第106話 フールとデート
ナーグと無事に和解した翌日の朝10時前、俺は一人で中央広場に向かっていた。
暫くして中央広場に到着して辺りを見渡すと周りの人たちから注目を集めている一人の人物がいた。
俺はその人物のもとに向かって足を進め、ある程度近づいたところで声をかける。
「お待たせ。もしかして待たせちゃった?」
「いえ、私も先程此処に着いたばかりなので」
声をかけた相手は満面の笑みを向けて答えてくれた。
「そっか。…その服とても似合ってるよフール//////」
フールの格好を顔を赤くさせながら褒めた。
俺の目の前にいる家族であり、心から愛しているフールの今の格好は身体のラインを強調させる白のワンピースと言った、シンプルであるもののフールの金髪とボディーラインを強調させる服装に非の打ち所がない、いつもフールを見ている俺でも理性が飛んでしまいそうなくらいの美しさだった。
「あ、ありがとうございます礼治様///////」
「いや、…どういたしまして//////」
互いに視線を逸らして嬉しいようで恥ずかしい、さながら初デートする人なら誰もが抱くであろう初々しい気持ちに早くも耐えられるか不安である。
「じゃあ、行こうか?//////」
恥ずかしい気持ちを押し殺して、赤く染まった顔をフールに向け、左手を差し出す。
「……はい//////」
フールも赤く染まった顔を此方に向けてから右手を差し出して手を取った。
それから俺とフールは互いに見つめ合ってから歩みを進めた。
〜〜〜
もうお判りだろうが今日は前から約束していたフールとの初デートである。
実は昨日ギルドから宿屋に戻ってから昇級試験までの余った時間をどうするか話し合ったところ、この二日間をデートに使おうと決まったのだ。
そして翌日のデート1日目の相手はフールであり、フールはわざわざ初デートの雰囲気を出すために昨日は『夕暮れの日差し亭』とは別の宿屋に一人で泊まる徹底ぶりであり、正真正銘、今日フールと会ったのは中央広場でが初めてだった。
そんな俺達は中央広場から北東に伸びる道を恋人つなぎで仲良く並んで歩いている。
「ここら辺は小物やアクセサリー系が売られてるな」
「そうですね。どれも綺麗なモノから可愛いらしいモノまで目移りして困っちゃいます」
初めて通る北東の道は朝から大通りに比べれば少し劣るも多くの人で賑わっており、またどの店もなかなかの良い品が並べられていた。
「あの店を見に行ってもよろしいですか礼治様?」
「うん、良いよフール」
暫く二人で歩いているとフールが気になる店を見つけた様でその店に寄る。
その店はアクセサリーショップだった。
「少し商品を見せてもらってもよろしいですか?」
「おや客かい?見るのは勿論良いけど、買ってくれたらもっと良いんだけど?」
店内に入りフールは店主であろう150センチくらいの背が低く尖って少し垂れ下がった耳が特徴的なドワーフ族の女商人さんがフールの声に応じてくれた。
ドワーフ族もエルフ族と同じく尖った耳が特徴であるが、エルフ族は耳が上向きにドワーフ族は下向きに尖るのが特徴であり、ドワーフ族は鍛冶仕事が得意な種族である。
「へ〜、どれも繊細であり綺麗なモノばかりですね」
並べられていたものは銀製のシルバーアクセサリーだった。
「おや?これまた良い男だね〜兄さんは嬢ちゃんのコレかい?」
商品を物珍しく見ていた自分に気づいたドワーフの女性は小指を立てて尋ねてきた。
「はい。俺の大切な彼女です」
俺は笑顔で答える。
「あははは、そうかいそうかい。兄さんも隅に置けないね〜」
俺の答えにドワーフの女商人さんは高らかに笑いながら納得するように頷いた。
この店はドワーフの女商人さんと人間族の男性で営んでいるらしく。昔、この店に立ち寄ったドワーフの女性がシルバーアクセサリーを作る人間族の男性の技術と容姿に惚れて猛アタックした結果今に至るらしく、暫くの間当時の惚気話を聴かされた。
「すみません、コレはいくらですか?」
暫くして商品を手に取って、色々見ていたフールはある商品を持ってドワーフの女性に尋ねた。
フールが手に持っていたのは黒の模様が彫られた十字架をぶら下げたネックレスが二つあった。
「それは一つ250ナグルだから二つの500ナグルだよ」
「ではコレを下さい」
値段を聞いたフールは即決で買うと決めマジックバックから銀貨五枚取り出して払った。
「毎度あり」
ドワーフの女性に笑顔で見送られながら店を後にしてからも暫くは他の店を覗きながら途中でフールが買ったネックレスの一つをプレゼントされたので礼を言ってからネックレスをお互いにつけあった時にはフールが『また一つお揃い増えましたね』っと可愛らしく言ったので理性を抑えるのが大変だった。
昼時になってからオシャレなカフェに寄って昼食をとることにした。
店内もオシャレであり既に数組のカップルがいて、どうやらカップルに人気な店のようだ。
「いらっしゃいませ! 二名様でしょうか?」
「はい、席は空いてますか?」
「奥の御席にどうぞ」
自分達は女性の店員さんに案内された席に座り二人でメニュー表を眺めていると先程の店員さんが近付いて来た。
「注文の方は御決まりでしょうか?」
実は言うとこう言ったオシャレなカフェに来るのは初めてだった為に何が美味しいか分からなかったのである注文をした。
「「オススメをお願いします」」
まさかの二人の注文がハモり店員さんは一礼してからその場から離れた後、互いに少し吹きながらクスクスと笑ってしまった。
「このネックレスありがとうフール」
注文の品を待つ間にフールにネックレスを見せながら再度御礼を言う。
「いえいえ、礼治様にはいつも大切にして頂いているのでその御礼です」
フールはにっこり笑顔に自分は本当に幸せ者だと笑顔で返す。
二人の会話が弾むなかで頼んでいた料理がきたので早速二人で食べ始める。
料理は細長い麺を山菜とハムで和えたパスタの様なモノでオススメとあってかなり美味しくて満足だった。
お代を払ってから店を出た後、二人でブラブラと店を見て回り、気づいた時には日が沈み始めあたりが暗くなってきた。
「もうこんな時間か…。なんだかあっという間だったな」
「楽しい時間はあっという間に過ぎると言いますが、全くもってその通りですね」
街を照らす夕日をバックに二人で感傷に浸る。
「また次も二人でデートしょうか?」
「はい、次のデートも楽しみにしています礼治様」
顔を向けあいながら次回の約束を交わす。
「じゃあ戻ろっか」
俺は方向を変えて足を進めた。
「礼治様」
すると背後からフールが呼んできた。
「どうしたフーんん‼︎⁇」
呼ばれたので背後に振り向きながら尋ねる途中でフールの唇が俺の口を塞いだ。
「これからもよろしくお願いしますね礼治様//////」
フールは軽いキスを済ますと直ぐに離れて行き、顔を夕日の様に紅く染めて満面の笑みを向けてくれた。
「此方こそ、これからもよろしくフール//////」
俺もフールに満面の笑みを向け、その後は二人仲良く宿屋に戻っていった。
その日の夜、フールがいつも以上に積極的だったことは言うまでもない。