第11話 夕暮れの日差し亭
ボグレスさんから教えて貰った宿屋に向かう途中、雑貨屋で『アイテムボックス(極)』を隠す為にフールと同じ見た目のウエストポーチを大銅貨2枚で買った。
因みにカバンはフールが選んだ物でそれを買った時にフールは「これで礼治様とお揃いですね」っと、嬉しそうに言っていた。
その次は新品の服を扱っている服屋で自分用の服を上下3枚とパジャマを1セット下着を3枚を大銅貨4枚で買った。
服もフールが選んでくれて自分は着せ替え人形になっていた。
フールは下着までをも選ぼうとしたので銀貨1枚を渡しフール自身が着る服を選ばさせなんとか回避した。しかし、それにより時間が思っている以上に掛かってしまい全ての買い物が終わるまでに昼の3時から夕方6時位まで三時間も掛かってしまった。
その時なんで女性は買い物にこんなに時間を掛けるのかを理解することはできなかったがその後フールが笑顔でとても満足していたので良しとした俺だった。
買った物をポーチに入れる振りをして『アイテムボックス(極)』に収納して店を出た。
こうして時間を掛けたが無事に目的地である『夕暮れの日差し亭』に到着した。
見た感じでは三階建てで一階が受付と食堂で、二階からが宿泊する部屋になるらしい。
宿屋を少し眺めた後その宿屋の扉を開けた。
「いらっしゃいませ。ようこそ『夕暮れの日差し亭』へ。お食事ですか?それともお泊まりですか?」
元気よく挨拶をしてきたのは見た感じ十代後半で俺より少し年上の女性だった。
「両方でお願いします」
「それでしたら説明をさせて頂きますね。宿泊はお部屋一室につき一泊大銅貨1枚、朝と夕方の食事をつけるとプラス銅貨5枚、身体を綺麗にするために桶に入れたお湯とタオルを部屋まで運ぶのが銅貨1枚になりますがどうされますか?」
受付の女性は笑顔で宿屋の利用料金を教えてくれた。
「それじゃあ、ふt「一部屋で二人分の食事付きで桶を一つとタオル二枚を部屋まで運ぶのをお願いします」…じゃあ後は取り敢えず三泊でお願いします」
部屋を二部屋を用意してもらおうとしたがフールが俺の言葉より大きな声で強引に一つ部屋にしてきた。
俺は仕方ないと思いながらもフールの言葉に補足をつけた。
「それでは、お部屋に三泊で食事付きで桶を運ぶのありで計630ナグルで、大銅貨6枚銅貨3枚お支払いください。後この名簿にお客様のお名前をお願いします」
紙とペンを使い計算をした後名簿とペンを渡された。
自分が銀貨1枚を支払いお釣りの大銅貨3枚と銅貨7枚を貰う間にフールが代わりに名前を書いてくれたので名簿も一緒に返した。
「レイジさんとフールさんですね。それでは自己紹介をさせていただきます。私はこの宿屋『夕暮れの日差し亭』で受付と雑用をしているラルファと申します。料理の方はウチの父親がその日の一番新鮮な食材を仕入れてそれを母親が料理して提供させていただきます。母親の料理はとても美味しいので楽しみにしていてください。お食事の時間は朝が6時の鐘の音から9時の鐘の音までで、夕方は夜の6時の鐘の音から10時の鐘の音までとなっております。後は桶を運んできて欲しい時間帯を教えてください」
「わかりました。それじゃあ食事は今からで桶を運んで貰うのは食事を食べ終わった後で部屋に行くときにでいいですか?」
「はい、わかりました。それでは食事が終わったさいにもう一度私に声をお掛けください。その時にお部屋の鍵をお渡しいたしますね」
「ありがとうございます。ラルファさんこれからよろしくお願いします」
俺は御礼を言い頭を下げ、フールも後に続き頭を下げた。
「レイジさん達は他の冒険者の方と比べると礼儀が正しいですね」
ラルファさんからそう言われたが、俺達はまだ冒険者ではないことを伝えるとラルファさんは驚いていき、すぐに営業スマイルに戻ると、これからの自分達の発展を願うためにラルファさんは母親に料理を少し豪華にしてもらうよう頼みに食堂がある方へ向かって行った。
俺達はその後について行く。
食堂に着くとラルファさんとすれ違い、御礼を言ってラルファさんの母親である女将さんの方に歩いて行った。
ラルファさんの母親の名前はミネットさんというらしく30代の女性で何処と無くラルファさんと雰囲気が似ており失礼ではあるが本当に血の繋がった家族なんだなあとそう思った。
それからはミネットさん特製『狼と野菜の味噌炒め』を白パンと鶏ガラスープみたいな物とが一緒に出された。
驚いたことにこの世界では狼の肉も食べられるらしくミネットさんの料理の腕も有るんだろうが狼の肉も以外に美味しかった。
食後はミネットさんに御礼を言い食堂を出た。
それからラルファさんに声をかけて俺達が泊まる部屋の鍵『305号』と書かれた板に紐と鍵が付いたものを渡され部屋に向かった。
『305号』と書いてある部屋に入ると部屋は以外に広く何も不満がない部屋なのだが俺はただ一つだけ不満があった。
それはダブルサイズのベットしかなかったことだ。
別にフールと同じベットで寝るのが嫌なわけじゃないんだが、しばらくは慣れるまではゆっくり眠れそうになかった。
当の本人であるフールはと言うと満面の笑みでこちらを見ていた。
それから暫く部屋でくつろいでいるとラルファさんがお湯の入った桶を運んできてくれた。
御礼を言った後ラルファさんは「使い終わった桶は廊下に出していてください。後で取りに来ますので」と言い残し去って行った。
それからはお互いの背中を向けて自分の身体を拭いていたが時折フールからの視線を痛いほど感じた。
身体を拭いた後、昼頃に買ったパジャマに着替え終わり俺は今にでもベットに潜り込もうとしているフールに声をかけた。
「なあフール、一旦他の大アルカナ達の所に戻らなくていいのか?」
俺の質問に動きを停止させたフールであった。