第17話 対人戦=魔法の試し撃ち
今回出てくる残り2つの小アルカナの説明は最後にのってます。また、今回は血が苦手な方は読まないでいて下さい。
大丈夫な読者の皆様は本編をどうぞ。
外に出るとネストはギルド前の広場の中央付近で今まさに立ち上がるところだった。
俺はネストから五メートルの所まで近づいた。
ネストは立ち上がった後、俺が近づいていたことに気づき慌てて背中に背負っていた鉄で創られたメイスを構える。
「先輩。俺、気分が変わりました。ぜひ特別訓練を受けさせて下さい」
「さっきのはマグレだったことに調子に乗りやがって、言われなくても訓練してやるよこのガキが‼︎」
ネストは俺に軽々と投げ飛ばされたことを認めたくなくて大声で怒鳴ってくる。
「流石は先輩。わざと吹っ飛んでくれたんですね。そうだ!どうせなら自分達の所持金や金になるものを賭けて勝負しませんか?」
「アァ⁉︎賭けだと⁉︎」
俺の言葉が気に食わなかったものの『賭け』という言葉にネストは反応した。
「はい賭けです。ルールは簡単でどちらかが重度の怪我を負うか降参するかして両者がこれを認めればそこで試合終了、勝者は敗者から全財産を貰うというものです」
「なるほどなその勝負のった。」
この時ネストは自分を完膚なきまでに叩き潰して、その後フールを女として使えなくなるまでに犯して奴隷商に売ってやるとそう考えていた。しかし、この時ネストは気づいていなかった、ネストの目の前にいるのが人間の皮を被った化け物だということを。
一方で自分はネストの返答に満足して自分の財布から銅貨一枚を取り出した。
「それじゃあ試合開始の合図は俺が銅貨を上に弾くんでその銅貨が地面に落ちた瞬間に始めでいいですか?」
「ああ、それで良いぜ。さっさと始めな!」
「はい。ではいきますね」
ネストに急かされ銅貨を<チャリン>と鳴らして上に弾いた。
弾かれた銅貨は上空で弧を描き自分とネストの間にまた<チャリン>と鳴らして落ちた。
ネストは音が鳴ったと同時に俺の方に駆け出しメイスで右肩に狙い、力一杯に振ってきた。
これで終わりと思ったネストだったが次の瞬間、あり得ない光景を目にした。
その光景とは。
「どうしたんですか先輩?こんな遅く力の無い攻撃じゃあ簡単に受け止められますよ?」
ネストの攻撃を俺は右手で簡単に防いでいたのだ。
ネストは慌てて離れようとしたが俺がメイスから手を離さなかったので離れようとおもっても離れられない状況だった。
「どうしたんですか先輩?早く本気を出して下さいよ。これじゃあ訓練に成りませんよ」
俺はそう言ってみたが、ネスト本人はもう既に力一杯に込めていたので何もできなかった。
ネストはメイスを諦めて離れようとしたので俺は次の行動に移った。
「先輩が来ないんなら次は俺の番ですね。『タロットマジック』小アルカナ、杖」
俺は異空間から『火の杖』を取り出し、石の方を上空に向ける。
「ちょっと待ってくれ‼︎」
「問答無用ですよ先輩。『火槍』」
ネストの声を無視して昨日のうちに覚えていた呪文を唱える。
すると、上空に火の槍が四本形成さ、火の槍はそのまま放たれネストの四肢を貫いた。
「ギャァーーーーーー‼︎」
ネストは余りの痛みにメイスを手から離し大声を上げ手足からは血を出しながら激しい痛みにのたうちまわった。
そこでネストやっとは気づいたのだろう。
『自分はとんでもない化け物に関わってしまった』っということを。
「どうしました。せ、ん、ぱ、い」
そんなネストに笑いながら声をかける。
「こ、ここ、降参だ!悪いもう許してくれ!それにもう俺はこの怪我でもう動けねえ!だからもう終わりにしてくれ‼︎」
ネストは怯えながらそう謝罪してきた。しかし、俺はそれでは終わらせなかった。
「え?何の事ですか先輩?『タロットマジック』小アルカナ、聖杯」
ネストの言葉にわざと疑問符をつけてから呪文を唱え、メイスを投げ捨て銀色で青色の宝石が埋め込まれた聖杯を異空間から取り出し右手で掴んだ。
「『水回復』」
呪文を唱えながらネストに聖杯の飲み口の方を向けた。
するとさっきまで何も入っていなかった聖杯から突然水が溢れ出してきた。
その水はネストにかかり、同時に光を放ち消え跡を残さずネストの四肢の傷を治し、先程まで流していた血と共に水も一緒かに消えていた。
「傷なんて何処にもありませんよね先輩?それに最初に言いませんでしたっけ?『両者がこれを認めればそこで試合終了』って、俺はまだ認めてませんし。続きの訓練をしましょうよ。せ、ん、ぱ、い」
治療が終わった後、俺はネストに向かって笑顔でそう言った。
「ヒィ〜〜〜〜‼︎」
ネストは背筋が凍えつきそうなほどの笑顔に恐怖し逃げ出した。
「何処に行くんですか先輩?『解除』。まだ終わってませんよねぇ?『タロットマジック』小アルカナ、金貨」
逃亡を始めたネストに問いかけながら『火の杖』と『水の聖杯』を異空間に戻し、新しく『土の金貨』を両手に五枚づつ取り出す。
その金貨はこの世界の金貨とデザインは違っており、女神様が彫られた絵で首元あたりに米一粒分の大きさの黄色の宝石が埋め込まれていた。
因みにこの世界の貨幣には誰かの顔が彫られている。
俺は金貨を全てをネストの走る方向に投げつけた。しかし、金貨は一枚もネストに当たらず通り過ぎていった。
俺達の戦いを観戦していた他の冒険者達は俺が外したかと思っていたがそうではなく。
「『土壁』」
呪文を唱えた直後、金貨一枚一枚から大量の土が溢れ出てきて大きい土の壁が形成された。
ネストは突如目の前に現れたその土壁に思いっきりぶつかり後ろに倒れた。
ネストが起き上がろうと両膝と両手を地面につき顔を上げた瞬間、後ろの土壁は跡形もなく消え、ネストの目の前には凍えそうな笑顔とは逆で今度は瞬時に燃え尽きそうなほどの怒りのオーラを放ち剣先をネストに向けて立っている俺と目を合わせた。
「お願いだ殺さないでくれ‼︎‼︎俺が悪かった!だから本当に許してくれ頼むこのとうりだ‼︎‼︎」
そう謝り土下座をしてくるネストに俺はあることを質問した。
「おいあんた正直に答えろ。もし、あんたと俺が逆の立場だったらあんたは俺を殺さないでいたか?」
「それは勿論y<スパッ>ヒィッ‼︎」
「俺は正直に答えろって言ったはずだが?次はねえぞ?」
ネストが嘘をついたので右の頬を少し斬りつけ血を流させた。
そして再度脅しネストに質問を答えさせた。
「分かりました正直に答えます!俺はあんたを完膚なきまでに叩き潰して、その後あんたの連れの女を女として使えなくなるまでに犯して最後は奴隷商に売ってやるとそう考えていました‼︎本当にスミマセン‼︎もうしませんので許して下さい‼︎‼︎お願いします‼︎‼︎‼︎」
ネストの謝罪を聞いた後、俺は無言で剣を持ち上げ振り下ろした。しかし、その剣先はネストには当たらずネストが土下座している目の前の地面に突き刺さった。
「ギャァーーーー‼︎‼︎‼︎」
ネストは目の前にある剣に驚き後ろに仰け反り腰を抜かした。
「今あんた金を幾ら持っている?」
「‼︎、大銀貨1枚、銀貨が3枚、後は大銅貨と銅貨を6枚づつ持ってます‼︎」
俺の質問にネストは怯えながらも即答した。
「じゃあ大銀貨1枚だけここに置いて今すぐ自分の前から消えろ!準備を整えたら明日の朝6時の鐘が鳴るまでにこの街から出てけ!そして一生この街に戻って来るな‼︎もしこの街で見つけたら地獄の果てまで追いかけてあんたを殺す‼︎‼︎分かったらさっさと行け‼︎‼︎‼︎」
「はい、ありがとうございます!失礼します‼︎‼︎」
ネストはそう言って大銀貨1枚を置き脱兎のごとく俺の前から去って行った。
その戦いを瞬きすらせずに観戦していた冒険者達は呆然としてその場に立つしかなく、また自分が因縁をふっかけなくて良かったと心から思う者も何人かいた。
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水の聖杯
LV.1
水魔法
(水回復)
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土の金貨
LV.1
土魔法
((土壁)
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