第123話 VS盗賊団 ”遭遇”
それは俺達が囚われた人達を救出した時まで時間を遡る。
〜視点:フール〜
私を含めたナーグ、ジャン、ティナの四人は盗賊達が退路として設けたもう一方の洞窟の出入り口付近の茂みで待機していました。
「レイジ達はうまくやれてんのかな」
私の右隣りで待機していたナーグがそう呟きました。
「心配せんでもいいんちゃう?レイジの実力はウチらの中でダントツやし、メルもシルフィアもケトラもリュンクもそれ相応の実力はあるけんそこらの盗賊には負けんやろ」
「それもそうだな」
私が言おうとしたことをティナが先に言ったので私は何も言わずに洞窟を監視を続けます。
「僕はケトラが少し心配かな」
今度は私の左隣りジャンが最愛の彼女であるケトラを心配そうにしていました。
「なんやジャン? ケトラは四元素魔法のうち二つの属性魔法を使えるけん心配せんでもいいんちゃうか?」
「もちろんケトラの実力は十分知ってるし、リュンクもいるからそこは心配してはないんだ。ただ」
「ただ?」
ジャンは話を続けます。
「ケトラは優しいからいくらその人が罪人だからと言って、その人を殺すことができるか不安なんだ」
「そんなに心配ならお前もレイジ達についていけばよかったんじゃないか?」
ナーグの言葉にジャンは首を横に振ります。
「最初は僕もそうしようと思っていたけど、ケトラ本人から別行動しようって言われたんだ」
「それまたどうしてですか?」
それは私も初耳だったので理由を尋ねました。
「『あなたが側にいたら私は何もできずに頼りっきりになると思うから』。そうケトラが言ったんだ」
それでジャンはケトラの意志を尊重し、彼女をリュンクに任せて別行動を承諾したとのこと。
「そんなんやったら尚更、ジャンはケトラのことを信じらんばあかんやろ」
「そうそう、彼氏なら彼女のことを信じてやれよ」
「ハハハ、それもそうだね。ありがとう二人とも」
先程まで心配そうにしていたジャンはティナとナーグの言葉に彼女を信じようと決めた表情をしていました。
私達はそれからは無言のまま洞窟の出入り口を監視しました。
その数分後、礼治様のスキル『スキル共有:1』で『魔力・魔耐強化』から『気配察知』に切り替えており、洞窟の方から盗賊であろう反応が五つ此方に近づいて来ました。
「みなさん気を引き締めて下さい。もうじき来ます」
私の声に三人は武器を構えます。
「…異常なしだな」
暫くして洞窟の中から一人の盗賊らしき男性が辺りを警戒しつつ出てきました。
「旦那達、大丈夫だぜ」
男が異常なしと報せると洞窟の中から更に四人の男達が出てきました。
その男達四人のうち、剣を持った戦士風の男、メイスを持った大柄な男、ローブを羽織った杖を持った男、弓を持った軽装な男と、それぞれが街から逃げ出した冒険者だとわかりました。
「よし、下っ端共には見つからずに出てこれたな」
戦士風の男がそう呟きました。
「まさか自分達のお頭から捨てられるとは思ってないだろうしな」
「今頃、馬鹿みたいに酒を飲んだりしている頃だろうな」
「ほんと馬鹿共で助かったぜ」
その後に続き大柄の男、ローブの男、軽装の男がそう言っており、会話から察するに盗賊のリーダーと元冒険者達は他の盗賊達を見捨てることを前から考えていたようで、今はそれを決行していたようです。
「彼奴ら運悪いよな」
「今までの悪い行いでバチが当たったんや。ホンマ、いい気味やわ」
「僕達にとっては逃げられずに済んで良かったけどね」
そんな夜逃げが未遂に終わるとは思ってもいない男達に私達はほんの少しだけ同情しました。
「それじゃあ皆さん。最初は私が一人を仕留めますのでそれの後に続いてお願いします」
<<<コク、コク>>>
私の指示に頷いて答える三人。
私はそれを確認してから男達の方を向き、右手を前に突き出して構えます。
「『風斬撃』」
詠唱と共に風の斬撃を男達に向けて放ちます。
「それじゃあ旦那T<スパッ>………」
<バタン>
風の斬撃は盗賊のリーダーの首を撥ね飛ばし、地面に胴体が倒れました。
それと同時に皆さんが茂みから飛び出し、私もそれに続きます。
(ここからが私達の正念場です)