Time1
「どうしよう、どうしよう、どうしよう!!戻れ!戻るのなら戻したい時間を・・・
時間を戻したい・・・!!」
ハっと我に返った青年は驚いた、自分がまったく知らない所に立っていたからだ。
「ここは・・・どこだ・・・?」
周りを見渡すとたくさんの時計があった。
「早く出ないと・・・」と思うのだが青年は、そこから一歩も動くことができなかった。
すると、奥から1人の女性がでてきた。
「あら、お客様?」
そう訊ねられたが、青年はすぐに答えることができなかった。
なぜなら、その女性に見惚れていたからだ。
おそらく、十人の男性に綺麗だと思うか?と聞いたら十人が全員綺麗だと答えるだろう、
そのぐらい綺麗な人だった。
「あの、お客様?」
「あ・・・すみません・・・。」
「いえ、どうなさいました?」
「・・・・よく分からないんですが・・・気がついたらここに立っていたんです。」
すると、その女性は少し笑って言った
「それは、あなたがここに来る意味のある人だと言うことでしょう」
「えっ!?それはどういう意味ですか?」
「あなたは時間を戻したいと強く思ったでしょう。」
「・・・・・思いました・・・だけど、どうしてそんなことが分かるんですか・・・?」
「ここは時間を戻したいと強く思う人が来る所だからよ。」
その言葉に青年は戸惑いながらも言葉を発した
「・・・・あのここは・・・時計屋ですよね?」
「ええ、そうですよ。ですが普通の時計屋ではありません。時間を戻すことのできる店です。」
「まさか!!そんなことありえない!!」
青年は信じられないというように言った。
「信じる信じないはあなたの自由です。ですが、あなたはどうしても時間を戻したいのではないのですか?でしたら私の言うことを信じてみてもよろしいのではないのですか?」
「・・・・わかりました・・・確かに僕は時間を戻したいと強く願っています。戻せるのなら時間を戻したいです。」
青年の目にもう迷いはなかった。
青年はあの女性と共に奥にあると言う部屋に向かっていた。
奥の部屋でないと時間を戻すことができないのだ
「あの・・・」
青年が口を開いた
「なんでしょう?お客様」
「あなたは、この店の店主さんなんですか?」
疑問に思っていたことをあの女性に向かって言った。
「ええ。そうですよ、さあこの部屋です。」
店の店主である女性は1つの個室の扉を開けて青年に入るように促している。
青年は素直にその中に入った。
「私が扉を閉めればあなたは、戻りたい時間に戻ることができます、ですがリスクもありますよ戻りたい時間に戻ってしまえば現在の今この時間に戻ってくることはできません。それでもいいのですね?」
「はい。」
青年は迷いなく答えた。
「分かりました。では」
バタン
扉が閉められると同時に青年は、体が歪んでいくような感覚に襲われた。
青年は、気がついて辺りを見渡すと自分が昨日いた場所に立っていた。
急いで携帯を見て時刻を調べてみると・・・時刻は青年が戻りたいと強く願っていた時間だった。
「本当に戻ったんだ・・・・・」
過去に戻ったことを確認するように青年はつぶやいた。
すぐにあいつをさがさなきゃ!!時間を戻した意味がない!!
そう思って青年は走りだした。
20分ぐらい走りまわったが青年は、探している人を見つけられずにいた。
「くそ!!どこにいるんだよ!!このままじゃあの時間がきてしまう・・・・」
青年が諦めかけたその時・・・
青年の言うあいつの姿が青年の目にはいった。
「いた!!」
そうつぶやくと青年は、急いで不機嫌そうに歩いている1人の女性に駆け寄った。
「おい!!待てって!」
青年の姿を見たその女性は逃げるように走りだしたが、青年の方が速くすぐに追いつかれて腕をつかまれた。
「ちょっと離してよ!!」
「話聞けって!あれは、俺が悪かったこのとうりゴメン!!」
青年は顔の前で手を合わせて頭を下げた。
すると、あの女性は・・・
「・・・そんなに謝ってくれるんならもういいよ・・・・」
「ほんと!?」
「うん。私も悪かったし・・・」
そして青年は恋人であるあの女性を家まで送り1人達成感をあじわっていた。
「やった・・・彼女を事故に遭わせずに済んだんだ!!時間を戻してよかった!!俺の人生ここからスタートだ!!」
数日後
青年は幸せに暮らしていた。
今日は1人で町をプラプラしていると彼女の姿を見つけた。
声をかけようとして青年は愕然とした・・・
彼女がほかの男と一緒にいたからだ・・・
青年は怒って彼女に近寄り声をかけた。
「おい!!お前なにしてんだよ!!」
すると彼女は冷静にこう言った。
「あんただれ!?気安く話かけないでよ!!」
「何言ってんだよ・・・誰のおかげでお前が今生きてられてると思ってんだよ!!俺が時間を戻したおかげだぞ!!」
「なに言ってんの!?気持ち悪い・・・」
それだけ言って彼女は見知らぬ男と向こうに行ってしまった。
その瞬間青年の心は壊れた・・・・・・・・
雨の中、青年は1人彷徨っていた。
ふらふらした足取りで道路にでた瞬間、激しい衝撃が青年の体を襲った!!
そして、青年は
眠るように息を引き取った・・・1人、雨に打たれながら・・・・・
「ふぅ、せっかく時間を戻してあげたのにダメだったわね。」
時計屋の店主はため息をついた。
そして、こうつぶやいた・・・
「次のお客様はどんな人かしら。」




