第107話 シルフィアとデート
フールとの初デートを終えた翌朝の9時前、今日はシルフィアとの初デートであり、今は中央広場でシルフィアが来るのを待っているところだ。
因みに今日は『タロット』の営業日でもあるが、昨日の内に本日は休業することを伝えているので大丈夫だろう。
「れ、れ、レイジ様!」
暫く待っていると背後から名前を呼ばれ、振り返るとそこにはシルフィアがいた。
シルフィアの今の格好は白のシャツに膝あたりまである黒のスカートに黒革のサンダルを履いており、今までズボンを履いたとこしか見ていなかったので新鮮であり、またあまりの可愛さに見惚れてしまった。
「遅くなってしまい申し訳御座いません!」
俺が見惚れているとシルフィアは腰を90度に曲げて謝罪してきた。
「…!大丈夫だよシルフィア。全然待ってないから」
見惚れていた俺は我に帰り、慌ててシルフィアに頭を上げさせる。
「じゃあ時間も惜しいし、そろそろ行こうか?」
俺はシルフィアに左手を差し出す。
「はい…//////」
シルフィアは恥ずかしそうに顔を赤くさせるも右手を差し出し手を繋いでくれた。
そうして俺とシルフィアのデートが始まった。
〜〜〜
「シルフィアってスカートも履くんだね。とても似合ってるよ」
昨日のフールとのデートと同様に最初は雑貨やアクセサリーなどの店が並ぶ北東の道を二人でたわいのない話しをしながら歩いていた。
「ありがとうございますレイジ様。私もスカートを履くのは初めてで、正直に言って恥ずかしいです」
今回のシルフィアの服装はフールのコーディネートであり、シルフィアは今回初めて履いたスカートに少し戸惑っていた。
「でも、凄く似合っているから毎日じゃなくてもいいからスカートを履いてほしいな」
「レ、レイジ様がお望みならこれからもスカートを履かせてもらいます/////」
褒められたことが嬉しかったようで、シルフィアは顔を赤くさせながら尻尾を左右に振って喜びを表していた。
「あ、レイジ様。フール様と昨日訪れたお店はこちらですか?」
途中シルフィアがある店の前に立ち止まり尋ねてきた。
そのお店はドワーフの女商人さんが夫と切り盛りしているシルバーアクセサリーの店だった。
「そうだよシルフィア。寄ってみる?」
「はい‼︎」
俺が尋ね返すとシルフィアは即答した。
実は昨日、宿屋に戻ってからは御留守番兼ジャンヌとの字の勉強をしていたシルフィアにフールがその日のことを話しており、その中でフールがあの店で買った銀のネックレスを見せた時にシルフィアはとても羨ましそうにしていたのだ。
俺とシルフィアは早速店の中に入った。
「いらっしゃい。おや? 昨日の色男じゃないか」
店に入ってすぐ例のドワーフの女商人さんが出迎えてくれた。
「おやおや〜? 今日は獣人族の少女じゃないか? 兄さんは相変わらず隅に置けないね〜」
商人さんはシルフィアと俺を交互に見ながら煽ってくる。
「昨日ぶりです。今日も商人さんが惚れ込んだ旦那さんが作ったアクセサリーを買いにきました」
それに対して俺も商人さんを煽る。
「ははははは、ウチの旦那のシルバーアクセサリーは街一番、いや、世界一番だからね!好きに見ていきな!」
旦那さんを褒められたことが相当嬉しかったらしく上機嫌に笑いだす。
「レイジ様。商品を見てきてもよろしいですか?」
シルフィアが尋ねてきたので俺は許可を出してからシルフィアは商品が並べられている棚に向かい真剣に選び始め、俺は昨日と同様に旦那さんとの惚気話を女商人さんからこれでもかと聴かされた。
因みにドワーフの女商人さんの名前はダリアさん、旦那さんはドロイさんと判明した。
「あのっ、コレはお幾らですか?」
暫くしてシルフィアはある商品を此方に持ってきた。
その商品は昨日フールが買った銀のネックレスと同じ様な黒い模様が彫られた銀の腕輪だった。
「それは二つで600ナグルだが、500ナグルにまけてやるよ」
旦那さんを褒められたことで機嫌の良いダリアさんは気前よく値切ってくれた。
「あ、ありがとうございます‼︎」
シルフィアは丁寧にお辞儀してからお金を払い商品を受け取る。
「レイジ様、右手を出してくださいませ」
シルフィアに言われた通りに俺は右手を差し出して手首に銀の腕輪を嵌めてもらい、逆に俺はシルフィアから受け取った腕輪をシルフィアの左手首に嵌めた。
「これで私もレイジ様とお揃いのものが出来ました///////」
シルフィアは手首に嵌めた腕輪を見ながら頬を紅く染め、獣耳をピクピク動かし、尻尾をぶんぶん振り回しながら喜んでいた。
「ありがとうシルフィア。じゃあ行こうか」
「はい、レイジ様!」
「じゃあお邪魔しましたダリアさん」
「またな、初々しいお二人さん」
ダリアさんに挨拶してから俺俺は店を後にした。
それから暫くブラブラしてから昼飯を食べる為に前にフールと初仕事の時に言った北門近くの店に足を運んだ。
昼時とあって店に訪れた時はお客さんが多かったものの席が空いているところがあったので待たずに座ることができた。
「注文は何にするシルフィア?」
俺はシルフィアにメニュー表を見せて尋ねる。
シルフィアはジャンヌとの字の勉強の成果もあり今ではだいたいの字は読めれる様になっていた。
「えーとですね〜…う〜〜ん、魔牛のステーキか狼の野菜炒めのどっちにしようか迷います」
シルフィアは二つで迷っていたので両方頼み、二人で分け合って食べることにした。
「レイジ様とこうやって二人きりで買い物したり食事を食べたりするだけで私は幸せです」
注文を頼んだあと、シルフィアはそう呟いた。
確かにシルフィアと二人きりで外に出たのは初めてだった。
「俺もシルフィアと二人きりでデートができて幸せだよ」
<プシューーーーー>
「あああ、ありがとうございますレイジ様!」
笑顔でそう言うとシルフィアは顔を真っ赤にして頭から湯気を噴射してから、慌てて頭を下げた。
その時にシルフィアの口元はこれでもかと言うくらいに緩みきった顔がとても可愛らしかった。
それからは注文していた料理がきたので二人で食べ比べしながら完食した後、お代を払って満足して店を後にした。
それからは色々な店を見て回ったり、喫茶店で一休みしたりして楽しい時間を過ごした。
「今日は本当にありがとう御座いますレイジ様」
街が夕陽の光で照らされた頃、手を繋ぎながら宿屋に戻っているとシルフィアが御礼を言ってきた。
「御礼を言うのは俺もだよシルフィア。今日は楽しかった、ありがとうシルフィア」
俺もシルフィアに御礼を言う。
「私は毎日、レイジ様の家族になれたことを心から感謝しています」
「それもお互い様だよシルフィア。家族になってくれてありがとうシルフィア」
シルフィアの頭を空いている手で撫でながら御礼を言う。
「ワフゥ〜〜〜〜、やっぱりレイジ様に頭を撫でてもらうのは気持ちが良いです〜〜//////////」
シルフィアは目を細めてその気持ち良さに酔いしれる。
その時、シルフィアの唇が夕陽に照らされて光沢ができ、その柔らかい唇に我慢できなくなった俺はシルフィアの唇にキスをした。
「‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
突然襲った唇の感触にシルフィアは目を勢いよく開き、今の状況を把握する。
それからすぐ、俺はシルフィアから唇を離した。
「…不意打ちは卑怯ですよレイジ様/////」
シルフィアはモジモジと恥ずかしそうにしながら抗議してきた。
「ごめんねシルフィア。シルフィアが可愛かったからついつい」
「レイジ様は私とフール様に襲われる側なのに偶に襲う側に変わるのは卑怯です」
シルフィアは珍しく頬を膨らませ、それがまた新鮮であり、また可愛らしかった。
(ってか、シルフィア自身が襲っているっと言うことは一応自覚はしてたんだ)
俺はそう思いながらもシルフィアの機嫌をとってから宿屋に戻っていった。
その日の夜、お湯で濡らして搾ったタオルで身体を拭き終えた瞬間、待ってましたとばかりにシルフィアがベットに押し倒してきてそのまま襲われ、昇級試験前夜を過ごしたのであった。