第42話 それぞれのその後
今回のお話で第1章は完結になります。
〜視点:エネドラ〜
夜の8時を過ぎた頃、部屋のソファーに座っている私自身とテーブルを挟み向かい側のソファーにはこの街の警備兵団長を務めるジグトが座ってお茶を飲んでいた。
「今回のゴブリン軍団の繁殖場所や潜伏場所はやはり特定できなかったのか?」
「ああ、俺の率いる警備兵達とあんたのところの冒険者達とでその痕跡が残っている場所を探してみたんだが手がかりどころか何一つ見つけることができんかった」
「そうか」
私はジグトの報告を受けたあと頭を悩ませていた。
(今回の騒動にはやはり何者かが裏で関与していた。しかし、それが一体何者かがさっぱり分からん)
「そういえばあんたんとこに新しく入ってきた新人二人はどうよ?」
私が答えの見えないことで頭を悩ませているとジグトは気分転換のためにか別の話題をふってきた。
「新人二人とはレイジとフールのことか?」
私もジグトが誰のことを言っているのかをすぐにわかり、考えるのを一旦中断してレイジとフールの名前をだした。
「そうだ、その二人のことだ。彼奴等は昨日冒険者になったばっかりなのにゴブリン軍団討伐戦に参加、しかもレイジに至ってはあんたとAランク冒険者『金色斧のロイド』と一緒に『ゴブリンキング』討伐に出て最後はレイジがトドメを刺したんだろう?」
「彼奴は本当にすごい奴だよ。四大元素魔法の全ての属性を扱うし、人並み外れた行動力を持つし、タダでさえ強いのに彼奴は凄まじい力を持つ使い魔を何体も使役しているしで本当に化け物だよ彼奴は」
ジグトの意見に対し私もレイジのことを高く評価していた。
「あんたがそこまで言うんだ。彼奴はきっとスゲー冒険者になるだろうな」
「『なるだろう』ではない、『なる』んだよ彼奴は。長くても一年以内には必ずAランク冒険者になるぞ」
「おいおい、マジで言ってんのかあんたは?たった一年でAランク冒険者になるのは早すぎやしないか?」
私の言葉に驚き、聞き返してくるジグトだった。
「いや、一年は遅いくらいだぞ。それに彼奴は最終的にはSランク冒険者になる」
「おいおいおいおい!あんたは本気か?Sランクなんて世界中でごまんといる冒険者のなかで今はたったの四人しかいないんだぞ‼︎それにあんたはどうしてそんなに確信が持てる⁉︎」
ジグトは私から次々に出てくる言葉に驚いてばかりでありその反応を見ていて面白かったのはこの際置いておく。しかし、レイジの件についてはの本気でそう思っている私がいる。
「そうだなー。レイジがAランク冒険者になった時にもう一度聞きに来い、その時に教えてやる」
「はー、わかったよ。じゃあそん時になったら教えてくれ。俺はそろそろ戻るからな。じゃあまたな」
「じゃあお疲れさん」
ジグトは私から答えを今すぐに聞きたかったが私が答えなかったので諦めて帰ることにしたしくソファーから立ち上がり部屋の出口に向かっていった。
それに対して私は右手を振りながらジグトを見送った。
ジグトが部屋から出ていったあと、私はソファーにそのまま横になった。
〔レイジは絶対大物になるぞ………〕
私以外には誰もいなくなった部屋の天井を見上げ、最後の部分が自分でも聞こえなくなるほどの小さな声で私はそう呟いていた。
〜視点:黒マントの二人組〜
礼治達が『ゴブリンキング』を討伐した後で残りのザコの殲滅作業に取り組んでいる時までに時間を戻した頃
此処はある大陸にある城の部屋の一室である。
その部屋の中央に突如、黒マントに身を包んだ二人組が現れた。
その二人組は先程、礼治達の戦いを森の中で観戦していた者達であった。
二人組は部屋に着いたと同時に深く被っていたフードを脱いだ。
そしてフードから現れた顔は、男性のほうは見た目は20代で身長が184センチで、褐色の肌に白く長い髪、顔はシャープに整っており吊り目で黒に近い灰色の瞳を持ち耳が縦長であった。
つまり彼はダークエルフであった。
一方女性のほうは、見た目は十代後半で身長が181センチで、凛々しい顔立ちでギラギラと光りそうな黄色の瞳を持ち、黒みがかかった銀髪で前髪はデコをギリギリ覆い隠せるくらいでもみあげは長く伸ばしており、後髪はお団子状にまとめられ二本の尖った黒い角が生え、白い肌の所々には赤みのかかった黒い鱗で覆われていた。
つまり彼女は竜人であった。
「ありがとうございますハーマンさん。それにしても何で私達が森の中に隠れて見ていたことがバレたのでしょうか?」
ラケルと呼ばれていた竜人の女性はダークエルフのハーマンに礼を言った後、彼女達の場所が何故バレたのかを尋ねてみた。
「礼には及ばねえよラケル。後、俺らの場所がバレた理由は多分『気配察知』のスキルとかだろうな」
ハーマンも自分の予想を言ってみた。
「やはりそうなりますよね。しかし、私達とあの人間との距離は少なくとも80メートルはありましたよ。それを判断することができるとなると相当な化け物ですよ」
「俺らが化け物だと思うくらいだ。後でそいつを調べる時は細心の注意を払わないとな」
二人の間ではすでに化け物扱いをされている礼治であった。
「それよりも早く彼の方に今回の事を報告しないとな」
「そうですね。今回の目的が敵の実力を測るためだったわけですが、殆ど把握する事が出来ませんでしたからね」
今回の二人の目的は『アルバス』の侵略ではなく、『アルバス』の現戦力の調査であった。しかし、礼治と言う名の化け物によって細かい調査ができずに終わってしまったのだ。
「だが、俺は諦めねえぞ」
ハーマンはそう言いながら心の中である決意を固めていた。
「ええ、私も彼の方のためにこの身を捧げ必ずや彼の方の野望を達成させます」
ラケルもハーマンと同じく心の中である決意を固めていた。
「「我等の心から信仰する魔王様の世界滅亡のために」」
二人はそう宣言した後、部屋を後にした。
〜視点:礼治〜
俺達はギルドを出た後『夕暮れの日差し亭』へと戻った。
宿屋に帰るとラルファさんとミネットさんが出迎えてくれた。
俺とフールは二人に心配をかけたことを謝った後、俺はラルファさんから部屋の鍵とお湯の入った桶をもらってから部屋へと上がり、体を綺麗にしてから寝巻きに着替えた。
「礼治様〜。私は今日も頑張ったのでご褒美をくださいませ」
「今日のご褒美は確かデートの筈だったけど違ったかな?」
フールはそう言いながら俺に迫り寄ってきた。
それに対して俺は流石に疲れているので今日はこのままグッスリと寝たい気分であり、フールをなんとか落ち着かせようとするが。
「それはそれこれはこれですよ礼治様。諦めてくださいませ」
フールはそう言った後、素早い動きで俺をベットに押し倒して早業でパジャマを脱がせ、パジャマを綺麗に畳んだ後、俺に抱きつき夜遅くまで楽しまれた。
こうして俺の異世界転生してから四日目の夜をフールの荒い息が告げるのであった。
今回の話で第1章は終了となります。明日以降は第2章に入る前に今までの登場人物のまとめ、またこの話の世界の設定などを詳しく書いたものを投稿しますのでそれを読んでもらい更に作品を理解し楽しく読んで頂けたら幸いです。
これからも私、作者『マロンさん』が書く小説をどうぞよろしくお願いします。




