第90話 VSナーグ ”陰影”
新年明けましておめでとう御座います。
もう少し早く投稿したかったものの色々と忙しく大変でしたが、何とか今年初めての投稿ができました。
今年も読者の皆様に楽しんでもらえますよう努力していきますので今年も応援をよろしくお願いします。
それでは本編をどうぞ。
「俺はいつの間に荒野に来たんだっけ?」
俺は今現在、現実逃避をしています。
「此処は『デトラの森』ですよ礼治様」
「…一瞬で森の一部が消え去ってしまいましたね…」
「あちゃー。コレは想像以上だなー」
そんな俺をフールとシルフィアとハングの三人が目の前の光景が現実であることを告げる。
(ってか、此処は『デトラの森』だったのか)
今になって俺が何処に居たのかを知った。
「なんで俺らがルビーだけに任せたのかがコレで分かったかレイジー」
<コクコク>
ハング達がルビーの側にいたら俺とシルフィアはあの爆発に巻き込まれていただろう。
そんな背筋がゾッとした俺の側にナーグを抱えて満足げな表情でルビーがやって来た。
「ふふふ。我の力は如何であったかレイジ殿?」
「……あ、うん。ありがとうルビー。ルビーって強いんだね」
「ふふふ。そうであろうそうであろう」
ルビーは更に満足な表情をしてからうんうんっと頷いていた。
「ただ少しやり過ぎじゃないかな?」
そんな満足しているルビーに垂直な意見を述べる。
「…確かにレイジ殿の意見も然り。ただ我にはこうした訳にもちゃんとした理由がある」
「理由ですか?」
ルビーの言葉にシルフィアが尋ねる。
「そうだ」
ルビーは一言で返事を返すと突然、俺の方を睨みつけてきた。
「貴様はいつまで我が王に取り憑いているつもりだ?今直ぐレイジ殿から離れろ!」
そう言われ俺は何が何だか分からなかった。しかし、それと同時に異変が起きた。
突如俺の影から別の影が出てくるとその場から距離を瞬時に置かれた。
そして、その影の中からある人物が現れた。
ギルドから俺を此処へ連れてきた黒いローブを着た人物だった。
「…私の影魔法を見破るとは貴方はいったい何者なんですか?」
フードを深く被った女性がルビーに対して尋ねた。
「我は王の眷族であり、魂を見るための魔眼を持つ死神」
ルビーは抱えていたナーグを無造作に地面に下ろした後、魂を放ったことで元の形状に戻った大鎌を構える。
「そして悪しき者の魂を刈るそれが我に与えられし使命!よって貴様の魂を刈らせてもらうぞ‼︎」
ルビーはそう答えると敵との距離を一気に詰めてから大鎌を振るう。
「無駄ですよ」
敵は自分の影に潜り込み、ルビーの攻撃をあっさり躱す。
「『風爪』‼︎」
いつの間にか俺の側から離れ、敵に迫っていたフールが右手に風を纏わせ、敵の影を三本の風の爪で地面ごと抉る形で力強いアッパーをかける。
「攻撃しても意味ないですよ」
しかし、フールの攻撃は地面を抉るも敵の影には避けられてしまい、地面に爪痕を残すことしかできなかった。
フールの攻撃をも軽く躱した敵はフール達から距離を置くとまた影から姿を現した。
「今回の私の目的はそこにいるレイジという冒険者の調査であって私自身は戦うつもりは毛頭にありませんので攻撃するのはやめて頂けないでしょうか?」
「礼治様をこんな目に合わせた元凶である貴方を私達がそんな理由で納得し攻撃を止めると思いますか」
敵の言葉に対しフールはドス黒いオーラと凄まじい殺気を放ちながら敵の意見を一切受け入れない態度を示す。
その時、ルビーとシルフィアも敵に向けて殺気を放っていた。
「そうは言っても私にはあなた方の攻撃は通用しませんよ?それに私はこの後に大事な用が有りますので此処で失礼させて頂きます」
敵はフール達の放つオーラと殺気に一切動じることなく懐からギルドで使っていた白いガラス玉を取り出した。
「魔力玉⁉︎」
側にいたシルフィアがそう言った。
「おやおや、コレがどの様な代物かご存知でしたか。でしたら私が今からする行動も予想が付きますね」
敵は言い終えると魔力玉を地面に向け勢いよく投げつけた。
「『試練の世界』”砂漠の庭”」
敵が立っていた地面は一瞬にして砂漠地帯となり、魔力玉は割れることなく砂に半分くらい埋もれただけで光を放つことはなかった。
「同じては効かないぞー」
敵の行動を先読みしていたハングのおかげで敵を逃さずに済んだ。
それに対して敵は慌てて魔力玉を拾おうと手を伸ばす。
「『風嵐』‼︎」
それを防ぐためにフールは即座に詠唱し砂を風で巻き上げて砂塵の竜巻の中に敵を閉じ込める。
「これで逃げられないでしょう」
「さーてとー、色々吐かせますかー」
二人は敵を閉じ込めたことを確認すると事情聴取をするために近づいていく。
「シルフィア。俺もあの近くに行きたいから肩を貸してくれるか?」
「わかりましたレイジ様」
シルフィアは自分の要求にすぐ応じてくれた。
俺もシルフィアの肩を借りながら敵の近くに行く。
「ルビーも礼治様の側にいて下さい」
「任されよフール殿」
フールの指示でルビーも俺の側に立ち、今の位置関係は閉じ込めた敵の前にフールとハングが横に並んでおり、その後ろにシルフィアに肩を貸してもらっている俺、その俺とシルフィアの周りを警戒してもらっているルビーとなる。
「それでは最初に貴方はいったい何者ですか?」
まず最初にフールが敵に対してそう質問した。
「私はラケルと申しまして、私は彼の方様からの命を受けて此処にいます」
敵は名を名乗るもそれ以上に情報を与えなかった。
「では、彼の方とはいったい何者ですか?あなた方の目的はいったい何なのですか?」
フールはラケルと名乗る敵の態度に苛立ちながらも冷静に質問を続ける。
「そこはお答えできませんね。別の質問に対してもこの様な対応をとることが多々ありますがご了承ください」
ラケルは即答でそう答える。
「何ですって‼︎」
敵の態度に怒りを表すフール。
「まあまあ落ち着けよフールー」
そんなフールを落ち着かせるハング。
「…すいませんハング」
取り乱していたフールはハングのおかげですぐに落ち着きを取り戻す。
「さーてとー。あんたはラケルっていたよなー、今度は俺から質問させてもらうぞー」
ハングは自身のペースで質問を始める。
「あんたはレイジの影に潜り込んでいる間は何をしていたー?」
ラケルが影に潜り込んだのは自分が此処に連れてこられてからすぐだろう。
「そうですねー。助けを呼ばせないために『念話』を使わせない様にあるスキルで妨害したり、戦闘時の動きを観察したりですかね…」
やはり『念話』を使った時、頭にノイズが走ったのはラケルが原因だった。
「一応言っとくけどー、あんたはコレがないとヤバいんじゃないのかー?」
ハングはいつの間にか回収していた魔力玉をラケルに見せつける。
「コレを調べたらあんたらの拠点がバレると思うぞー」
「それには無理な話です」
ラケルはハングの言葉をすぐに否定した。
「その魔力玉は確かにある場所に移動する為のものですが、その場所は私達の拠点からずっと離れたところに有りますし、私はそれと同じタイプの魔力玉を何個も使って拠点に戻りますので」
「用意周到ってわけかー」
ハングは少し残念そうにしてはいたが何処となくわかっていた様な表情をしていた。
「私は彼の方様に仕える者として今を生きています。そんな私のミスで彼の方様に迷惑をおかけすることがないように常日頃からこういった事には注意を払っています」
ラケルは話し終えると懐から別の魔力玉を取り出した。
「…ッ!逃しません‼︎」
魔力玉を取り出したラケルを見たフールは阻止するために詠唱をしようとした。
「無駄ですよ」
しかし、その前にラケルは魔力玉を地面には投げずに自身の握力で魔力玉を砕いた。
<ピカーン>
魔力玉は光を放ち直ぐに治まるも、その場にいた筈のラケルの姿が何処にもなかった。
「…逃げられましたか」
フールが悔しい表情で呟いた。
「何だったんでしょうか彼の方は?」
「レイジ殿に手を出した報い、必ずや死をもって償わせる」
シルフィアもルビーも悔しい表情を見せる。
「まあ一応レイジを無事に救出できたんだしー、結果はどうであれとりあえずは一件落着だろー」
そんな三人とは裏腹にハングは明るかった。
「…それもそうですね」
「レイジ殿を無事に助ける事が今回我らに課せられし使命」
「確かに礼治様が無事なら後は大丈夫ですね」
ハングの言葉に三人も同意する。
俺は家族達が会話していた光景に安心し、今まで保っていた緊張の糸が切れた。
「え?」
<ドサッ>
「「「‼︎‼︎‼︎」」」
途端に身体に力が入らなくなった俺は肩を貸していてくれたシルフィアを押し倒す形で倒れこんでしまった。
「大丈夫かレイジーー⁉︎」
「レイジ様‼︎しっかりしてください‼︎」
「しっかりしろレイジ殿‼︎」
「礼治様ーーーー‼︎」
家族達が俺の名前を呼ぶが、俺は返事を返せないまま気を失ってしまった。




