第32話 VSゴブリン軍団”役割”
今回も長いです。
ゴブリン軍団が森を抜けて南門に到達予定のタイムリミット30分を切った時エネドラさんが率いる冒険者達計153名(エネドラさんを含む)、ジグト率いる警備兵計219名(ジグトさんを含む)、総勢372名が南門前に待機していた。
そんな中のある一角には多くの冒険者が集まっており、ギルドマスターであるエネドラさんやAランク冒険者のロイドさんがいた。
そしてその集まりの中心には俺とフールが立っている。
「あのー。何で俺の周りに集まっているんですか?」
「お前の召喚魔法に興味があるからに決まっているからだろう。他に何がある」
「俺も昨日は直接見てなかったからな。興味がある」
俺の質問にギルドマスターはさも当たり前かのように答え、またロイドさんは垂直な答えを返してきた、さらに他の冒険者達も意見が同じらしく、コクコクと頷いていた。
「サッサと始めんか。早くせんとゴブリン軍団が来るぞ」
ギルドマスターは目をキラキラさせながら急かしてきた。
ギルドマスターはどうやら昔からの魔法研究バカらしく俺の扱う未知の魔法に興味津々らしい。
「じゃあ一気に呼び出しますんでもう少し広めのスペースを空けてもらえませんか?」
俺がそう言うとフール以外の全員がスペースを空けるために後ろへ下り自分を中心に半径4メートルのスペースができた。
「じゃあいきますよ」
俺は前振りをしてから右の手のひらを前に向けた。
「『タロットマジック』大アルカナ、NO.4『エンペラー』、NO.7『チャリオット』、NO.8『ストロング』、NO.11『ジャスティス』、NO.15『デビル』、NO.20『ジャッチメント』」
呪文を唱えると六つの光が現れその内の三つからはテミス、サタン、トランが現れた。
その後は一つ目の光からは玉座に座る皇帝が描かれたカードが出現するとすぐに消え、今度は鉄の鎧に赤いマントを羽織った60代の白髪頭で白い髭を生やした男性が現れ。
二つ目の光からは黒い馬と白い馬が戦車を引っ張っている様子が描かれたカードが出現するとすぐに消え、今度は黒髮短髪で灰色の瞳で黒一色で身を包んだ中学生くらいの日焼けした少年と白髮長髪で少年と同じく灰色の瞳で白一色で身を包んだ中学生くらいの少女という顔が似ていることから双子だと考えられる二人が現れ。
最後の三つ目の光からはライオンを余裕で抑える女性が描かれたカードが出現するとすぐに消え、魅力的な身体を持った踊り子が着るような動きやすく魅せる深紅のドレスを着たダークレッドのポニーテールで黒目をした色白の20代の女性が現れた。
全員を呼び終えると最初に呼び出した三人が話しかけてきた。
「レイジ兄久しぶりだね。ボクは何をすればいいの?」
「よっ、レイジの兄貴。俺はどいつを縛ればいいんだ?」
「おはようございますレイジ様。何なりと指示をお申し付けくださいませ」
三人はそれぞれ俺に挨拶をしてきてくれた。
「おはよう三人とも。でもちょっと待っててくれるか?まだ初めて会ってから挨拶をしてないか家族がいるから」
俺はそういった後、初めて会う大アルカナ達四人の方を向く。
「初めまして俺は礼治。これから家族としてよろしくな」
「初めましてじゃのう我が主レイジ殿。儂は大アルカナの一人『エンペラー』のロマノフじゃ。これからはレイジ殿の叔父として、またレイジ殿を守る盾としてよろしく頼む」
「「初めましてレイジ兄さん」」
「俺は大アルカナの『チャリオット』の片割れのホースだ」
「同じく私は大アルカナの『チャリオット』の片割れのポニーです」
「「俺(私)と妹(兄)でレイジ兄さんの弟(妹)として、手脚となって頑張るからよろしくお願いします」」
「私は大アルカナで『ストロング』のフォースだ。レイジの姉として弟の敵は私が殲滅してやるからこれからよろしく頼むよ」
俺が挨拶をすると四人もそれぞれで自己紹介をしてくれた。
「ところで私らは何をすればいいんだ?周りにいる奴の殲滅か?」
フォースが周りにいるギルドマスターやロイドさん達に目を向けてそう言い放った。
「違う違う違う‼︎‼︎周りにいる人達は仲間だから倒したらダメ‼︎」
「そうですよフォース!礼治様の指示がでるまでは勝手に行動を起こそうとしないでください!」
俺とフールは慌てて今にも冒険者達に殴りかかろうとしているフォースを止める。
「そうなのか?そりゃー悪い悪い。つい早くレイジの役に立ちたいと思っちゃってさゴメン」
「まったく、フォースさんは手が出やすいのがいけませんね。しかし、レイジ様は私達を何故呼ばれたのですか?周りを見渡す限りは兵や冒険者やらが大勢おりただ事ではないご様子でございます」
テミスの質問に俺は今まであったことを大アルカナの家族達に話した。
「……っと言う訳でゴブリン軍団の殲滅のためにみんなの力が必要なんだ。力を貸してくれるか?」
「もちろんだぜレイジの兄貴!」
「ボクもレイジ兄のために頑張るよ!」
「私もレイジ様と一緒にレイジ様が守りたいモノをお守りします!」
「ほっほっほっほっほぉー。『守り』は儂にとっての専売特許じゃのう。それなら儂の力を充分に発揮させてもらおうかのう!」
「「俺(私)もレイジ兄さんのために全力で頑張るぜ(よ)!」」
「初めての出番で敵が5,000体ってスゲーやり甲斐があるじゃねえか!ヨッシャー‼︎やる気出てきたーー‼︎‼︎」
大アルカナの全員が初めての戦闘にも関わらず、全力で頑張ることを誓ってくれた。
「じゃあこれからそれぞれには役割を発表するから聞いててくれ」
『はい‼︎』
「まず最初はテミス」
「はい‼︎」
「テミスには重力魔法で前衛のザコや後方支援のゴブリンをできるだけ多く一掃して貰いたい。できるか?」
「はい、レイジ様。お任せ下さいませ!私テミスは全力を尽くして敵陣の一掃に取り組ませて頂きます‼︎」
テミスは空いている右手拳を強く自分の左胸に叩きつけ了承してくれた。
「次はフォース」
「なんだいレイジ、私にできることなら何でも言ってくれ‼︎」
「フォースには他の冒険者達や警備兵達と一緒に前衛を任せる」
「ウッシャーーー!任せろレイジ‼︎私の力で残った敵をぶっ潰してやるからな‼︎‼︎」
フォースは両手の拳を強くぶつけて自分のヤル気を表してくれた。
「次にトラン」
「ボクは何をすればレイジ兄の役に立てるの?」
「トランにはご自慢の演奏で全体の回復のサポートを頼む。全員が生きて帰れるようにだ。やってくれるか?」
「もちろんだよレイジ兄!ボクの演奏でみんなをずっと元気な状態にしてあげるよ‼︎」
トランはジャンプをしながら自分の役割を理解し、了承してくれた。
「最後に、ロマノフ、ホースとポニー、それからサタン」
「なんじゃ」
「「はい」」
「オウ」
「四人には、俺とギルドマスターとロイドさんの合わせて三人を頭までの道まで繋げるための突撃隊に、ロマノフはギルドマスターを重点的に他の俺とロイドさんを頭までの道のりを守る護衛役、ホースとポニーは隊の前衛で道を切り拓く役を、サタンはホース達の後ろで途中で当たるかもしれない強敵の拘束役を頼む」
「儂に任せいレイジ殿!ギルドマスターだけではなく、レイジ殿は勿論のことロイドと言う者も合わせて完璧に守り通してみせるぞ‼︎」
「「任せてレイジ兄さん!俺たち(私たち)が道を拓いてあげるから安心して前進していいぜ(よ)‼︎」」
「途中の邪魔物は俺に任せろ!レイジの兄貴はボスのことだけを考えときな‼︎」
ロマノフ達の四人も全力でサポートすることにヤル気を表してくれた。
「あのー礼治様?私は何をすれば良いのですか?」
他の大アルカナ達に指示を出した後にフールが自分に声をかけてきた。
「フールには風魔法で後方支援を頼めるかな?」
「エ⁉︎⁇<ガーン>」
俺の言葉を聞いたフールはそんな効果音が聞こえそうなほどの落ち込みを見せた。
「私は礼治様にとって役立たずですか?だから後方支援になったんですか?」
今にも泣き出しそうなフールの頭に手を置き優しく撫でた。
「フールが役立たずのわけがないだろう?フールには大事な役割を託したんだけどなー?」
「礼治様をお守りするのではなく、後方支援をすることがですか?」
俺の言葉にフール泣き出しそうになりながらも俺の目を見て尋ねてきた。
「そうだよフール。この討伐戦はただ敵を殲滅するだけではダメなんだ。全員が生きて帰らなくちゃいけないんだ。だからこそフールには後方支援で頑張って欲しいんだ。それでも嫌かな?」
「確かに全員が生きて帰ることが今回最大の目標です。しかし、私はやっぱり礼治様のお側にいたいんです!」
俺の説得になかなか応じてくれないフールに何かないかと考えていると唐突に俺達はまだこの街を詳しく知らないことを思い出した。
「なあフール。俺達はまだこの街のことをよく知らないよな?」
「はいそうですが、それがどうかなさいましたか?」
俺の唐突な質問に頭を横に傾けるフール。
「じゃあフールが後方支援を頑張ってくれたら、戦いが終わって暫くして落ち着いたら一緒に街を歩かないか?」
俺の発言にフールの顔を今までにないほど真っ赤に染めた。
「れれれれれれ、礼治様⁉︎そそそそそそ、それは、でででででで、デートと言うことですか‼︎‼︎‼︎⁉︎」
「まあそうなるね。<ニコ>」
フールはさっきまでの泣き出しそうだった表情から一変、俺の返答により満面の笑みを浮かべた。
「はい分かりました‼︎私は後方支援で精一杯頑張らせて頂きます‼︎‼︎」
フールもやっと納得して承諾してくれた。
「よかったと。……あっそうだ」
俺はまた突然にあることを思いついた後、他の大アルカナ達の方を向いた。
「みんなもフールみたいに頑張ってくれたらお礼に何かするから何がいいか考えておいてね」
すると俺の言葉を聞いた大アルカナ達は
「みなさん頑張りますよ‼︎‼︎」
「「「「「「オーーーーーー‼︎‼︎」」」」」」
ご褒美があることが相当嬉しかったらしく、テミスの掛け声で他の大アルカナ達は大声を上げた。
大アルカナ達家族の士気を鼓舞した俺はギルドマスター達の方を向いた。しかし、そこには冒険者の男性陣が俺の方を睨みつけており。
『リア充爆発しろーーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』(男性陣一同)
と宣告されると同時にゴブリン軍団到着のタイムリミットの10分を切っていた。
次からやっと戦闘シーンがあります。