第138話 アルバス伯爵様
大変お待たせして頂き誠に申し訳ございません。前の投稿から一ヶ月以上ぶりの投稿です。
「これはいったい何の騒ぎだ?」
『!!??』
突然の声にその場にいた全員が声のした方を向くとそこにはギルドマスターのエネドラさんと見知らぬ男性が此方に向かって歩いてきているところだった。
此方に向かって歩いて来る男性は五十代くらいで、誰かに似ているような気がした。
「ア、アルバス伯爵様⁈ お、お助け下さい‼︎」
俺がそう思っていると先程まで俺達を脅そうとしていたママンテ男爵がその男性を見た瞬間、その男性にすがりつくような勢いで駆け寄っていく。
どうやらあの男性がこの街を治めている貴族。アレイン・アルバス伯爵様のようだ。
「ママンテ男爵ではないか。助けを求めるとはなにがあった?」
「あの者たちから命を狙われているのです!どうかお助けを!」
「⁈」
男爵はあたかも自分は被害者であるかのようにアルバス伯爵様に助けを求め始めたのだ。
「おい、テメェ‼︎ 先に手を出したのはあんたからだろうが‼︎ デタラメなことを言ってんじゃないよ‼︎」
男爵の嘘の発言に俺を中心に囲むようにして守っていたフォースが怒鳴り声をあげた。
「ヒイィ‼︎」
しかし、それはかえって男爵をさらに怯えさせることとなる。
「フォース。今は怒鳴る気持ちを抑えて!」
俺は慌ててフォースの方を向き、彼女を落ち着かせる。
「なんでだよレイジ!だってあいつがデタラメなことを!」
「それはわかってる。だけど今フォースがそんなに怒鳴っていたら俺たちの方が不利になるんだ。だからお願い。今は気持ちを抑えて」
フォースは正しいことを言っているが今の状況では相手側が有利になりかねない。
「……わかったよレイジ」
フォースは少し考えてから自分の中で煮え滾る怒りを抑えながら了承してくれた。
「ありがとうフォース」
フォースの了承に礼を言ってから俺は再び前の方を向くと、アルバス伯爵様が俺たちの方まで歩いて来ていた。
「話す前にまずは互いに自己紹介からしよう」
伯爵様は俺と話すのにちょうど良い距離で立ち止まると自己紹介を始めた。
「儂はこの街を治めているアレイン・アルバスである」
「初めましてアルバス伯爵様。私は冒険者ギルドに所属のCランクパーティー『銀の絆』のリーダーを務めております。礼治と申します」
伯爵様の後に続いて自分の自己紹介をしてから頭を深く下げる。
「早速本題に入るのだが、ママンテ男爵の命を狙っていると言うのは事実か?」
「僭越ながら答えさせて頂きますが、ママンテ男爵様が申していますことは全てデタラメです」
「ほぅ?」
「私はこのギルドで占い師として『タロット』を経営しておりますが、そこへママンテ男爵様が来られ、私を専属の占い師として雇うと申されたのですが私はそのお誘いを丁重にお断りしましたところ、ママンテ男爵様はご自身が雇っております兵士に私を襲わせました。しかし、それを私の家族達が返り討ちにした。これが事実にございます」
俺はアルバス伯爵様にママンテ男爵の言っていることはデタラメであることと先程起きたことの一部始終を話す。
「アルバス伯爵様!其奴の言っておりますことこそが全てデタラメにございます!奴の仲間が我を殺しにかかろうとしていたのです!」
しかし、ママンテ男爵も負けじと嘘を重ねてくる。
「ママンテ男爵様。もし仮に貴方の主張が正しいとするならば、なぜ私は貴方の命を狙う必要があるのですか?」
俺はその嘘を逆手に取ってママンテ男爵に問い詰める。
「ええい黙れ!なら逆に問おう!我が先に手を出したと言う証拠はどこにある‼︎ あるならその証拠を見せてみよ‼︎」
しかし、それはこちらも同じこと。証拠がなければ意味がない。
「どうした? 早く証拠を出してみたらどうだ?」
こちら側の証拠がないことに強気になったママンテ男爵は嘲笑う表情で証拠を示せと言ってくる。
(どうすりゃいいんだよ)
俺がそう悩んでいる時だった。
「証拠ならありますよ」
『!!??』
その一言に、その場にいた全員がその声がした方に目を向けた。
「私が主人であるレイジ様の証言が真実であることを証明致しましょう」
そこには黒のスーツを着こなし、キリッとした顔つきの知的な雰囲気を漂わせる男性が銀縁眼鏡を片手で掛け直しているとこだった。
次回、この男性の正体とは?
今年最後の投稿となります。次回は年明けのできるだけ早く投稿致しますので来年もよろしくお願い致します。そしてこの1年間、この小説を読んで頂きまして本当にありがとうございます。来年からも頑張りますので応援のほうをよろしくお願いします。
それでは最後に読者の皆様、よいお年をお迎え下さい。