第89話 VSナーグ ”逆転”
今年最後の投稿です。
「我は生きとし生きる者の魂を刈る死神。この場に漂う器から離れし哀れな魂達よ、器との縁を断ち切り我が元に集え」
フール達とナーグとの戦いが始まり最初に動いたのはルビーだった。
ルビーが呪文を唱えるとナーグが放った斬撃に巻き込まれて死んだ獣や魔獣達の死体から青い焔があがり始めバチバチと激しく燃えだし、その青い焔は死体のみを焼き尽くすと鬼火のようなモノに変わりルビーを中心に集まりだした。
ルビーは両手で持った大鎌を構える。
「青く燃える魂達よ。我が得物『死神の大鎌』に宿れ!」
その瞬間、ルビーの周りに漂っていた魂であろう鬼火が大鎌に吸収されていき大鎌の形が変わっていく。
「『死神の大鎌』”一の型【闇黒の鴉】”‼︎」
ルビーが器用に振り回してから再びカッコよく構えた時には一つの刃で逆『L』の形だった大鎌の刃が二つに別れまるで鴉のクチバシを思わせる『F』の形になっていた。
「行くぞ‼︎」
決めポーズが見事に決まったところでルビーはナーグに向かって走り出す。
「ガァウルァーーーー‼︎」
それに対してナーグも走り出し、お互いがお互いの攻撃範囲に入った時、互いの得物が火花を散らし、金属音を鳴らしながらぶつかり合う。
「ハァアッ‼︎」
ナーグの魔剣を受け止めたルビーは直ぐに後退して、地面を勢いよく蹴りナーグと距離を縮めてから大鎌を振り回し攻撃の手を緩めずに攻め続ける。
それに対してナーグは魔剣で防ぎながら隙があれば攻撃を仕掛ける。
しかし、ナーグの全ての攻撃をルビーは大鎌で防いでいく。
見た感じルビーもナーグも両者一歩も引かず均衡を保ちながら攻防を繰り返す。
「『風矢』‼︎」
そんな中、フールが呪文を唱え、ナーグに向かって十数本の風の矢が放たれる。
「グゥラララッーーー‼︎」
ナーグは風の矢を自身の身体に纏った無透明の光の膜で全て弾いた。
その光景を見たルビーは一旦ナーグと距離を置きフールとハングの側まで下がる。
「大丈夫かルビーー?」
「我は大丈夫だ。それよりもあの者が纏う、怪き光の膜は一体なんだ?」
(そう言えば、ステータスを確認した時に詳しく見てなかったな)
ルビー達の会話を聞いていてそのことを思い出した俺は再びナーグのステータスを確認し、あるスキルを調べてみた。
ー特有スキルー
魔力放出
自身の魔力を形にして外に放出するスキル
(放出する形はスキル所有者が自由に決められ、イメージがしっかりしており、また魔力を込めた分だけ威力が増す)
魔力武装
身体全体を防具のように魔力の膜を覆うことで敵の攻撃から発動者を守るスキル
(魔力の膜は部分的に強化も可能なので、守りたい箇所に魔力を集中させればその箇所だけ他よりも防御力が増す)
(このスキルは手強いかもな)
「なるほど…。今の彼奴は自身の魔力そのもので攻守を使い分けているわけですか…」
俺がナーグのスキルを確認して考えていると、どうやらフールもナーグのステータスを確認していたようであの二つのスキルの特徴を理解したらしい。
「どうやら今回はルビーにお任せした方が良さそうですね」
「そんじゃあルビー頑張ー」
「⁉︎」
二人の発言に俺は耳を疑った。
フールとハングはルビーの返答を待たずしてその場から離れてこっちに戻ってきた。
「ちょと二人とも…ッイテ⁈」
こっちに何の迷いもなく戻ってきた二人に対し慌てて身体を動かしてしまい、まだ治りきれていなかった俺の身体が悲鳴をあげる。
「無理をなさらないでくださいレイジ様!」
俺を支えてくれているシルフィアから心配されるも俺は一人残されたルビーの方が心配だった。
「ルビーだけに任せて大丈夫なのか⁉︎今のナーグは運以外のステータスが全部四桁超えてるんだよ!」
「大丈夫ですよ礼治様。ルビーだけで彼奴を止めることができますので御安心を」
「寧ろー、俺達はこっちにいないと色々とヤバくなるからなー」
「⁇⁇」
慌てる自分に対して二人はルビーが必ず勝つと確信していた。
俺はそれでも信じきれず、直ぐにルビーの方を向く。
「ふふふふ…。ふはははははーー‼︎」
「‼︎⁉︎⁇」
一人でナーグの相手を任されたルビーが突然笑い出す。
「レイジ殿よ。我を心配することなかれ。我が漆黒の力をとくとご覧にあれ!」
ルビーがそう言い放つと再びナーグに向かって走り出す。
「グゥラララッー‼︎」
一直線に走り、ナーグとの距離を縮めていくルビーに対しナーグは魔剣を横向きに振るう。しかし、今度の魔力刃は先程とは違い、威力はそのままではあるが魔力刃の数が一つから三つに増えていた。
「避けろルビーーー‼︎」
魔力刃に構うことなく突き進むルビーに大声を出して叫ぶもルビーは避けようとしなかった。
そして次の瞬間。
「我が『死神の大鎌』の餌となれ!
”闇黒鴉の死の晩餐”‼︎」
ルビーが振るった大鎌の刃が魔力刃の一つに触れたその瞬間、大鎌が魔力刃を吸収し始めた。
その様子はまるで雑食種であり、ごみ捨て場を荒らしゴミという名の餌を捕食する鴉そのものだった。
ルビーは大鎌に魔力刃の一つを吸収させると残り二つも同様に吸収させてゆき、一瞬にしてナーグの攻撃を無効化したのだ。
「……どうなってんだいったい?」
俺は今の光景に頭が追いついていなかった。
「おーいレイジー。大丈夫かー?」
「なあハング。今のはいったい…?」
声を掛けてきたハングに俺は目の前で起こったことを尋ねる。
「あれはルビーの扱う武器『死神の大鎌』の持つ能力の一つなんだぞー」
「一つの能力?」
「そうそうー。ルビーの武器は死んだ奴の魂を取り込んでー、その取り込んだ魂の焔でその時の戦闘に応じて武器の能力を使い分けて敵を刈るー。それがルビーの戦闘スタイルなんだぞー」
「そして今ルビーが使用しています能力は、刃に対象を触れさせ、ルビー自身が吸収したいと念じたモノだけを捕食する。それが『闇黒の鴉』であり、そして…「そちらにいったぞ‼︎」」
ハングとフールからルビーの大鎌の能力について説明を受けている途中、ルビーの声に反応し直ぐに目を向けるとナーグが魔剣から放つ無数の魔力刃を次々と大鎌で吸収していたルビーが吸収し損ねた魔力刃の一つが此方に向かって飛んできていた。
「『試練の世界』”水の間欠泉”‼︎」
目と鼻の先にまで迫っていた魔力刃は地面から突如勢いよく吹き出してきた熱くない間欠泉によって空高く打ち上げられた。
「ふぅーー。焦ったー、焦ったー」
宙に逆さまで浮かび、とても焦っていた様には見て取れないハングのおかげで俺達は魔力刃から間逃れることができた。
「そうそうー。今までのが俺の能力だぞレイジー」
そんな軽い感じでハングは自身の能力の説明をサクッと終わらせた。
「いやいやいや!そう言われてもハングの能力って何⁉︎地面を氷張りにしたり、竜巻を起こしたり、熱くない間欠泉を吹かせたりで色々あり過ぎだから‼︎」
ハングは既に三種類の属性魔法を使っており、その中でも氷の属性魔法は初めて見るものであり、そんな説明だけでは俺は理解できなかった。
「礼治様。ハングが持つ能力とは対象者に修行を行わせるものです」
「修行をさせる能力?」
理解できなかった俺に対して今度はフールが代わりに説明を始めてくれた。
「例えばハングが礼治様の目の前で最初に使った地面を氷張りにしていたあれは足場が不安定でもちゃんと動けれるようにする為の修行に使われる魔法です」
確かにフールが言うように氷張りの地面は滑りやすい為に立つのでさえ困難になる。
「他にもあの竜巻の様に吹き荒れる強風は流れを読めば簡単に外へ出ることができますし、間欠泉も地面から伝わる微かな振動を感じれる様になれば地中からの攻撃を回避することが可能になります」
「まあー、いまさっきまでの修行はどれも冒険者のランクが達人級じゃなきゃクリアするのには難しい内容だったんだけどなー」
フールの説明でハングの持つ能力『試練の世界』を大体理解することができた。
<ガキン>
理解できたと同時に金属同士を強くぶつけ合った音が響く。
「ハァアアアッーー‼︎」
「グゥラララッーー‼︎」
そこではナーグのもとにたどり着いたルビーがナーグと得物を交えながら火花を散らしていた。
「どうした。闇に堕ちてまで手に入れた其方の力はその程度のものか?」
最初は均衡した戦いに思えていたが、ルビーは本気を出していなかったらしくルビーの動きに鋭さが増し、それに比例して均衡だった戦いが崩れ始める。
「我は其方のことをフール殿から聞いている。それがどう言う意味か其方は分かるか?」
余裕が出てきたルビーは操られているナーグに対して語りかけ始めた。
「レイジ殿は我らを家族と受け入れてくれたが、我はレイジ殿の家族である前に王に忠誠を誓う眷族。其方はその王であるレイジ殿を愚弄し、更にはその魔の力が込められし剣と悪しき力を使いレイジ殿の魂を葬ろうとした」
話が進むに連れてルビーの攻撃は激しさを増していき、今のナーグはルビーが振るう大鎌を防ぐだけで精一杯になっていた。
「レイジ殿が其方を殺すなと命じなければ我は其方の魂を躊躇することなく刈っていたであろう」
そう言うとルビーは大鎌の柄の先端でナーグの腹の辺りに突きをかます。
腹を力強く突かれたナーグはそのまま勢いよく吹き飛ばされ、数十メートル先の地面に身体を強打させ、更に十数メートルの位置のところで倒れこんむも『魔力武装』のおかげかダメージをそこまで負っておらず、直ぐにその場から立ち上がり魔剣を構える。
ルビーは立ち上がったナーグの方へ一歩づつ近づいていく。
「グゥラララッーー‼︎」
ナーグは魔剣を振りかぶると今までで一番の威力で魔力刃を放った。
魔力刃はルビーとルビーの後ろに待機していた自分達のところへ凄まじい威力で迫ってくる。
「ナーグ殿と言ったか?些細ではあるが其方に対し感謝をしておる」
そんな危機的状況の中でルビーは歩みを止めることなく、大声を出しながら語り続ける。
「其方のおかげで全てではないが我の死神としての力をレイジ殿に披露することができた。誠に感謝する」
魔力刃が十数メートルのところまで迫ってきた時、ルビーはナーグに対して礼をしてから大鎌を縦に構え、迫り来る魔力刃を迎え撃つ体制をとった。
「『死神の大鎌』よ!万物を喰らい溜め込んだ魂と魔力の全て解き放て!『魂集いし鴉の化身』‼︎」
大鎌を上段で構えたルビーはそのまま一気に大鎌を振り下ろしたその瞬間、ルビーの大鎌から青い焔を纏った巨大な鴉が現れ、そのまま魔力刃に向けて解き放たれた。
ナーグが放った魔力刃とルビーが放った魂が創り出した鴉の化身が衝突し、その余波により発生した爆風に飛ばされないように耐える。
「魂達よ!操られし者を闇から解放させ給え‼︎」
解き放ったれた魂達はルビーの言葉に応えるかの様に更に激しく燃え上り、魔力刃を青い焔で焼き尽くす。
障害物が無くなったことで魂達は一直線にナーグの方へ飛翔し一瞬にしてナーグを吞み込み、一気に爆破した。
「『試練の世界』”岩石の山”‼︎」
爆破により辺りの木々は吹き飛ばされるなか、俺達はハングの魔法で出現した巨大な岩石を盾にすることで無事に凌げたもののルビーとナーグが無事かが分からなかった。
爆風と砂埃が治まると岩石の山は跡形もなく消え去り、俺の目の前には爆破地点を中心に百数十メートルに生えていた木々やその場に生息していた魔獣達が消え去っており、この場にいたのは爆破から逃れた俺達と。
「レイジ殿が命じた通り、我はナーグとやらの命を刈らんかったぞ」
今は意識を失ったナーグを細い腕で抱えながら、誇らしげに胸を張るルビーだけだった。
少し早い気がしますが小説を書くペースを考えると今年の投稿が今回で最後になりそうです。
何時も私『マロンさん』の作品を読んでくださりありがとうございます。
来年も頑張って読者様方に面白いと思ってもらえる作品を書いて投稿しますのでよろしくお願い致します。
それでは皆様、良い年末をお過ごしください。




