第39話 帰る場所
今回は長めですどうぞ。
今は昼の1時の鐘の音が聴こえてからしばらく経った頃、偵察班を除くギルドマスターが筆頭の冒険者達プラス俺の家族である大アルカナ達はゴブリン軍団との戦いに誰一人として欠けることなく勝利を収め街に戻ってきた。
「みんなおかえりなさい」
「街を守ってくれてありがとう」
「全員が無事なんてあんた等はスゲーぜ」
「冒険者の人スゴーイ」………
冒険者達が南門から入り中央広場までの間に街に住む沢山の人々が感謝の言葉をかけながら出迎えてくれた。
そして冒険者達が中央広場まで来た時。
「レイジさん、フールさん」
背後から俺とフールを呼ぶ声が聞こえたので俺達は声が聞こえた方へと振り向くとこちら側に走ってくる『夕暮れの日差し亭』の一人娘であるラルファさんがいた。
ラルファさんは俺達を見つけた後、沢山の人混みの中をかき分けて走って来たからか、俺達のもとに辿り着い時には髪が乱れており肩で息をしていた。
「スーハースーハー。<ニコ>、レイジさんフールさんお帰りなさい」
ラルファさんは息を整えた後、笑顔で挨拶をして出迎えてくれた。
「ただいまラルファさん。無事に帰ってきました」
「ラルファさん、ただいま帰ってきました」
俺達もラルファさんに笑顔で挨拶を返した。
「私達が家族で避難した時にお二人が避難場所にいなかったのでどうしたのかなと思ってたんですが討伐戦に参加していない冒険者さんから聞いた話で昨日登録したばかりの冒険者二人が討伐戦に参加したと聞きました」
ラルファさんはそう言いながら俺達に迫ってきた。
「私はその話を聞いた瞬間すぐにお二人のことだと分かりました!その時は本当に心配したんですよ!もしお二人に何かあったらと心臓が止まると思ったんですよ‼︎」
ラルファさんは本当に心配してくれていたらしく、目尻から涙を流していた。
「心配をおかけてしてしまい本当にすみませんでした」
「すいませんでした」
俺は慌ててラルファさんに頭を下げて謝り、フールも後に続いて頭を下げて謝った。
するとラルファさんも慌てだした。
「お二人が謝らなくていいんですよ。早く頭を上げてください」
俺とフールはラルファさんに急かされたので頭を上げるとそれを確認したラルファさんは話を続けた。
「確かに心配はしましたがお二人は冒険者なので危険がつきものが当たり前ですよね」
ラルファさんはそう言いながら自分の右手で涙を拭った。
「ですが、これだけは約束してください。お二人が『夕暮れの日差し亭』で宿泊していようが、お金を沢山稼げるようになり他の宿屋に泊まることになっても必ずこの街に生きて帰ってきてください。いいですね」
ラルファさんは俺達二人に約束を提示してきた。
「はいもちろんです。俺達はどんなことがあったとしても必ず生きて帰ってきます」
「はい、約束します」
俺もフールもラルファさんとの約束を守ると即答で誓った。
「はい。私もこれからもお二人が『夕暮れの日差し亭』に帰ってきてくれることをこれからも信じてお待ちますね」
ラルファさんは俺達が約束を守ると誓ったことに安心し、またこれからも俺達が必ず帰ってくることを信じることにしてくれた。
「おい、二人とも。そこで何を止まっている。早くギルドに戻るぞ」
突然、ギルドマスターであるエネドラさんからのお呼びがかかった。
「すいません今行きます!それじゃあラルファさん。夜には必ず帰ってきますので、いってきます」
「私も礼治様と共に必ず帰ってきますので、いってきます」
「はい。お二人のお帰りをちゃんと待っていますので、行ってらっしゃいレイジさん、フールさん」
ラルファさんに挨拶をしてからギルドマスター達が向かっている方向へ走り出していった。
それに対してラルファも俺達が見えなくなるまで見送ってくれた。
『夕暮れの日差し亭』に俺達が必ず帰ってくることを信じながら。
〜約十分後〜
冒険者達はギルドに着き、ギルドマスターがギルドの扉を開けた。
『ギルドマスター、そして冒険者がた、お帰りなさいませ』
ギルドマスターが扉を開けたと同時にギルドで待機していたギルド職員さん達が全員で出迎えてくれた。
ギルド職員さん全員の表情は冒険者達の無事の帰還に喜びの笑顔であった。
「ただいま。随分と豪華な宴だな。魔獣が迫っている中でこれ程の準備をしてくれたのか?」
ギルドマスターはギルド職員達に挨拶を返した後、周りを見渡しそう尋ねた。
ギルドマスターがそう尋ねるのも当たり前だろう。
なんせギルドの中に置かれているテーブルの上には沢山の美味しそうな料理の乗った皿やお酒やジュースなどの飲み物が入った瓶が並べられており、まるで何処かの高級ホテルで開かれたパーティー会場のようだった。
「冒険者達や警備兵達が戦う力のない私達の代わりに街を守るために戦ってくれていたんです。それならこれぐらいしないとお礼はできません。なので冒険者の皆さん本当にありがとうございました。これは私達のギルド職員一同の気持ちですのでどうか受け取ってください」
ギルドマスターの質問にギルド職員の一人の男性が代表して応えた後、冒険者達に料理やお酒を楽しむように急かしてきた。
「それはありがたい。じゃあお言葉に甘えて、お前等今日は夜まで楽しむぞ!」
『ヨッシャーーーー‼︎』
ギルドマスターはギルド職員さんの言葉に甘え、冒険者達もギルドマスターの声がかかると同時に歓喜の声を上げ我先にと料理が並べられているテーブルへと向かった。
俺やフール、もちろん他の大アルカナ達も料理が並べられているテーブルへと向かう。
「レイジ様、フール様」
向かう途中で声をかけられ俺達が振り向くとそこには涙を流しながら立つマリーさんいた。
「マリーさんいったいどうしたんですか⁉︎」
マリーさんが泣いていたので俺は慌ててマリーさんのもとに駆け寄り、声をかける。
「すいませんレイジ様。私、レイジ様達が本当に無事に帰ってきてくれたのが嬉しくて嬉しくて、涙が止まらないんですニャ」
「そうだったんですか。マリーさんには心配をお掛けしてすいませんでした。約束通りみんなで無事に帰ってきましたので、ただいまですよね」
俺はマリーさんの泣いている理由が自分達が無事に帰ってきたことでの嬉し泣きだと分かりホッとした後、マリーさんに『ただいま』と挨拶をした。
「はい。お帰りなさいませレイジ様、フール様」
マリーさんは流している涙を拭き自分といつの間にか背後にいたフールに笑顔で挨拶をしてくれた。
「ただいまです。マリーさん」
フールもマリーさんに挨拶を返しす。
「本当にお二人が無事で良かったです。……あの突然ですいませんがレイジ様達の背後におられる方々はもしかしてレイジ様の使い魔の方々ですか?」
マリーさんはそんな質問を突然してきた。
確かに俺の背後には使い魔であり、家族の大アルカナ達がいて、その中でもサタンは昨日の夕方にマリーさん達の前で呼び出していたのでそこから判断したのだろう。
「はいそうですよマリーさん。みんな俺の使い魔であり大切な家族ですよ。今回の討伐戦も家族のお陰で無事に勝利を収めることができたんですよ」
俺はマリーさんの質問を答えてから大切な家族を紹介した。
「レイジ様は本当に凄いお方なのですね」
マリーさんはそう言いながら頰を赤く染めながら俺になんだか熱い視線を送ってきた。
そんな状況の中、俺の後ろから観察していたサタンは俺と楽しく会話をしているマリーさんに嫉妬しているフールに小さな声をかける。
〔なあフールの姐御、そんな風にレイジの兄貴をあんまり縛るなよ〕
〔私は別に礼治様を縛っていませんが〕
フールも小さい声でサタンの言葉を否定した。
〔あのなあフールの姐御。レイジの兄貴はフールの姐御が言うように確かに優しいし強いからこの世界では絶対にモテる。だからこそああやってレイジの兄貴の魅力に惹かれて女が寄ってくる〕
〔礼治様は世界で一番素敵なお方です。それは当然のことです。しかし、それで礼治様に近寄ってくる女は私が排除しますが〕
サタンの言葉に物騒な言葉で返答するフール。
〔そんなことしたらレイジの兄貴に迷惑がかかるだろうが、俺が言いたいのはだな。この世界は弱肉強食の世界で強かったり、資産を多く持つ奴はモテて何人もの愛人や妻を持つことができる。レイジの兄貴もコレにいずれ当てはまることになる〕
サタンは一旦言葉をここで切りそんな会話をしているとはこれっぽっちも思っていない俺の方に目線を向けた。
そこにはマリーさんと楽しく会話をしている俺がいた。
〔女の中には裕福な暮らしのために強者に媚びを売る女がたくさんいる。だがあのマリーっていう女は純粋にレイジの兄貴のことを好きになっている。フールの姐御が言うような悪い女には見えないが?〕
〔確かにマリーさんは礼治様と出逢ってからすぐに礼治様の魅力に惹かれました。しかし、もし仮に礼治様とマリーさんが結ばれる形になりその後は私があまり相手にされないようになったらと思うととても怖いんです〕
フールは俺が他の女と楽しく過ごし、フール自身を相手にしてくれなくなってしまうんじゃないのかと恐れていたのだ。
〔おいフールの姐御。レイジの兄貴がそんなことする人だと思ってんのかよ。俺はあんたのことを見損なったぞ〕
フールの言葉にサタンはフールを本気で睨んだ。
〔あんたが心配するのはレイジの兄貴を信じてないということと同じだ。俺らのレイジの兄貴は家族思いで絶対に平等に接してくれる、あんたはその中でもポジション的には妻だろうが、それに自信を持てよ。レイジの兄貴に何人女ができようがあんたが正妻であり、レイジの兄貴を一番愛しているのはあんたで変わらないだろうが〕
〔サタン……。ありがとうございます。そうですよね、私は礼治様の正妻ですし、礼治様がそんなことをされるお方ではありません。私は自信を持って礼治様の妻として礼治様を支えていきます〕
サタンの熱弁にフールが抱えていた負の感情を払いのけてサタンに感謝した。
〔それでこそフールの姐御だな〕
フールがいつも通りにもどりサタンも睨むのをやめた。
<グウ〜〜〜>
突然、腹の虫の声が聞こえ俺やマリーさん、それからフール達が音の聞こえた方に目線を向ける。
「レイジ兄。ボクもうお腹がぺこぺこ///」
目線の先には恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染めて顔を俯いかせていたのはトランだった。
「ああごめんなトラン。それじゃあみんなで食べようか」
「やっと飯だー」
「「レイジ兄さんと一緒にご飯だー」」
「ほっほっほっほっほぉー。やっと美味い酒が飲めるわい」
俺がそう言った途端、他の大アルカナ達もお腹が減っていたらしくやっとご飯を食べれることに喜んでいた。
「じゃあマリーさん自分たちは向こうで食べてますんで」
俺はマリーさんにそう伝えてから席が空いているところへと移動した。
フールは俺の背後をついて行こうとしたがその前にマリーさんのところに向かった。
〔マリーさん。チョット良いですか?〕
フールはマリーさんに小さい声で話しかけた。
〔何でしょうかフール様?〕
マリーさんもフールの話す音量に揃えて小さい声で話した。
〔私は礼治様の正妻ですがマリーさんが礼治様を心から好きだとお想いなら礼治様の愛人になっても私は構いませんので告白するならしても大丈夫ですよ〕
「ヘェ?……エェ〜〜〜〜〜〜〜⁉︎」
マリーさんはフールの突然の発言に一瞬頭の整理が追いつかず、理解すると同時に大声を出して驚いた。
「マリーさん、『シー』ですよ」
フールは右手の人差し指を立ててマリーさんに静かにするよう伝えた。
マリーさんは慌てて自分の口を両手で抑え頷いた。
「これは別に強制ではなくただマリーさんがしたいようにすれば良いだけなので、私はただ私自身が思っていることを伝えただけなので後はマリーさんの自由ですので私はここで失礼しますね」
フールは自身が伝えたいことを伝え終わると俺のところへと戻ってきた。
その間マリーさんはただ茫然とフールを見送ることしかできなかった。
フールは俺のところへと戻ってくるなり腕に抱きついてきた。
「どうしたんだフール。マリーさんになんか用事でもあったのか?」
フールとマリーさんの会話を聞いていなかった俺は腕に抱きつき、頰を擦り付けてくるフールに尋ねると。
「はい」
フールは元気よく満面の笑みで返事をした後は用事に付いて話してはくれなかったが俺はそれ以上は聞かずに大アルカナ達と食事を食べ始めた。
そんなこんなな状況から討伐戦を無事に勝利を収めた祝いの宴が始まった。