第69話 家族揃えば憂いなし (2)
木材の加工に適した木を採取した後、俺達は『初心の森』の広場に戻っていた。
「おかえりなさいませ礼治様」
最初に出迎えてくれたのはフールだった。
「だだいまフール。もしかして昼食はできてるのかな?」
「はい。今は盛り付けをしています」
俺達が木の採取に行っている間に昼の時間を過ぎ既に昼食はできており、先程からいい匂いが漂っていたのですぐにわかった。
「よっしゃー!飯だ飯‼︎早く食おうぜレイジ‼︎」
フォースはお腹が空いていたらしく急かしてくる。
「それもそうだな。フォースもシルフィアも護衛役お疲れ、すごく助かったよ」
「頼れる妹と一緒だったんだ!これくらい楽勝だよ‼︎」
「私もフォース姉様と一緒にレイジ様をお守りできてよかったです!」
どうやら二人は護衛をしてもらっている間に仲良くなっており、いつの間にか姉妹関係ができあがっていた。
因みに木材探しをしている間に狼やら『ゴブリン』が何度か襲ってきたがシルフィアとフォース、それから伐採役のルビーの三人があっと言う間に片付けてくれたので俺は何もしないでよく、本当に俺の家族は頼れる存在である。
「ルビーも伐採役と護衛役お疲れ」
「我は眷属としてただレイジ殿を魔の脅威からお守りし、命令に忠実に従ったまでであり、別に礼などはいらぬ」
と、最初はそう言うものの。
「ただ、せっかくの王からの感謝の言葉だ。ありがたく受け取っておこう。<ニヤニヤ>」
ルビーは口元を良い意味でニヤつかせながら俺の言葉を喜んで受け取ってくれた。
「レイジ兄さん俺は!俺は⁉︎」
「僕も少しはレイジ兄さんの助けになれてたかな?」
「ラッキもレイジ兄さんがハッピーになれるよう頑張ったよ!」
今度は頭上からアポロ、右からツクヨミ、左からラッキがそれぞれ尋ねてきた。
今の俺はアポロを肩車していて、ツクヨミは右手で担ぎ、ラッキを左手で担いでいる状態にある。
そうなったのには訳があり、森で7本目の木を収納してから戻るときにツクヨミが
「僕、二回しかレイジ兄さんに肩車してもらってない……」
と言ってから泣き出しそうになっていた。
そう、木を見つけるごとに交代というルールの中で7本目を見つけた時点でラッキとアポロが交代したことにより、ラッキとアポロを肩車した回数が三回なのに対して、三周目の順番が回ってきてないツクヨミは二回だけしか肩車をしていなかったのだ。
「ごめんツクヨミ。そういえばツクヨミはまだ二回しか肩車してなかったよな、チョット待っといてな今案を考えるから」
俺は慌てて良い解決方法を考え始めた。
最初はアポロとツクヨミを交代させる案がでたけど、コレだと順番で交代したばかりのアポロを直ぐに下ろすことになるので却下になり、最終的に三人を同時に担ぐという答えを導き出し、それに納得してくれたツクヨミは最初に会った時に比べれば笑っている表情を浮かべながら了承してくれて、今に至る。
(いやー。本当に筋力が高くて助かった)
前の俺では三人を同時に担ぐのは不可能ではないけど、そのまま歩いたら確実に息を切らして途中でギブアップしていた。
「三人も手伝いありがとう。お陰でスムーズに木を見つけれたから助かったよ」
この言葉は決して気休めなどではなく、肩車をしていない時にシッカリとした木を一緒に探してくれて、7本中4本は子供達三人が見つけてくれて俺に教えてくれたものだった。
三人を褒める際に手が塞がっていて頭を撫でることができなかったけど、三人とも凄く嬉しそうな表情を浮かべていた。
「それでは盛り付けも少しで終わりますので此方にどうぞ礼治様」
そのまま俺達はフールの背後に着いて行くと広場の中央に向かうとそこには四十人は余裕で座れる程の敷物が敷かれていた。
「お疲れ様ですレイジ様。首尾はいかがでしたか?」
今度は料理を運んでいたエプロン姿のテミスが出迎えてくれた。
「順調にこなせたよ。それにみんなが手伝ってくれたから更にね」
テミスに尋ねられたことに応えながらツクヨミ達を降ろした。
「テミス姉さん。俺レイジ兄さんの役に立てたんだよ!」
「僕も少しはレイジ兄さんの役に立てたんだよ」
「ラッキもレイジ兄さんの役に立てたからハッピハッピハッピー!」
「三人ともよく頑張りましたね。とても偉いですよ」
「「「へへへへ」」」
三人はテミスに褒められて嬉しそうにしていた。
その後は家族全員で食卓を囲んでから一緒に食べ始めた。
大アルカナ達は全員で二十四人おり、俺とシルフィアを合わせて計二十六人で食事を食べるのはとても楽しく、家族の大切さを改めて感じさせた。
そう感じると手が進み次々に料理を口に運んでいく。
「うまいなこの炒め物」
俺が食べている『レッドピッグ』と数種類の野菜の炒め物がとても美味しかった。
「レイジ様のお口に合っていて良かったです」
どうやらこの炒め物はテミスが作ってくれたらしい。
「へ〜。コレはテミスが作ってくれたんだ。凄く美味しいよ」
「お褒めのお言葉ありがとうございますレイジ様。私はこれからもレイジ様の期待に応えられますよう頑張らせて頂きます」
テミスは料理を褒められたことにとても嬉しそうにしていた。
「レイジ兄レイジ兄!ボクも料理を手伝ったんだよ」
「「俺も(私も)料理をするの手伝ったんだぜ(よ)」」
「そうだったのか?偉いぞ三人とも」
どうやらトランやホースとポニー達もフールやテミス達の手伝いを頑張ってくれたらしく三人を褒めた。
それからは家族全員で楽しく食事をしていたが途中でふと前々から疑問に思っていたことがあり、隣で食後のお茶を飲んでいたフールに尋ねてみることにした。
「なぁフール。ちょっといいかな?」
「なんでしょうか礼治様?」
「俺が初めて魔法を使った時に魔力切れで倒れたのは覚えてるか?」
異世界に転生した初日のできごとだ。
「もちろん覚えております。あの時は礼治様に魔力切れについての詳しくお伝えしなかったがために、あのようなことになってしまい申し訳御座いませんでした」
「いやいやいや!アレは俺が調子に乗ってしまったのが原因であって、別にそのことは謝らなくていいから顔を上げてよフール!」
突然謝罪をしてきたフールに俺は慌てて顔を上げさせた。
「それよりもある質問がしたいから答えてくれないかな?」
「もちろんです。なんでもお聞きくださいませ!」
フールは顔を上げて、俺からの質問に応じる姿勢をとった。
「じゃあ質問。俺は前回に大量の魔力を消費した事により、魔力切れを起こしてその場に倒れた。ここまでは大丈夫?」
「ハイ大丈夫で御座います。なので続きをお願いします」
フールに確認をしたから話を続けた。
「でも今回は家族全員を呼び出した際に本来なら魔力を大量に消費してしまうと思ってたんだけど、実際は魔力切れが起こるどころか俺 は魔法を使った際に魔力を消費した時の感覚がなかった。この事について詳しく知りたいんだけど何かわかるかな?」
そう、俺は『風の剣』や『火の杖』などの小アルカナの武器を異空間から取り出して魔法を放つ際に自分の身体から魔法の威力に比例して魔力を消費していることを身体で感じていた。しかし、今回だけではなくゴブリン軍団の討伐戦の時に一度にサタン達を呼び出した筈なのにその際に魔力の消費を感じられなかった。それ以前に、異世界で初めて目が覚めた時に『魔力操作』を取得できていなかった俺が何故フールを呼び出せたのかが不思議だった。
「そういえば礼治様にはお伝えすることを失念していました。今からそのことについて詳しく説明させて頂きます」
そう言いながら一度頭を下げたが直ぐにまた頭を上げて説明を始めてくれた。
「先ず始めに、礼治様は私達大アルカナが異空間で過ごしている間は礼治様の魔力を少し貰い、その魔力を食材に変えて栄養として身体に取り込んでいることは以前にお話しいたしましたよね?」
以前にフールと食事をしていた時の話を思い出し、頷いて肯定する。
「私達は食事をする以外でも異空間にいる間は礼治様の魔力を少しずつ貰っているのですが、その際には礼治様のスキル『魔力回復(大)』により、消費された分の魔力はすぐに回復され、礼治様は普段通りに生活を送れます。ここまでは宜しいですか?」
「ああ、大丈夫。続けてくれ」
「礼治様から日々いただいている魔力は全てを消費し自身の魔力に変えるだけではなく、礼治様の魔力をそのまま溜め込んでいます」
フールが言うには俺の魔力を大アルカナ達は自身の魔力に変えたモノとそのままの魔力の二つを身体に溜め込んでいるということらしい。
「そしてここからが本題になるのですが、私達は礼治様の魔力をそのままの状態で溜め込む理由は礼治様が私達を呼び出す際に礼治様が魔力を消費するのではなく、呼び出された者が溜め込んでいた礼治様の魔力を消費することで礼治様は実質魔力を消費することなく私達を呼び出せるのです」
つまり簡単にまとめると、大アルカナ達が俺の代わりに魔力を消費してくれる為に、本当に俺は魔力を消費しないで大アルカナ達を呼び出しているらしい。
(コレもコレでチートだろう絶対に)
そう思いながらも、異世界にきてから『魔力操作』を取得していなかった時にフールを呼べたこと、一度に家族全員を呼び出せたことも全ての辻褄があった。しかし、幾ら大アルカナ達が魔力を溜め込んでいたとしても、大アルカナ達自身が勝手にこちらの世界に出てくることはできないらしい。
大アルカナ達を呼び出すことについてのことは謎が解けてスッキリした俺達は食べ終わった食器を一ヶ所にまとめてから、フールの『クリーン』で食器を綺麗にしてからテミスが食器を異空間に戻した。
「よし。昼食も食べ終わって、後片付けも済んだことだし作業を再開しますか」
『おおーーー!』
家族全員のやる気に満ちた返事を聞いてから店作りの作業を再開した。




