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タロット占い師は神様に殺され異世界転生  作者: マロンさん
第2章
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第60話 効率的にいこう 前編

「森に入る前にもう一度今回の目的を確認しておくと、一番の目的は『スライム』をノルマで5体以上を討伐するFランクの依頼を達成すること。それからシルフィアがどれくらいの実力があるのかを把握すること。この二つが今回の主な目的になる」


ニグリスさんの店を後にしてから数十分後、俺達三人は南門にいる警備兵さんにギルドカードを見せてから門をくぐり、暫く歩いてから『初心の森』の前に到着していて、今は今回の依頼内容やその他の目的を再確認していた。


「依頼達成に付け加えて、『スライム』を討伐した際には討伐証明部位として『スライム』の核を採取することが今回の重要課題ですよね」


俺の言葉にフールが付け加えをしてくれた。

因みに『討伐証明部位』とは、獣や魔獣などの依頼対象を倒した時にそれをギルドに証明する手段として、獣や魔獣の種類ごとに指定された部位を剥ぎ取ってからギルドに持ち帰り、受付カウンターに提出することで初めて討伐依頼を達成したことになる。つまり逆を言えば、依頼対象を何体討伐したとしても、討伐証明部位をギルドに提出しなければ依頼達成とはならないのだ。

討伐証明部位の他にも個体によっては薬の材料や武器や防具の素材としてギルドに買い取ってもらえるのでそれも忘れずにしておく必要がある。


「他にも、先程決めた配列を実際に試してみて、改善点があるかどうかを判断するのも今回の目的に含まれています」


今度はシルフィアが重要課題の他にある目的を付け足ししてくれた。


「よし。目的を再確認したところで森に入るけど『初心の森』だからと言って油断せずに注意して進むこと」


「「はい!」」


俺は目的を再確認してから二人には念のために周りに気をくばるように注意し、二人の返事を聞いてから、俺は『風の剣』をシルフィアは鋼のハンマーを構え森に入り始めた。

この時の三人の配列は、シルフィア、俺、フールの順番で縦一列に並んでいる。

この配列になった理由は、前衛として活躍してもらうシルフィアに先頭を任せ、その背後で俺が『気配察知』を使い魔獣のいる場所を探し出しその都度シルフィアに魔獣のいる場所に進路を変えるように指示を出して進む。また、後衛は風の遠距離魔法を得意とするフールに任せた方が効率が良いからだ。

他にも、近距離でも遠距離でも戦える俺が二人の間にいることで、シルフィアが遠距離戦に持ち込まれた場合は自分の魔法でカバーができ、フールが近距離戦に持ち込まれた場合は自分のスキルの『剣術』でカバーすることができるのでこの配列が一番効率が良いことになる。


『気配察知』には沢山の魔獣が引っかかっているのだが、どれも3〜6体の群れで行動しており、最初はシルフィアと魔獣が一対一になるようにして戦わせたいので群れに遭遇しないよう避けながら進んでいると単独で行動している魔獣をやっと察知したのでそれをシルフィアに伝えてから進路を変え、そこへ真っ直ぐ向かった。


それから数分後、目的の場所に辿り着くとそこには運良く俺達の今回の依頼対象である『スライム』がいた。


この世界での『スライム』は大きさがバスケットボール程で、上から少し押し付けられた感じの楕円形を保ち青色でゲル状の魔獣であり、討伐証明部位である核は身体がゲル状の魔獣のため、向こう側が透けて見え、『スライム』の身体の中心部に野球ボール程の青色の球体があることが確認できた。

他にも身体を<ぷるん>っと揺らしながら前に進んだり、攻撃のパターンが体当たりしかないのが一般的らしく、依頼を申請した際にマリーさんから教えてもらった特徴通りの姿に自分はグロい方のスライムではなかったことに心から良かったと思った。


俺達は茂みの中に隠れており『スライム』にはこちらの存在に気づかれておらず、それを確認してから右隣で依頼対象の『スライム』を観察しているシルフィアに顔を向けた。


〔じゃあシルフィア。最初は『スライム』と一人で戦ってくれるか〕


最初は手始めとして、シルフィアがどれくらいの実力を持っているかを確かめるために一人だけで『スライム』に挑むよう小声で指示を出した。


〔はいレイジ様。私、頑張ります〕


シルフィアも小声ではあるがハッキリとした返事で了承してくれた。


〔もしもの時は助けますのでくれぐれも無理をしないでくださいねシルフィア〕


〔わかりましたフール様。それでは行ってまいります〕


無理をしないように注意してから、俺とフールは茂みから飛び出していったシルフィアを見送った。


茂みから飛び出したシルフィアは『スライム』の目の前に着地して自身の得物であるハンマーを構えた。

『スライム』はいきなり茂みから飛び出してきたシルフィアに驚きながらも、自身の身体をまるでバネのように縮めてから勢いよくジャンプをして先制攻撃を仕掛けた。

それに対してシルフィアは『スライム』の攻撃を右に素早く移動して避け、すぐに飛んで行った方向に身体を向ける。

攻撃を避けられた『スライム』はこの攻撃だけでは終わらず、飛んで行った先にある木を上手く利用して体制を整え再びシルフィアに攻撃を仕掛けた。

『スライム』の攻撃は最初よりもスピードが増しており威力も上がっていたがシルフィアはその攻撃を今度は避けようとせずに、その場で左足を軸にして右足で地面を力一杯に蹴り反時計回りでその場で一回転してから


「ハアァアアアッ‼︎」


シルフィアは力を入れるために声を腹から出し、飛んできた『スライム』に回転したことにより通常の攻撃よりも威力が上がったハンマーの一撃を『スライム』に打ち付けた。

シルフィアの渾身の一撃を打ち付けられた『スライム』は凄まじい勢いで森の奥へと吹っ飛んでしまった。


「「……………」」


もしもの時のためにシルフィアを助けれるよう茂みの中で構えていた俺とフールはその光景にフリーズしてしまった。


「レイジ様、フール様。私一人で魔獣を倒せました」


そんな俺達にシルフィアが駆け寄りながら近づき、誇らしげな表情で報告してくれた。


「…す…すごいねシルフィアは……」


「そうですね…ハハハハ………」


シルフィアの実力にそうとしか言えなかった俺と笑うしかなかったフールであった。


〜〜〜


それから暫くしてフリーズが解けた俺とフール、それから自身の今の実力を発揮できたことに満足しているシルフィアの三人で『スライム』が吹っ飛んで行った方へと向かった。


「「………………」」


シルフィアが『スライム』と戦っていた場所から十数メートル離れた場所ではある光景を目の前にして俺とフールはまたもフリーズしてしまった。

その光景とは、他の周りに生えている木に比べて力強く、そして太く生えていた木の幹に数分前まではちゃんと『スライム』として存在していた筈が今では幹の中心に青色の球体である『スライム』の核が深く減り込み、そこを中心に核を覆っていたゲル状のモノがそこらじゅうに飛び散っているというものだった。


「……なあシルフィア。…もしかしてあの時に全力で『スライム』に攻撃した?」


俺はシルフィアにそう尋ねた。いや、そう尋ねることしかできなかった。


「…いえ。いつもの六割ぐらいしか力は出していなかった筈なんですが……」


その言葉に驚く俺であったのだが、この光景はシルフィア自身ですら想像していなかったらしい。


「……六割の力でこの威力って……」


フールは驚きながらも、徐ろにその木に近づき『スライム』の核が減り込んでいる高さに自身の目線がちょうど水平になるようにしゃがみ込んで覗き込む。

その際に核が減り込んだところからやや上の部分にフールが手を軽く触れた、次の瞬間。


<バリバリバリバリー>

<バターン>


核が減り込んだところを中心に大きな音を出しながら幹に亀裂が入り、その後バランスが取れなくなった幹はフールが軽く押した方へと地面を揺らし、大きな音を森全体に轟かせて倒れてしまった。

俺の目の前にあった光景は巨大な木が倒れており、十数秒前までその木を支えていた無残な姿になった切株の上には周りを覆っていたゲル状の液体のおかげで奇跡的に無キズで済んだ核があるという光景に変わっていた。


「「「……………………」」」


次々に起こる想定外のことを目にしていた俺達は我に返るまでずっとその無事だった核を無言で眺めていた。

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