Time3
「時間が戻ればいいのに・・・・時計の針を戻したら時間も戻ればいいのに・・・・・時間が戻ればいいのに・・・・」
ハっと気がついた少年は見知らぬ所に立っていた。
周りを見渡すとたくさんの時計があった。
「どこ?ここ?・・・」
少年がそうつぶやいたのと同時に奥から店の店主である女性がでてきた。
「あら、お客様?」
その声の方に振り向いた少年は、綺麗な人だなぁとしばらくの間店主に見とれていた。
「どうなさいました?お客様?」
「・・・え・・・あ・・・・」
その声で少年は我に返った。
「えと、お客様って、ここ時計屋ですよね?僕別に時計はいらないですけど・・・・なんか気がついたらここに立ってて・・・・」
店の店主は笑って少年に向かって話し出した。
「ここはただの時計屋じゃないの。」
「ただの時計屋じゃないって?」
少年は不思議そうに尋ねた。
「時間を戻すことのできる時計屋よ」
店主の言葉に驚いて少年は言葉を発した
「ええ!?うそ!?時間戻すって・・・・ええ!?」
「あはは!!おもしろいわね君。」
店主はそう言って一呼吸おいてから真剣な顔で話し始めた。
「あなたはここに来る時、時間を戻したいと強く願ったでしょう。」
店主の真剣な顔を見て少年も真剣な顔で答えた。
「はい、時間が戻ればいいなぁって思ってました。」
「さっきも言ったけどここは時間を戻すことのできる時計屋なの。あなたのような人が訪れる店なのよ。」
「・・・・・・ここに来た人はみんな時間を戻してるんですか?」
少年は疑問に思ったことを聞いた。
「いいえ。時間をもどさなかった人もいるわ、だけど戻した人がほとんどですよ。」
「そうですか・・・じゃあ、時間を戻すか戻さないかは自由なんですね?」
「ええ、それはその人が決めることだから。」
「だったら、僕は時間を戻しません!」
少年はまっすぐ店主の目を見て言った。
「どうして?」
店主はおちついて少年に尋ねた。
「だって、時間を戻しても幸せになれないかもしれないから!!」
「時間を戻して幸せになった人もいるわ。」
「そういう人もいると思うけど、僕は戻さない!」
「どうして?」
店主はもう一度少年に聞いた。
「おかしいから!!」
「なにが?」
「だって普通同じ時間は二度とこないから、戻したいって強く願ったからってその人だけ同じ時間が二度くるのはおかしい!!」
「そうね。けれどその人にはその人の戻したい訳があるのよ。ここに来る人はとても重い訳があるの。」
「訳があるからって、時間を戻していい理由になるんですか!?だったらみんな訳をつくりますよ!?」
「ここには強く願っている人しか来ることはできないわ。」
「・・・・ここに来た人にはどんな訳があったんですか?」
少年は店主に疑問をぶつけた。
「お客様の個人情報は教えられないわ。」
「そうですか・・・じゃあ、あなたはどうしてこんなことをしているんですか?」
その問いに店主は驚いたような顔をして答えた。
「私のことを聞いてきた人は50年間時計屋をやっていてあなたが始めてですよ。」
「50年間!!??・・・てことは50歳を過ぎてるってことですよね!?」
すると店主は笑いながら答えた。
「ええ、そうですよ。」
「そんなに若いのに!?」
「私は不老なのですよ・・・・」
「え・・・どうして?」
「では、少し私の話をしましょうか?」
店主は微笑みながら少年に言った。
「はい。」




