第49話 新しい家族
(どうしてこうなった?)
今は俺とフール、それから新しく家族(奴隷)になったシルフィアの三人はボグレスさんが取締まる奴隷商をあとにしてから街を歩いているところだった。
俺がなぜそう思ったかというと今の状況にある。
(フールはいつも通りだから良しとしよう)
左側にいるフールを見るとフールは俺の腕に抱きつきながら歩いていた。
(問題はこっちだよな。どうしてこうなったんだ?)
今度は右側を見た。俺の右側にはシルフィアが歩いていた。
(シルフィアって改めて見ると結構可愛いよな)
身長は156センチで首には奴隷の証である黒い首輪をはめていた。
着ているものは茶色の質素な服だったが、身体つきはバストは少し大きめ、ウエストはしっかりと引き締まっており、ヒップはシルフィア自身のバストより少し小さめ、所謂モデルに近い体型の為にとても品があるように見え、また背中にまで軽く届く綺麗な銀色の長い髪に、顔は少し肉付きのある三角顏、瞳の色は初めて出会った時に比べて光がともっておりサファイアのように明るく透き通った青色で少し垂れ目、鼻はちょっぴり高めでシルフィアが喋る時には上顎から生えている尖った犬歯が見え隠れし、それに加え獣人なので頭の上にはピンと立った犬耳があり、腰のあたりから少し膨らみのある尻尾が垂れ下がっていた。
そんな見た感じは落ち着きのあるおっとり系の彼女なのだが今は自分の右腕をシッカリと両手で握りしめモデル体型の身体を押し付けながら辺りをキョロキョロ忙しなく見渡しており、見た目に合わず全く落ち着いていなかった。
「大丈夫かシルフィア?」
先程からシルフィアの落ち着きのない行動をしているので声を掛けてみた。
<ビック‼︎>
「も、もも、申し訳ございません御主人様!実は私、今までずっと山奥の小さな村から出たことがなく、奴隷としてこの街に連れてこられた時も馬車の中にいたためにこんなに多くの人混みの中を歩くのは初めてで、その…あのですね……」
シルフィアは話してる途中で黙り込み俯いてしまった。
その時はピンと立っていた耳は垂れ下がり尻尾は元より更に垂れ下がっていた。
「もしかして人混みの中が落ち着かないのか?」
<コクリ>
俺はシルフィアの途切れてしまった言葉をなんとなく繋げてみたら当たっていたらしくシルフィアは頷いて肯定してきた。
「じゃあどっかでちょっと休憩しようかな」
シルフィアの今の状態を考えて何処か静かな場所で一休みすることを提案してみた。
「申し訳ございません御主人様!奴隷の私なんかのために配慮していただいて…本当に申し訳ございません‼︎」
そう提案するとシルフィアは俺の右腕をシッカリと掴んでいた両手を離してから涙を少し流しながら謝ってきた。
そんなシルフィアを見た俺は今空いたばかりの右手でシルフィアの頭を優しく撫でる。
「シルフィアがそんなに謝らなくてもいいよ。俺も疲れたから休憩したいし、それにシルフィアは世間から見たら奴隷だけど、俺やフールにとっては新しい家族なんだからそんなに畏まらなくてもいいんだよ」
「そうですよシルフィアさん。私達はもう家族なんですからそんな他人行儀な喋り方をせずに自分の話しやすい喋り方でもいいんですよ」
そうシルフィアに伝えるとフールも後からシルフィアに自由な喋り方をしていいことを伝えた。
「ありがとうございます御主人様、フール様。私みたいな奴隷にそんn「はい、ストップ」<コツン>……エ⁇⁇」
そんな俺達の言葉にシルフィアは顔を赤くしながら、また自分を蔑む態度で俺達に話している途中、俺から言葉を遮られ頭を軽く扉を叩く要領で叩かれてシルフィアは驚き喋るのを止め顔を上げた。
「最初にも言ったけどシルフィアはもう家族なんだから他人に自己紹介する時以外は今の身分、つまりは奴隷と言うのは禁止な。そうしないと家族と言えないし、それに俺が嫌だからさ。後は俺の呼び方も『御主人様』じゃなくて名前で呼んでもらえると嬉しいんだけどな」
シルフィアに最初は少し怒り気味で自分のことを奴隷と言うのは禁止と命令して、その後は優しい感じで俺を呼ぶ時も名前で呼んでくれるようお願いした。
「…ス…スゥ…。はい分かりました。喋り方は前からこんな感じなので許して欲しいんですが、ヒク……ヒク…。これからは私自身、奴隷としてではなくレイジ様の家族として振る舞えるよう頑張りますので、不束者ですがどうぞよろしくお願いします」
シルフィアは泣きながら俺の申し出を受け入れてくれた。
「ありがとうシルフィア」
俺はシルフィアの言葉に多少ツッコミを入れたい箇所がいくつかあったが何も言わずにまた頭を撫でた。
「ハウーー///」
頭を撫でられたシルフィアは声を出し顔を赤くした。
シルフィアは嬉しかったのだろう耳をピンと立たせた後ピョコピョコと動かし、尻尾をブンブンと振っていた。
「じゃあどこで休もうかな?」
「それでしたら礼治様。この近くにマリーさんやミレアさんがよく行くというオススメの喫茶店がこの近くにあるらしいのでそこに行きませんか?」
何処にするか迷っているとフールが喫茶店に行くことを提案してくれた。
「じゃあそこでいいな。シルフィアもそこでいいか?」
「はい。大丈夫です」
場所が思い浮かばなかった俺はフールの提案を即採用してからシルフィアにも尋ねてみるとシルフィアもフールの提案に乗ってきてくれた。
「それじゃあフール、道案内を頼む」
「了解しました礼治様。此方です」
シルフィアからの確認をとった後、フールに道案内を頼んだ。
それからはフールを先頭に目的地に向かった。
(レイジ様は本当に優しいな。……レイジ様にだったら私……)
「おーいシルフィア何してんだ。早く行くぞ」
シルフィアは優しさを実感し、あることを考えていたが唐突に呼びかけられ考えが途切れてしまった。
前を見るとシルフィアは立ち止まっていたためにフールと俺からいつの間にか距離が離れてしまっていた。
「ままま、待ってくださーい‼︎」
シルフィアは慌ててその場から走り出し俺達の元へと向かった。
その時の彼女の顔はとても幸せそうにしていた。