第125話 VS盗賊団 ”自覚”
〜視点:ナーグ〜
俺とティナはメイスを持つ男と弓を使う男を相手にすることになった。
「ティナ!俺は弓の奴を殺るからメイスの男は任せていいか!」
「了解やでナーグ!ウチに任せときいや‼︎」
俺はティナにメイスの男を任せて矢を番えている奴の方へ駆け出す。
「そうは行かねえぞガキが‼︎」
しかし、メイスの男が俺の前に立ち塞がりながらメイスを勢いよく振り下ろしてきた。
それを俺は魔剣で防いだうえで後ろに下がって距離をとる。
「これでも喰らいやがれ!」
その間に矢を番えていた奴が矢を放ち、一本の矢が俺に向かって飛んでくる。
「ハァアアアッ‼︎」
俺は飛んでくる矢を魔剣で切り裂く。
「オラッ‼︎」
その直後、メイスを持つ男が俺に向けてメイスを振り下ろしてくる。
今の俺は魔剣で防ごうにも間に合わず、『魔力武装』も発動前にやられるといったかなりヤバい状況だ。
「ハァアアアアッ‼︎」
<ガシャーン>
まあ、それは俺が一人だけの場合であり。
ティナが敵からの攻撃を大きなハンマーで防いでくれた。
「コラ!クソチビ‼︎ 邪魔すんじゃねえ‼︎」
攻撃を受け止められた男はティナを罵倒しながらメイスに力を込めて押し潰そうとする。
「なんや?そっちも二人やからウチらも二人で戦って何がいかんとや?」
しかし、ティナは罵倒されようとも気にした様子はなく、余裕で受け止め続ける。
「それともう一つだけ言わせてもらうでぇ」
メイスを持つ男にそう言った次の瞬間。
「ウチは同い年のドワーフの女子の中では身長は高いほうじゃ阿保ーーー‼︎」
前言撤回。ティナは身長のことを凄く気にしていたらしく、チビと言われたことにキレて力一杯にハンマーをフルスイングしてメイスを持っていた男ごと、遠くに吹っ飛ばす。
「ほらナーグ!あいつはウチに任せてあの弓の奴を殺ってきいや!」
「サンキュー!ティナ‼︎」
俺は機嫌を損ねているティナに礼を言ってから次の矢を番える男の元に向かって駆け出す。
「来るんじゃねぇぞガキが!」
矢を番え終えた男は俺に向けて矢を放つ。
「『魔力武装』‼︎」
俺は魔剣に秘められていた能力の一つ、『魔力武装』を使って全身を魔力の膜を纏い飛んできた矢を防ぐ。
「‼︎ な、なんで効かねえんだよ‼︎」
矢が俺に刺さらなかったことに動揺を隠しきれなかった男は動揺し、手の動きを止める。
「今までの自分の行いを悔いながら死ね!『魔力斬撃』‼︎」
俺はその隙に魔力で形成した斬撃を男に向けて飛ばす。
「ギィヤーーーーー‼︎」
<ザクッ>
<バタンッ>
男は目の前から勢いよく迫ってくる斬撃に悲鳴を上げるも、成す術なく斬撃に胴体を切り裂かれ、その場に倒れた。
「ハァ…ハァ…。やっと終わった…」
時間にしては一分も経っていない短い時間。しかし、人を自分の手で殺めたことを考えると罪悪感と凄い吐き気に襲われる。
「大丈夫かいなナーグ?」
その声を聞いた瞬間、俺を襲っていた吐き気は不思議と治り、俺は声が聞こえた後ろの方を振り向く。
「お疲れさん。よう頑張ったやん」
そこにはティナがおり、ティナの後ろにはメイスを持っていた男が頭から血を流して倒れており、ティナが持っているハンマーにはその男のものと思われる赤黒くべっとりとした血が付着していた。
「ああ、ティナもお疲れ……」
俺はなんとか声を出して、ティナに返事を返す。
「そんな暗い顔せんどきいや。ナーグがそう思いつめることはなかよ」
ティナは俺と同じく人を殺している。
それなのにティナは自分の感情を押し殺して俺のことを心配してくれたのだ。
そのお陰か、俺を襲っていた罪悪感が少し楽になったきがする。
「ありがとうティナ。とても助かった」
俺はティナに礼を言う。
「どういたしまして<ニコ>」
<ドクンッ>
彼女が俺に向けてくれたその笑顔に俺の心臓が大きく鼓動した。
俺はティナと初めて会った時から何時しか彼女の事を目で追おり、彼女を見ているだけで何故か幸せに思えた。
最初はこの感情がなんなのかは分からなかったが、今ならハッキリと分かる。
俺は元気で明るく、真面目で誰とでも仲良く接する事ができる彼女を好きになっていたのだと言うことを。




