第22話 テンプレは結構面倒です。
「おいそこのガキ!チョット待ちやがれ‼︎」
俺は本日二度目のテンプレに溜息をつくしかなかった。
後ろを振り向くとそこには三人の二十代位の男冒険者達が立っており一人は大剣、もう一人は杖、最後の一人は槍を背中に背負っていた。
すると大剣を背負った男が一歩前に出てきた。
「おいガキ。俺様はEランクパーティー『狼の牙』のリーダーのジルだ。お前、新人の分際で何大金を手に入れてんだよ。調子に乗ってんじゃねえぞガキ‼︎」
「そうだぜガキ‼︎しかもそんないい女がいながらマリーちゃんと楽しそうに話しやがって死にてえのかクソガキが‼︎」
槍を背負った男も加わってきた。
正直に言って面倒臭かったが無視するともっと面倒臭くなりそうだったので男三人に対応することにした。
「あの、すみませんが俺は別に調子に乗ってませんよ。報酬は確かに多いですがそれを自慢しているわけでは有りませんし、フールは俺の大事なパートナーです。それとマリーさんとは依頼報酬とランク昇格の事しか話していませんのであなた方にとやかく言われる筋合いはありませんが?」
「それを調子に乗ってるって言うんだよクソガキが‼︎ 謝罪として金と女を置いて消えやがれ‼︎」
杖を背負った男が今朝ギルドで絡まってきた男と同じことを言ってきたのでまた溜息をついてしまった。
「なんで俺があんたらに金とフールを渡さないといけないんだよ。金は俺とフールの二人で稼いだモノだし、フールはモノでもねえしお前らみてえな奴に俺の大切なフールを渡すわけないだろうが」
「なんだとクソガキ‼︎もう怒ったぞクソガキの分際でいい気になりやがって‼︎その大口を叩けないようにしてやるから覚悟しやがれ‼︎‼︎」
槍を背負った男がそう言って殴りかかってきた。
俺は今朝みたいに男を一旦外に投げ飛ばそうと思い構えようとした瞬間。
<ビュン>
俺の真横を何かが音を立てながら凄い勢いで通り過ぎ、殴りかかってきた男に直撃した。
男はそのまま吹っ飛びギルドの壁に衝突し床に俯けの状態で気を失ってしまった。
俺は直ぐに後ろを振り返るとそこには案の定、両手を構えてドス黒いオーラを放つフールがいた。
どうやらさっき真横を通り過ぎたのはフールの風魔法の一つ『風球』のようだ。
「私の礼治様を『クソ』呼ばわりにするゴミはこの私が排除します。礼治様を侮辱したことを地獄で後悔しなさい」
このフールを見た残り二人の男は足を震わせ
歯をガタガタと鳴らしていた。
この状態のままではギルドがタダでは済まないのでフールを急いで抑えることにした。
「フール落ち着け!ギルドの中で暴れたらヤバイからマジで止めろ‼︎」
フールの前に両手を広げて立ち声をかけるが。
「礼治様は離れて下さいませ。私はあのゴミ達を排除しなければなりません」
(ダメだなこれじゃあ。仕方ないこうなったら力技だ)
もう怒りを抑えることのできないフールを強行手段で抑えることにした。
「『タロットマジック』小アルカナ、聖杯」
呪文を唱えて『水の聖杯』を異空間から取り出して、今朝男を回復させた時に覚えた新しい魔法を使った。
「『水鎖』」
呪文唱えると聖杯の中から水の鎖が勢いよく飛び出していきフールの身体全体を水の鎖が縛った。
これで大丈夫だろうと思ったがそれは違ったており、何故なら。
「こんなモノーーーー‼︎」
とフールが力ずくで水の鎖を引き千切ろうとしていたのである。
このままでは直ぐに鎖は千切れると思い新たに別の呪文を唱えた。
「『タロットマジック』大アルカナ、NO.15『デビル』」
呪文を唱えると光を放ち悪魔が描かれたカードが出現して消えると同時に光の中からボサボサの赤髪に赤目の十代後半の上半身裸で腕に鋼で作られた鎖を巻いている色黒の男が現れた。
「おうレイジの兄貴。初めましてだな、俺の名前はサタンだ。よろしくな」
サタンと名乗った色黒の男が挨拶してきたが今はそれどころじゃなかった。
「サタン挨拶は後‼︎フールを抑えてくれ‼︎」
「レイジの兄貴?なんでフールの姐御を抑えないt……‼︎。わかったレイジの兄貴!俺に任せろ‼︎『悪魔鎖』」
サタンは一瞬、俺が何を言っているか分かっていなかったがフールを見た瞬間、フールの放つドス黒いオーラを感じ状況を理解してすぐさま呪文を唱えた。
サタンが呪文を唱えると腕に巻かれていた鋼の鎖が延びフールに巻きついた。
「うわ⁈キャア!」
鎖を巻きつけられたフールはバランスを取れずにその場に倒れ込んだ。
「サタン!何故邪魔をするんですか⁉︎私は礼治様をクソ扱いしたゴミどもを排除しなければいけません‼︎早くこの鎖を解きなさい‼︎」
フールはサタンの鎖に縛られ身動きがとれなくなったが未だにドス黒いオーラを放っており、サタンに鎖を解くように訴えた。
「悪いなフールの姐御。幾らフールの姐御の頼みでも俺らの主であるレイジの兄貴のお願いの前にはどうしようもできないぜ」
サタンはフールの訴えに応じなかった。
「サタンはフールの足の方を持ってくれ‼︎ここから運ぶぞ!」
「了解だぜレイジの兄貴。うんじゃあ、ちょいと失礼するぜフールの姐御」
「礼治様、それにサタンもチョット待ってください‼︎」
フールは身体を動かす事が出来ない為に口で抵抗するが俺はそれを無視する。
「サタンいくぞ!せーの‼︎」
俺の掛け声と同時にサタンの鎖を巻き付けられ倒れているフールをサタンとで抱え上げる。
「ギルドの皆さん大変お騒がせしてしまいすみませんでした‼︎失礼します‼︎‼︎」
ギルドに謝罪してからフールを抱えたままサタンと一緒にギルドの外に飛びたした。
この時は『隠密』を使い、これにより周りからは見られずに宿屋に向かうことができた。しかし、ある茶色のローブを着てフードを被った外見からして女性の横を通り過ぎた時、その女性は俺が『隠密』を使っているにもかかわらずその俺達に気づき振り返るがそんな事に気付いていなかった俺はもう遠い彼方へ走っていっており声を掛けられることがなかった。
そのフードを被った女性は暫く俺達の走っていた方向を眺めた後、ニヤリと口角を上げて微笑んでからギルドに向かっていった。




