・・・ですか》

「そのエンジンを車に積んであるんだ、詳しく知りたければ今度説明するよ」

《成程、是非お願いします》


前方に小高い丘が見えてくる。

左にある平原は小次郎がこの世界にやって来た時に居た場所だ。

「アイリス・・・」


小次郎は車を道から外れた平原に少し進み車を止めた。

「アイリス、私は君を引き取った。 君の事は家族だと思っている、だから・・・一度話をしておかないといけない事がある」

小次郎は助手席に座るアイリスをみつめながら言った。

《真面目なお話なのですね?》

「そうだ、信じてもらえないかもしれないが、事実だから良く聞いて欲しい」


そう言い、自分はこの世界の住人ではなく、魔法が存在せず科学技術が発達した異世界から何らかの理由で転移したらしい事を話した。

《それでは、大平様は異世界からやって来た方なのですね?》

「そうだ、自分でもなぜそうなったのか全く解らないが、気が付いたらそこに居たんだ」

そう言い、自分が気付いた時に居た辺りを指差した。

「だから、帰り方も解らないし、ある日突然元に戻るかもしれない」

《では、私はどうすれば良いのでしょうか》

「ああ、だから・・・」

そう言うと小次郎は換金した硬貨を入れた袋をアイリスに渡しながら言った。

「もし、私が消えても君が困る事が無いようにお金の管理は君に任せる事にする。元の世界に戻れば家もあるし、何とか生活できるだけの蓄えも有るから」

《ですが・・・》

驚いたアイリスの言葉を遮って続ける。

「勿論しばらく帰れない事を前提に行動するつもりだから、どこかに家を借りようと思う。だが、私はこの世界の常識や習慣を一切知らないからそれを補ってくれる人が必要なんだ」

《それを私に?》

「うん、私はあまり頭が良くないのでね察してくれると助かる有難い。その代わり、私が居る間に私が知る技術や知識を出来るだけ多く君に教えよう。もし、私が消えても君がその知識と技術を使いこなして生活できるように・・・」

《わかりました・・・いえ、良く解らないんですけれど、精一杯お仕えします》

そう言うと「うんっ」と言って気合を入れたっぽいが、仕草がかわいいのでいまいち締まらない。

「さて・・・では、街に向かおうか」

そう言いながらエンジンを始動させた。



丘を越えて森を抜けると街が見えてきた。


《見えてきましたね、あれが商業の街キャトルです》

「ここの他にも近くには街があるの?」

《近くはありませんが、この先にある5差路を右手前に行くと鉱山の町ロガンと右に行くと工業の街コレオスがあります。さらに、コレオスを越えて進むとエルン王国の王都です》

「ふぅ~ん、私は冶金技術にはそこそこの自信が有る、あとは土木技術が多少ね」

《ヤキン?ドボク?》

「ああすまん、鍛冶屋の技術を『やきん』と言うんだ、あと道路や川の工事の技術を『どぼく』と言うんだ」

《鍛冶屋さんなのですか?》

「ん~、正確にはなりたかったけどなれなかったんだ。私の居た国では刀や剣を作るには資格が必要でね、試験を受けるお金が無かったんだよ」

《そうなのですか。おかしいですね、そんなの実力が有るのなら自由に作って良い物だと思いますけど》

「私の居た国は魔物もいないし戦争も60年以上無い平和な所だったんだ、だから武器も必要なかったんだよ」

《ですが、身を守るために最低限の武器は無ければ困ると思いますが》

「うん、そうだね。だけど、それを法律で禁止していたのさ、だから資格が無いと造る事が出来なかったんだ」

《随分変わった決まりのある国だったのですね》

「ああ、自己防衛のための武装を禁止していたからね。私の武器も武術を学んでいるから、稽古の道具として所持が許されるといった具合だしね」

《なんだか、よく分かりません。頭の中がぐるぐるしてます》

「矛盾した内容だからね、混乱してるんだろ」

小次郎は笑いながら言った。


「さて、到着かな?そこに見える門がが入り口かな?」

そう言うと石積みの壁にある大きな門を指差した。


街は石積みの壁に囲われ、そこそこ大きい。

門には兵らしき姿も見える、と言うかこちらを指差している・・・。


あ~なんか、デジャヴュが

「アイリス君、なんだか村に着いた時と同じ様ないや~な感じがするのだが」

《そうですね、なんだか兵隊さんがいっぱい出てきました》

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