第47話 可能性
時間がありましたので本日2話目を投稿します。
約十分後、俺達はフェンリルの獣人であるシルフィアさんをなんとか落ち着かせて椅子に座らせることができた。
「ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。私はフェンリルの獣人で名前はシルフィアと申します」
シルフィアさんはやっと落ち着きを取り戻すと自己紹介をしてくれた。
「やっと落ち着いてくれて助かりました。改めて自分は礼治と言います」
「私はフールと申します。よろしくお願いしますシルフィアさん」
改めて俺達も自己紹介をした。
「こんな私にご丁寧に自己紹介して頂きありがとうございます。お二人は私を奴隷として買われるおつもりですか?でしたら私はゴミも同然ですのでできれば私ではない他の方を買われた方が良いかと思われます」
シルフィアさんは綺麗なお辞儀をした後、自分ではなく他の奴隷を買うことを勧めてきた。
(コレはやっぱり何かあったな)
俺にはそう確信があった。
「シルフィアさん俺は貴方を奴隷として買いたいんです。ただその前にシルフィアさんには大変お辛いでしょうが奴隷になった経緯を教えて頂けませんか?」
シルフィアさんを買うことを決めていることを伝え、また如何して奴隷になったのかを尋ねた。
「私にはゴミの価値しかないのにそれでも私を奴隷としてお買いになるのですか?それに私が奴隷になった経緯などお聞かせしましても大したことはありませんよ?」
シルフィアさんは先程から自分の価値を極端に低く批評していた。
「俺はそれでも知りたいんです。教えてくれませんかシルフィアさん」
再度シルフィアに奴隷になった経緯を尋ねた。
「そこまで仰るならわかりました。私が奴隷になった経緯をお話し致します」
それに対してシルフィアさんはやっと奴隷になった経緯を話し始めてくれた。
「まず最初に私はこの世界で東側にある主に獣人族が住む大陸『バウル大陸』のある山奥のフェンリルの獣人しか住んでいない村で産まれました」
シルフィアさんはまず初めに自分の故郷について話してくれた。
「私が物心がつき暫くした頃、私の両親は村を襲ってきた魔獣に私を庇ったために殺され私はその後からは母方の祖母に育てられました」
シルフィアさんはそこで既に両親を亡くしていたことを教えてくれた。
俺はこの時シルフィアさんが自分と同じく親を亡くしていた事を知り、哀しい気持ちが込み上げてきたが我慢してシルフィアさんの話を聞き続けた。
「それで今日から数週間前に私が十五歳になり満月の夜に村ではある儀式がありました」
「ある儀式ですか?」
フールはある儀式が気になり、シルフィアさんに尋ねてくれた。
この時、俺もそのある儀式が気になっていた。
「はい。儀式の名前は『血伝混合の儀式』と申しまして、私たちフェンリルの獣人は十五歳になり最初に訪れる満月の夜にその儀式を受ける事で初めてフェンリルとしての力が宿り、大人の仲間入りを果たします」
シルフィアさんは儀式をする意味を俺達に教えてくれた。
「儀式を受けた者は全員がフェンリル特有の力を身に宿し、身体能力が以前とは比べ物にならないほどに上がります。なので私もその儀式を受けました。…ウゥ……」
シルフィアさんは話を止め突然涙を流し始めた。
俺とフールは慌ててシルフィアさんに近づこうとしたがシルフィアさんが右掌を俺達の方に向けてきた。
俺達はシルフィアさんに従い椅子に座りなおした後、シルフィアさんは目から涙を流しながら話を再開し始めた。
「儀式を受けましたが私の身体には何も変化が起こりませんでした。十五歳で儀式を受けてフェンリルの力を宿せなかったのは今までに起こったことが一度もなかったらしく、『厄災だ‼︎』『祟りだ‼︎』『呪いだ‼︎』などと他の村人達が騒ぎ始め私は訳が分からないまま檻に入れられました。それから私は檻の中で過ごしていき食事を運んでくる人以外は誰も会いに来ませんでした」
シルフィアさんはそう話していくうちに涙が流れる量が増してきた。
「檻に入れら数日が経った頃、食事の時間外に人が来ました。来た人は私の住む村の村長で檻を開けてくれました。その時私はやっと出れると安心して檻から出ました。しかし、突然お腹に強い衝撃が走り私はその場に倒れ込みました。倒れる時に村長と目があった時、村長の目はまるで私をゴミとして見ている様な目でした」
シルフィアさんは過去の辛い体験を大量の涙を流しながら話続けた。
「そして気がついた時には私は奴隷として売られており、私はフェンリルの力が無かったから誰も私を必要としてくれないと分かったんです、そしてつい先日ここに連れてこられ今に至る訳です。…ウウ、ウワァ〜〜〜〜〜ン‼︎」
シルフィアさんは奴隷になった経緯を話し終えた途端、大声で叫びながら泣き始めた。
話を聞き終わった俺は席から立ち、泣き叫ぶシルフィアさんに近づき頭を優しく撫でた。
「……エ⁇……」
シルフィアさんは俺の突然の行動に訳が分からず泣くのを忘れてしまった。
「寂しかったよな両親や自分を守ってくれる人がいなくて、辛かったよな自分の中の一つの事しか見てもらえずにそれが失敗したら村人達から捨てられて」
親を亡くした悲しみを、自分の中の一つの価値しか認めてもらえなかった事に気づいた時の辛さを、身にしみて感じていた。
「如何して泣いていらっしゃるんですか?」
俺はいつの間にか涙を流しておりシルフィアさんはそれを指摘してきた。
俺は涙を手で拭って改めてシルフィアさんを家族として受け入れることを心の中で決意した。
そして俺はシルフィアと真正面から向き合った。
「シルフィア。確証はあまり無いけどフェンリルの力を宿せる可能性はまだある」
「…ヘェ⁇⁇…」
シルフィアはいきなり呼び捨てにされ、更には突然の発言に驚き頭が理解するのに追いつかずにいた。
「俺は相手のステータスを確認することができるスキルを持っている。それでシルフィアの称号欄のところに『フェンリル(未解放)』って載っていた。つまり、シルフィアはフェンリルの力を宿す手前の状況だと思う。どうすれば力を解放することができるか分からないけど、唯可能性はシルフィアにはまだ充分に残っているんだ」
「…可能性ですか?…」
シルフィアに『ステータスチェック(自・相)』について説明してからシルフィアにはまだ可能性がある事を伝えた。
シルフィアは自身にはまだ可能性があると言われてから少しだが目に光が戻ってきていた。
「そう可能性だ‼︎だからシルフィア、俺はシルフィアを家族として迎えたい、そしてシルフィアの力を解放する手助けをしたい。だからシルフィアは俺に着いて来てくれないか?」
シルフィアに俺の気持ちを伝える。
「…私を奴隷としてでわなく家族として?…私の可能性に賭けて手助けをしてくれる?……」
シルフィアにとって俺の言っている事はシルフィア自身の失っていたもの全てをまた与えてくれると言っている様なものだった。
「ああそうだ。だからシルフィアは俺に着いて来てくれないかな?」
「ウワァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン‼︎‼︎」
シルフィアにもう一度尋ねた時シルフィアは今日一番デカイ声を上げて泣き始めた。
「シルフィアどうしたの⁉︎」
シルフィアがまた泣き出したことで戸惑う俺だった。
「…家族……力……欲しい」
シルフィアは泣きながら何か言葉を喋っており俺はシルフィアの喋っている言葉に耳を傾ける。
「私、家族が欲しい、力を手に入れるのを手助けして欲しい。だから私を買って下さい。お願いします」
シルフィアは泣きながらそう言っていた。
俺はシルフィアの気持ちを聞いた後、シルフィアの頭をまた優しく撫で始めそして。
「これからよろしくねシルフィア」
シルフィアによろしくと伝えた。
「…ハイ…ウウ…ウワァ〜〜〜〜〜〜〜ン‼︎‼︎」
シルフィアは返事をした後でまた泣き出した。
その光景を端で見ていたフールは此方に近づき、フールはシルフィアの背中を優しく撫で始める。
この光景はシルフィアが泣き止むまでずっと続いた。
メインヒロイン2人目の誕生です。




