Time2
「私はなんてことをしてしまったのだろう・・・・戻せるものならもどしたい・・・時間を戻したい・・・・・」
気がつくと彼女は見知らぬ所に立っていた。
そこには時計がたくさんあった。
彼女は早くでようと思うのだがそこから一歩も動くことができなかった。
「あら、お客様ですか?」
突然女性の声が聞こえて、その声のする方を見た彼女は同じ女性なのに見惚れてしまっていた。
「お客様、どうなさいました?」
その女性の声で我に返った彼女は話だした。
「私は・・・とんでもないことをしてしまって・・・・・そのことを考えていたら・・・ここに立っていたんです・・・。」
すると店の店主である女性は、少し笑って言った。
「それはあなたがこの店に来る意味のある人だからでしょう。」
「それって、どういう意味ですか・・・・?」
「あなたはここに来る前、時間を戻したいと強く願ったでしょう。」
「・・・はい・・・確かに私は時間を戻したいと思いました・・・・・でも・・・それが何か関係あるんですか?」
「ありますよ。ここはそういう人のための店だから。」
「・・・・・・・ここは、時計屋さんですよね・・・?」
彼女は訳がわからず店の店主に尋ねていた。
「そうですよ、ですが普通の時計屋ではありません。時間を戻すことのできる時計屋です。」
その言葉を聞いて彼女は、困惑よりも期待の方が大きかった。
「本当ですか!?本当に戻れるんですか!?戻れるのなら今すぐ戻してください!!」
「お客様、落ち着いて下さい。なぜそんなにも時間を戻したいのですか?」
店の店主はあくまでも冷静に言った。
「・・・・・・このことは誰にも言わないでください・・・・」
「もちろんです、お客様の時間を戻すのですから言っても私にはなんの利益にもなりませんし」
この言葉を聞いて安心した彼女は話だした。
「私・・・人を殺してしまったのです・・・・会社の上司なんですけど・・・私のことだけでなく私の家族のことまで悪く言ってくるので・・・ついカッとなって・・・・」
そう話して彼女はうつむいてしまった。
「そうでしたか。では一刻も早く時間を戻したいのですね。」
「はい」
「わかりました、ではこちらへどうぞ。」
そう言って店主は、奥の部屋に案内した。
「ここに入ればいいんですか?」
「ええ。どうぞ」
店主に言われた彼女は、部屋に入った。
「私がこの扉を閉めた瞬間あなたは、あなたの戻りたい時間に戻ることができます。ですが、時間を戻してしまえばもう今、現在に戻って来ることはできません。それでもよろしいのですね?」
店主が言うと彼女は躊躇無く言った。
「はい、時間を戻して下さい。」
「わかりました。では、」
バタン
扉が閉められた瞬間、彼女は体が歪んでいくような感覚に襲われた。
そして気がついた時、彼女は会社の会議室にいた。
5時間前、部長に呼び出された時のようだ、時計がその時の時刻をさしている。
「ほんとに戻ってきたのね・・・・」
彼女はつぶやいた。
ガチャ
会議室のドアが開いて彼女の上司の部長が入ってきた。
そして、彼女にとっては二度目となる暴言を彼女に向かって叫んだ。
二度目の暴言に彼女はたえて、たえて、たえて、たえ続けた・・・・・
また殺してしまったらなんのために時間を戻したんだと自分にいいきかせながら・・・・
そして彼女はたえぬいた。
部長が会議室を出た後、彼女は1人で喜びに浸っていた。
よかった・・・殺さずにすんだ・・・時間を戻してよかった・・・・
ガチャ
ドアの開く音で彼女は我に返った。
そして、ドアの方に目を向けると・・・そこに立っていたのは課長だった。
「課長・・・・どうなさったんですか・・・・?」
彼女が尋ねると突然ストレスを発散するように彼女に向かって暴言を吐き始めた。
さっきの二度目の暴言を耐え抜いた彼女はもう自分を抑えることができなくなっていた。
近くにあった壺で課長の頭を殴りつけた!!
彼女が自分を取り戻した時にはもう課長はピクリとも動かなくなっていた。
あ・・・ああ・・・・私は・・・時間を戻したのに・・・・また・・・・・・
殺してしまった・・・・
そう自分で認識した時、彼女は壊れた。
「いやあああああああああああ!!!!!!!!!!」
彼女は叫んで自分の頭もあの壺で殴りつけた。
そして、彼女は・・・無残に死んでいった。
「ふう、時間を戻してもまた同じ過ちを繰り返すのね。あの課長さんも相当ストレスがたまってたみたいね、誰でもよかったみたいだから。」
時計屋の店主はため息をついた。そしてこうつぶやいた・・・・
「次のお客様はどんな人かしら。」




