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タロット占い師は神様に殺され異世界転生  作者: マロンさん
第3章
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第121話 VS盗賊団 ”覚悟”

敵の根城に潜り込んで数分、三人までなら並んで歩けそうな洞窟内部を『風の剣』を両手で持って構える俺を先頭にリュンク、その後ろをメルとケトラが二人で横に並んで続き、最後尾にはシルフィアがいる。


隊列の理由は俺が『気配察知』を使えるために奇襲を掛けられることはまずないこと、リュンクには事前に根城の偵察をしてもらっており俺達の道案内役として俺の後ろに待機してもらい、最後尾から攻められた場合はシルフィアに対応してもらう。

そういった利点があるためにこの隊列で進んでいる。


俺達は辺りを警戒しながら進んでいると、先の通路が三つに別れていた。


「リュンク。牢屋のある部屋に繋がる道はどれだ?」


今回の俺達の作戦は主に二つ。

一つは盗賊達に囚われた人達の救出。

二つ目は盗賊団の殲滅。


この場合、囚われた人達を人質にされたらこちらが不利になるので先に救出にあたる。


「牢屋なら真ん中の道を通れば直ぐに着く。ただ、見張りもいると思うから慎重にな」


リュンクの意見を考慮した上で俺達は真ん中の道を進む。

牢屋のある部屋に向かう途中、罠が幾つか設置されていたがリュンクが手早く解除してくれるので問題なく進む。


そうして俺達は牢屋のある空間の手前にたどり着く。


「やはり見張りがいますね」


牢屋の中にはリュンクの報告通り、商人風の格好をした男性が二人と、どうやら商品として奴隷の首輪を嵌めている人間族の女性二人とエルフ族の女性、計五人が囚われていた。更に牢屋の前では見張りとして盗賊が三人いた。

一人は長剣、一人は短剣、最後の一人は弓を使うことが見てとれる。


「今回は俺とケトラで相手に気付かれる前に魔法で一気にカタをつけましょう」


俺は小声で提案するとケトラは深く頷くことを確認する。


「シルフィアとリュンクはもしもの時に備えて辺りを警戒、メルは俺達の魔法から逃れた奴がいた時のために矢を番えておいてくれ」


「了解です。レイジ様」


「了解」


「撃ち漏らしは見逃しませんので頑張ってくださいね、お二人とも」


他の三人にも指示を出し、三人が頷き了承し、それぞれの武器を構えたところで自分はケトラに顔を向ける。


「じゃあケトラ。自分は前二人を倒すから、ケトラは奥にいる弓使いの奴を頼む」


「分かったわ」


それから俺とケトラもそれぞれの武器を構える。


「それじゃあ同時にいきますよ」


「………」


「…どうかしましたか?」


返事がないことに不思議に思った俺はケトラの方を向くと杖を持つケトラの手が震えており、顔を覗くとケトラは何かを躊躇う表情をしていた。


「大丈夫ですかケトラさん?」


初めて見る彼女の表情に同様した俺はついついさん付けで呼んでしまった。


「あ、ごめんレイジ」


そんな俺の気持ちを察したのかケトラは謝ると杖を構え直すも、やはり手が震えていた。


「…なぁレイジ。敵を殺るのは俺に任せてくれないか?」


「リュンク……」


ケトラの様子に気付いたリュンクが代わりに殺ると申し出て、それに対してケトラは何か言いたそうだったけど声には出さなかった。


「姉ちゃんがこのままやったとしても仕留められるかどうか分からない。だから俺が代わりに殺る」


「分かった。じゃあ作戦を変更して俺が奥にいる奴を受け持つから、シルフィアとリュンクが前の二人を任せる」


「「了解(です)」」


リュンクの決意は固いようで、作戦を変更しケトラには待機メルにはそのまま警戒を任せる。


「じゃあ、俺が魔法を放つと同時に二人も行動してくれ。できるだけ音を立てずに頼む」


それから俺は弓を持つ盗賊に狙いを定める。


「いくよ。…『風球(ウインドボール)』」


俺は『風の剣』の剣先から風の球を放つ。

それと同時にシルフィアとリュンクが牢屋のある空間に突入する。


「なんだおm <ドスン> グハッ!」


最初に気付いた弓を持つ盗賊は言葉を言い切る前に風の球が直撃、そのまま後方に吹っ飛び意識を失う。


「一体どうした!」


「敵か⁉︎」


味方がやられたことに状況を理解した残り二人は敵襲を報せようと声を上げようとした。


「スキあり!」


「ハァアアアッ!」


しかし、助けを求める前に長剣を持つ奴をシルフィアが横降りにしたハンマーでぶっ飛ばし、短剣を持つ奴はリュンクが素早い動作で喉元を切り裂いた。


ここまで掛かった時間は十数秒、盗賊達は声を出していたために他の仲間に訊かれていないか心配ではあったものの『気配察知』には此方に来る奴の反応は無かった為にホッとする。


「足音が聴こえてこないので大丈夫だと思います」


聴覚が鋭いシルフィアもそう言っているので間違えないだろう。

そのあとはリュンクが見張りをしていた盗賊の亡骸から牢屋の鍵を見つけ、牢屋に囚われていた人達を救出する。


「私は商人をしておりますゴードンと申します。助けて頂き本当にありがとうございます」


囚われていた人達の中の一人で商人のゴードンさんが代表で御礼の言葉を述べる。

その後は何かされなかったかを尋ねるも、特にこれと言ったことはされておらず、強いと言えば金目のものを取られたぐらいらしい。


「それじゃあシルフィアにケトラ。手筈通りにこの人達を安全な場所まで連れて行ってくれ」


「了解です。レイジ様」


シルフィアは返事をすると囚われた人達を連れて今、俺達が通って来た道を戻ろうとした。


「ちょっと待って!」


しかし、シルフィアが行こうとした矢先、ケトラが静止させた。


「どうしたんだケトラ?」


俺は彼女に尋ねる。


「お願いレイジ。私も盗賊退治に行かせて」


ケトラの突然の申し出に俺は理解できなかった。

本来の作戦ではシルフィアとケトラが囚われた人達と供に洞窟から脱出し、俺とリュンクとメルの三人で盗賊達を退治する作戦であり、この作戦はメンバー全員で話して決めた事であり、その時はケトラからも了承を得ていた。

だからこそ、彼女の突然の申し出に俺は戸惑いを隠せない。


「我儘を言ってるのは分かっているわ。でも、私は此処で逃げたら一生リュンクやジャンに迷惑を掛けてしまうんだと思う」


この昇級試験を受けるにあたり、ケトラも人を殺す覚悟を決めていたにも関わらず、直前になって人を殺すことを躊躇っていた。

それが普通であり、人は無闇に殺すものではない。しかし、この世界で冒険者などの危険と隣り合わせな職業でそんな甘い考えは命の危険を招く行為である。


「だからお願いレイジ!私も連れてって!」


敵地である為に声を抑えているが、頭を下げて同行を請う姿勢とその言葉にはケトラ自身の意思が刻み込まれていた。


「俺からも頼むよレイジ」


それに続いて今度はリュンクも頭を下げてきた。


「分かりました。ケトラは俺達について来てくれ。そしてメルはケトラの代わりにシルフィアと一緒にこの人達を連れて洞窟から脱出してくれ」


二人の願いを聞き入れ、作戦の修正して指示を出す。


「ありがとうレイジ」


ケトラは再び頭を下げて今度は御礼の言葉を述べる。


「頭を上げてください。時間を少しとったので直ぐに動きますよ」


予定より時間を余計に使った俺達はシルフィア達の脱出班と別れ先を急ぐのだった。


(これからが本番だな)


心の中で覚悟決めて。

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