第10話 奴隷商人
ゴロツキ達をやっつけた後、門で仮身分証の発行を無料でしてもらい人間族の国が誇る貿易の街『アルバス』に一歩脚を踏み入れた。
そこは至るところに商人の経営する店や冒険者達が泊まる宿やがあったりととても賑わっていた。
その光景を見ていると先ほどの商人が声をかけてきた。
「これはレイジ様、先ほど本当にありがとうございました」
「あ、先ほど商人さん。怪我とかはしませんでしたか?」
俺は念のためにそう尋ねる。
「これはお気遣いありがとうございます。レイジ様に助けて頂いたおかげで私共々無事で済みました」
それに対して商人さんは深々と頭を下げて御礼の言葉を述べてくれた。
「そういえば私としたことがレイジ様に自己紹介をしておりませんでしたな。私はこの街一番と言って過言ではない正規の奴隷商『ボグレス』を取り仕切らせて貰っております。本店取締役ボグレスと申します」
俺の目の前にいる優しそうな60代の男性がまさかの奴隷商のしかも取締役の人とは思っておらず少し驚いてしまった。
それを見てボグレスさんは話を続けてきた。
「もしや、レイジ様は奴隷商人とは初めてお会いに為さったのですか?」
「ええ、まあそんな感じです。俺は凄い田舎から冒険者に憧れて村から出てきたのでそう言ったものには全然知識がありません」
俺は嘘を混ぜながら返答した。
「そうですか。それは素晴らしいことですねえ。別に無知を恥ずかしがることはありません。まだレイジ様はお若いのでこれから知識を蓄えれば良いのですよ」
俺の返答にボグレスさんはそう応えてくれた。
「それに私共は正規の奴隷商人は別に人攫いをしているのではなく。ただ借金を払えなくなって奴隷になった者や、犯罪を犯して奴隷になった者、また戦争で負けた国の者が奴隷になったりと様々な人生を歩んだ者達が一番実力を発揮して、御主人様のために生きて新しい人生を送ってもらう為に私共はおりまして、決して奴隷を道具としては扱わず、人として接していくのが私共の仕事なのです」
ボグレスさんは途中から熱弁を始めたのだが、その言葉一つ一つに強い想いが込められており。俺はもし奴隷を買うことになったとしたらボグレスさんのところでお世話になろうとそう思った。
「ボグレスさんありがとうございます。ボグレスさんの熱意がとても伝わりました。もし俺が冒険者になってお金が貯り、奴隷が必要になった時はボグレスさんのところでお世話になろうと思います」
それを聞いたボグレスさんはとてつもなく嬉しかったのか、勢いよく手を掴んできて更に握手をしだした。
「ありがとうございますレイジ様。私の、いえ正規の奴隷商人の思いを理解して頂き本当にありがとうございます。もしレイジ様が私の店で奴隷をお求めになられる時は私自らがご案内させて頂きます」
「ありがとうございますボグレスさん。その時はよろしくお願いします。そうだ、後この街で評判がよくて安い宿屋を知りませんか?」
ボグレスさんに宿屋のことを聞いた。するとボグレスさんは良い宿屋を知っていたのか大通りを指差した。
「それでしたら、この大通りを真っ直ぐ進み中央広場に出ましたら左に進み、大きな道に入って右沿いにある三軒目の『夕暮れの日差し亭』がオススメですよ」
「ありがとうございますボグレスさん」
「いえいえ、お安い御用ですよレイジ様。では私はこれで失礼します」
そう言い残したボグレスさんは馬車と馬車を引く馬を連れてその場を離れていった。
「じゃあフール。さっそく宿屋に向k……」
俺はフールの方に振り向き喋っていたがフールを見た瞬間言葉を止めた。
何故ならフールが昼間と同様に頰を膨らまし今度はジト目で睨んでいたのである。
「礼治様は私だけでは満足できず奴隷に手を出そうとしてたんですね」
フールの言葉にフールは嫉妬深い性格だった事を思い出す。
「いや別にそう言う訳じゃなくて、ただ普通にチームを組む時に奴隷の方が分け前で争わなくて済むし、仲間がいる分戦闘が有利に進むから買った方がいいかなと思っただけだから」
「ふんだ」
また機嫌が悪くしたフールの頭を撫でてなんとか機嫌を直してくれたフールと一緒にボグレスさんのオススメの宿屋に向かった。




