Time4
少年と店主は向かい合ったまま沈黙していた。
「もう、40年も昔の話・・・」
沈黙を破ったのは店主だった。
少年は黙ってその言葉に耳を傾けている。
「当時私は20歳で、普通の生活を送っていたのですが・・・・ある時家族が殺されてしまったのです・・・・・犯人は分かっていました。私にひつこく付きまとってきた男でした、その男は大金持ちでお金で犯行をもみ消したのです。私の家族を殺して私を脅せば私が自分のところに来ると思っていたようです。私は許せなかったその男も、殺される原因を作ってしまった自分自身も・・・・私は時間を戻したいと強く願いました。そして・・・この時計屋に出会いました。私は時間を戻しました。この時計屋で・・・けれど家族が殺されるのを止めることはできませんでした・・・・それどころか、私はあの男をこの手で殺してしまったのです。
いくら家族を殺されたからといって人を殺していいはずがありません!!私はあの男と同類になってしまったのです・・・・。そう思った時、私は時間を戻した時間に戻りたいと思いました、けれど時間を戻してしまえばもう戻れないと言われていたのです。私は途方にくれました。そして時間を戻した時よりも強く戻りたいと願いました・・・。
すると不思議なことに私は元の時間に戻れたのです。そのときの時計屋の店主さんも驚いていました。ものすごくまれに戻ってこれる人がいるの・・・だけど・・・戻ることのできた人は時計屋の店主にならければいけないの、だから私は今時計屋の店主をやっているの」
「前の店主さんはどうなったんですか?」
ずっと黙って聞いていた少年が口をはさんだ。
「・・・・お亡くなりになりました。」
店主は悲しそうな目でそう言った。
「・・・・・・どうしてですか?」
「時計屋の店主は、次の店主がみつかると同時に命をおとすの・・・・」
それを聞いて少年は沈んだ表情になり少しの間沈黙した。
「時計屋の店主はどうして不老なんですか?」
少年はずっと疑問に思っていたことを口にした。
「時計屋の店主をいつまでやるか分からないからよ。百年やるのか、一分やるのか分からないから不老なの。時計屋の店主も人間だから、骨になってしまっては店主はつとまらないでしょう。」
店主は少し笑いながら言った。
「最後に1つ教えて下さい。」
少年は店主の目を見て言った。
「なんでしょう」
「どうして時計屋の店主をやっているんですか?断ることはしなかったんですか?」
「断ることをしなかったんじゃないわ、できないの・・・運命だから。」
「運命?」
「そう運命。」
少年はそんなのおかしいと言おうとしたが言葉を発することができなかった、店主の目に迷いが一切なかったから・・・・
「最後だと言いましたが・・・・もう1つ教えて下さい。どうして僕に話してくれたんですか?」
少年が言うと店主はこう答えた。
「さっき最後と言ったでしょう。約束は守らないと・・・」
「・・・・そうですね!!」
少年は笑って言った。
「あなたがこの店を出た瞬間、あなたはこの店のことをすべて忘れてしまいます。」
店を出ようとしている少年に向かって言った。
少年は立ち止まり店主に笑いかけて店を出て行った・・・・。
「あなたに話したのは、時間を戻さず今を生きようとしているあなたになら・・・・と思ったからですよ。」
少年の出ていっった後店主は1人つぶやいたが、少年にその声が届くことはない・・・・・
そして今日も彼女は待ち続ける次の店主となる人を・・・・
「次のお客様はどんな人かしら。」
いつものようにつぶやいた。




