第9話 アルバス到着
俺達は森を抜けた後、目と鼻の先にあった貿易の街『アルバス』の門手前に到着していた。
門手前では街で儲けを出すために多くの荷物を積んだ商人の乗る馬車が50メートル近く並んでいた。俺達もそれにならい列の最後尾に並んだ。
「結構時間が掛かりそうだな」
余りの人の多さに少し驚いた。
「はいそうですね、流石は人間国一番の貿易の街ですね」
「流石にこれだけ並んでたら待つ間暇だな」
「それでは待つ間にこの街の常識について勉強しましょう。<クイ>」
と、いつものおなじみの眼鏡を掛けてこの街のことを教えてくれた。
「この街アルバスは先ほどもいった通りで人間国一番の貿易の街と栄えており、そのお陰で物の物価が安い値段になっております。因みにこの世界の通貨は下から言って、『鉄貨』『銅貨』『大銅貨』『銀貨』『大銀貨』『金貨』『大金貨』『白金貨』となっておりまして単位は「ナグル」です。因みに礼治様の『アイテムボックス(極)』の中にマジックバックの財布が入っており中には銀貨が10枚入っています」
と確認してみると確かに入っていた。因みにこの世界の通貨を日本円で表すと、
『鉄貨』1ナグル=十円
『銅貨』10ナグル=百円
『大銅貨』100ナグル=千円
『銀貨』1,000ナグル=一万円
『大銀貨』10,000ナグル=十万円
『金貨』100,000ナグル=百万円
『大金貨』1,000,000ナグル=一千万円
『白金貨』10,000,000ナグル=一億円
と10倍づつ上がるらしい。
そうこうしているうちに門まであと5メートルに差し掛かかった時に前の商人のところに割り込みをしようとする五人の集団がいた。いわゆるゴロツキである。
「おいそこをどきな、俺様達はこの街でいずれ有名になる『オーガの角』だ怪我したくなかったらさっさとどきな」
「それは困ります。私は少しでも早く街につかないといけないんです。なのでできません」
「ああ調子に乗ってんじゃねえぞ祖父さっさとどきやがれ‼︎」
「そうだぜ爺さんよう自分の身の為だぜ」
そんな光景を見てフールに尋ねてみた。
「なあフール、アレを俺が治めても大丈夫そうか?」
「え!礼治様がするんですか⁉︎もう少ししたら街の警備兵が騒ぎを聞きつけてくると思いますよ?」
フールは少し驚きながら俺の方に顔を向けて尋ね返してきた。
「そうだろうけどさあ、その間に何かがあったらいけないし。それに商人に恩を売れば何れその恩がなんらかの形で自分に返ってくると思うんだけど、どうかな?」
再びフールに問いかける。
「流石は礼治様です♡。はい、問題はありません。もし仮に街の警備兵が礼治様のことを問題を起こしたゴロツキと間違えたとしても私はもちろんのこと。他の商人の方々が証人になってくれるはずなので安心して雑魚どもを払ってください」
そのことを聞いた後はフールをその場に残してゴロツキどものところに向かった。
「うっせえんだよジジイがよ‼︎」
ゴロツキの一人が商人に殴りかかろうとしていた。
俺は急いで商人とゴロツキの間に入りゴロツキの腹を思いっきり蹴飛ばした。
ゴロツキはそのまま後ろに吹っ飛び白目を向けて地面に仰向けで倒れた。
他のゴロツキ達は何が起こったのか理解できずにいたがすぐに怒りを突然割り込んできた俺に向け、怒鳴り声を上げてきた。
「おいガキ何しやがる!俺様達を『オーガの角』と知っての行いか!ああん⁉︎」
「そうだぜガキ、外野は迷惑料を払ってさっさとどっかに行きやがれ‼︎」
「おうそうだ。お前確か綺麗な姉ちゃんを連れてたな。有り金全部と美人な姉ちゃんを置いてさっさと消えな‼︎」
ゴロツキ達は口々に脅してきた。
因みに『姉ちゃん』とはもちろんフールのことだ。
そんなゴロツキ達の耳障りな怒鳴り声を無視して右の手のひらを前に向けた。
「『タロットマジック』小アルカナ、杖」
呪文を唱えると手元に杖が出てきた。
その杖は長さが50センチ位で、質の良い木から作られたのかとても綺麗な杖で真っ直ぐに削ら持ち手の部分は丁度良く手にフィットした、また杖の上部分はキャンドルスタンドのように丸い台になっていてロウソクを置く部分には大人の拳ひとつ分の大きさの紅い色の宝石が埋め込まれており、『鑑定(極)』を使ってみると
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火の杖
LV.1
火魔法
(火矢)
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と表示された。
突然何もないところから杖が出てきたことに驚いていたゴロツキどもだったが一人が何かを勘違いしたらしく。
「へへ、分かってんじゃねえかガキ」
そのゴロツキの一人が徐に杖に手を伸ばしてきた。
もちろん杖をやるつもりは無くゴロツキの手を杖で払い無防備な脇腹めがけて杖を勢いよくお見舞いした。
「グワァア⁈」
杖が脇腹に直撃したゴロツキは横に吹っ飛びながら声を出して飛んでいった先の地面に倒れた。
仲間を二人も倒され、他のゴロツキは腰にさげていた鞘から剣を抜いて構えた。
「テメエよくも仲間に手を出しやがって、さっさと有り金を全部寄越して消えればよかったものお‼︎」
「このガキがただで済むと思うなよ‼︎」
と罵声を飛ばしてきたゴロツキだったが俺は怯むことなく残るゴロツキ達に目を向けた。
「煩いですよ『ゴブリンの頭』さん。あんた達から仕掛けてんじゃん、それより今降参しないと他の二人よりももっと痛い目にあいますよ」
ゴロツキ達にわざと挑発してみた。
「誰が『ゴブリンの頭』だ‼︎もう許さん死ね‼︎」
ゴロツキ達のリーダー的奴が二人と一斉に掛かってきた。
それを見て俺は簡単に挑発に乗ってきたので半ば呆れながらも杖の宝石の部分を空に向けて呪文を唱えた。
「『火矢』」
すると突然空に火の矢が出現し、その数十五本。
それを見たゴロツキ達はすぐに足を止め今度は我先にと逃げようとした。しかし、自分の忠告を無視した奴らを見逃す程自分は甘くないので火の矢を一人に五本ずつ飛ばした。
火の矢はゴロツキの腕や脚などの急所以外の身体の部位を貫いた。
「「「ギィヤーーーー‼︎」」」
ゴロツキ三人は相当痛かったらしく先程の怒鳴り声よりも大きな声を上げその場に倒れた。
ゴロツキ達全員が倒れた瞬間、それを見ていた商人達が一斉に拍手し始めた。
それに驚く俺だったが、そのすぐ後に警備兵が駆けつけてきて案の定ゴロツキに間違われた俺だったがすぐ近くにいた商人達が事情を説明すると間違った事を謝罪され又、ゴロツキ達を退治した事に感謝されそのゴロツキ達を連れて去っていった。
またその後ゴロツキから絡まれていた商人の男性から感謝され。
「流石は礼治様♡。スゴくステキでしたよ♡」
フールからはスゴく褒められた。
その後は列に戻りしばらくして門のところに辿り着くとさっきの警備兵が受付をしており、また感謝されると普通は身分証を持っていないと仮身分証を発行するために金を払わないと行けないんだが感謝の気持ちとしてフールの分と合わせて仮身分証の発行代金が免除してもらえた。
俺達はこれに感謝して街に入っていった。