第29話 VSゴブリン軍団 ”論破”
「報告します!『初心の森』の奥を散策していた冒険者が森の奥でゴブリンの群れを発見し此方の街に向かって移動しているということです!そしてゴブリンの数は5,000体を超えているとのことです‼︎」
男性のギルド職員はとんでもない報告をした。
「5,000体だと‼︎そんな数の魔獣一体どこに隠れていた⁉︎」
エネドラさんが余りの敵の多さに大声を上げた。
「現在原因不明です。更に報告によりますとタダの下位種のゴブリンに紛れてゴブリン中位種の『ゴブリンナイト』,『ゴブリンマジシャン』,『ゴブリンアーチャー』,がそれぞれ500体ずつ。ゴブリン上位種の『ゴブリンジェネラル』『ゴブリンヒーラー』が300体ずつ。そしてその大軍を指揮する者がゴブリン特異種の『ゴブリンキング』だそうです‼︎森を抜けて南門に辿り着くまでには約二時間掛かるそうです‼︎」
「上位種の他にも特異種だと‼︎直ちに警備兵団長をここに呼べ‼︎後、街にいるDランク以上の冒険者を全てギルド前の広場に集めろ‼︎それからギルド職員には戦闘で使う回復薬と魔力薬を有りったけ準備しろ‼︎医療道具も忘れるな‼︎それと最悪な事態に備えて街の住人を全て避難させろ‼︎急げ‼︎‼︎」
「はい‼︎‼︎」
エネドラさんは的確な指示を職員に伝え指示を受けた職員はすぐにこの場を去って指示を他の職員達に伝えに行った。
「ギルドマスター、俺からお願いがあります。」
部屋に残っていた俺はエネドラさんに声をかけた。
「なんだい⁉︎私は今からしないといけないことが沢山あるんだが‼︎」
「俺もこの戦いに参戦させて下さい‼︎」
「‼︎‼︎‼︎⁉︎」
エネドラさんは自分の申し出に驚きフリーズした。
暫くの間その場は沈黙していたがその沈黙は我に返ったエネドラさん自身により、すぐに破られた。
「君は話を聞いていなかったのか?この戦いに出るのはDランク以上の冒険者だけだ!まだFランクのしかも昨日冒険者になったばかりの冒険者が何をできる‼︎」
エネドラさんは殺気のこもった目で睨んできた。
その殺気は誰もが恐れるほどのものだった。しかし、俺はこれに一歩もひるまずに話を続ける。
「俺には少なくともDランクの冒険者を簡単に倒せる力があらます。それにフールや大アルカナという家族(使い魔)がいます‼︎」
「幾ら力が有ったとしても私は君の力を知らないから許可は出さん‼︎」
俺とギルドマスターは互いに睨み合いながら激しい口論を始めた。
「ギルドマスター。ではあなたが昔会った異世界人はこの状況を一人で何処まで覆すことができますか?」
「今は関係無いだろ!もし、仮に答えるとするならば時間は掛かるが一人で殲滅させれる力を持っていた」
俺は一瞬、俺以上の化け物の存在に驚くがすぐに気持ちを持ち直す。
「なら俺にはその人までとは言いませんが異世界人としての力はあります!信じてください‼︎」
「だから君とあいつは関係無いと言っているだろうが‼︎同じことを何回も言わせるな‼︎‼︎」
エネドラさんは先程とは比べ物にならないほどの殺気を放った。しかし、俺はそれでも引かずにいた。
「ではギルドマスターが知っている異世界人は今と同じ状況にあったとして、Fランクだからという理由だけで諦める人なんですか⁉︎」
俺はこの時確信があった。
何故かと言われれば分からないが、ギルドマスターが知る異世界人は必ず一人ででも戦場に出ていたと思う。
「あいつはそんな事は死んでもやらない‼︎自分の命を懸けて戦場に単独で乗り込み腕が無くなろうが、足が引き千切られようが、命のある限り戦い街を守る奴だ‼︎」
やはり俺の確信は当たっており、俺の知らない異世界人は戦いに行っていたらしい。
「なら俺もその人と同じように戦場に出ます。それでもダメなら単独で敵陣に乗り込みます‼︎」
俺の言葉にギルドマスターは苦虫を噛み潰した表情をした。
「わかった‼︎好きにしろ!その代わりギルド前の広場で待っていろ!いいな‼︎」
「はい‼︎ギルドマスターありがとうございます‼︎失礼します‼︎」
ギルドマスターは俺に戦場に出る許可を出してくれた。
それを聞いた俺は返事をした後に御礼をし、部屋を去った。
その後会話に混ざれなかったフールも俺の後を追って部屋を出た。
部屋に一人だけ残されたエネドラさんはソファーに座りなおしてから警備兵団長のジグトさんが来るまでの間、過去に出会った異世界人の事を思い出していた。