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タロット占い師は神様に殺され異世界転生  作者: マロンさん
第1章
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第5話 自分は自分

5話目です。どうぞ。

〜視点:フール〜


私は主様が倒れてからずっと休まずに薬草を集めたり動物を狩ったり魔獣が主様に近づかないよう倒したり、後は主様が起きたら直ぐにご飯を食べれるようにスープを作ったりと身体をフルに動かしました。


暫くして辺りが暗くなり始め、夜が近づいてきたので私は焚き火をするための枯れ枝を集めて主様の側に戻りました。

すると気を失っておられる主様が何かにうなされていました。


私は枯れ枝を落としてから直ぐに主様の側に駆け寄りました。


「主様大丈夫ですか⁉︎しっかりして下さい‼︎」


私の声掛けをしていると主様は何かを呟いていました。


「フール…返事を…、頼む…フール出て着…くれ…」


主様は夢の中で私を呼んでいたのです。


「主様、フールは此処におります‼︎目を開けて下さい‼︎」


私は何もできない私自身に腹を立てながらも必死になってそう叫びました。


「頼む…フール出…よ、お願…一緒にい…フール…」


「主様!しっかりして下さい主様!フールは此処におります!主様のお側にずっとおります!主様ーー‼︎」


主様の声掛けに私は涙を流しながらも主様の手を強く握りながらそう叫び続けました。


すると、主様の瞼が<ピクリ>と動き、少しづつ瞼が開きはじめた。


〜視点:礼治〜


俺の意識がおぼろげながらも覚醒し、瞼を開くと俺の直ぐ側で涙を流しながら叫ぶフールがいた。

俺がその光景を見た時に意識が完全に覚醒して直ぐに身体を起こした。しかし、それが俺とフールとの位置が悪く。


<ゴツン>


「「痛え(い)ーー」」


お互いに頭を思いっきりぶつけてしまい数十秒の間あまりの痛さに体を倒して悶絶してしまった。


先に痛みが少しましになったのかフールは頭をさすりながら声を掛けてきてくれた。


「主様大丈夫ですか。先程まで何かに魘されておりましたが?」


この声を聞いた俺は直ぐに起き上がり、フールの胸に抱きついてしまった。


「⁉︎あああ、主様!いったいどうなさったんですか‼︎⁉︎⁇」


フールは俺のいきなりの行動に驚きを隠せずにいた。


「フールごめん、…ヒック、少しの間、ごのままでいざせでぐれ、だのむ」


フールは俺の震えている声と体に気付くと頭と背中を優しく撫で始めてくれた。


「主様大丈夫です。落ち着くまで私の胸をお使い下さい」


「うぅ、うわーーーーーーーーーーーーーー」


最後にその言葉を聞いた瞬間、俺の中に溜めていたものを全て吐き出すかのように泣き出した。

フールは何も言わずに唯々、俺が泣き止み落ち着きを取り戻すまでずっと背中を摩り続けてくれた。

俺はフールのお陰で人の温もりを久しぶりに感じることができ、なんだかとても安心してしまう俺がいた。


〜一時間後〜

子供みたいに泣いて暫くして落ち着いた俺はフールが作ってくれた心から暖まる美味しいスープを食べ、また少し涙を流してしまった。

次にフールの生活魔法の『クリーン』で身体を綺麗にさしてもらった後、これも生活魔法の一つ『クリエイト』で造った土版のかまくらの中で俺達はお互いに向き合いながら座っていた。

その間フールは気を遣ってか何も聞かずに唯々俺が話すのを待っていてくれた。


「なあフール、自分の過去を調べたって言っていたから今まで自分の人生に何があったのか知ってるんだろう?」


「はい…知っております」


フールは俺の質問に答える。


「なら色々と被るところが有るだろうけど俺がどんな人生を送ってきたのかを心情を踏まえてから話すから聞いてくれるかな?」


「はい」


フールはそれだけ答えて首を縦に振ってくれた。

俺はフールの返事を聞いてから俺自身の過去を話し始めた。

俺が今までどれ程頑張っていたこと、俺はただの『道具』に過ぎなかったこと、俺は会社から逃げたこと、俺には『占い』以外に何もなかったことを全て話した。

その間フールは話を聞いているだけで何も喋らずに聞いてくれていた。


「……ってなことがあって俺はここに居るわけ。本当にバカだよな俺は。俺をただの『道具』としか扱ってなかった父親に褒めれて喜んでて本当に何だったんだろうな。俺ですら自分の存在がわからなくてさ、本当に俺は『占い』ができるただの『犬』だと思えてくるよ」


「そんなことはありません」


フールがそう否定してきた。


「そんなことはないだって?…じゃあ何だよこれは‼︎これの何処が違うんだよ‼︎」


俺はあろうことかフールに怒りをぶつけてしまった。しかし、自分で怒りを抑えることができなかった。


「何も違わねえじゃねえか⁉︎、俺はただの『犬』として命令された事をこなし、ただの『占い』の『道具』として父親の手のひらの上で踊らされていた。ただそれだけじゃないか‼︎‼︎」


俺は俺の存在を人として認識することができなかった。


「私は『礼治様』のことは『礼治様』としか思いませんが違いますか?」


そんな俺にフールの言葉が俺の心の中にある黒い物体にヒビを入れてくれた。

そんな感じがした。


「……自分は自分……?」


俺はただそれだけを呟いた。


「そうです!『礼治様』は『礼治様』でございます。たとえ礼治様が占いをできなくなったとしても、身体の何処かが無くなったとしても、増えたとしても、ツノが生え翼が生え悪魔になったとしても、性転移して女性になったとしても、獣になろうが、虫になろうが、魔獣になろうが、『礼治様』は『礼治様』であってそれ以上でもそれ以下でも有りません‼︎‼︎」


心の中にある黒い物体は全体にひびが走っていく。


「なので礼治様は御自身の存在を否定しないで下さい!私は何があったとしても礼治様についていきます。使い魔としてではなく私自身として心から礼治様について行きます‼︎」


その言葉で黒い物体は心の中から消え去った。

俺を俺として見ていてくれたフールによって。

俺はこれにより俺を見てくれているフールに抱く感情が高まり、その所為で欲望を抑えきれなくなり、勢いよくフールに抱きつき、キスをし、服を脱がし押し倒した。

その時フールはなんの抵抗もすることなく俺の欲望を受け止めてくれた。


その夜は静かな森の中で二人の声だけが響いていた。

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