第92話 夢と涙
本日二度目の投稿です。
「どうして俺はここにいるんだ?」
フール達に助けられた後に気を失った俺はいつの間にか別の場所にいた。
「ここってフールが神様だった頃に会った場所だよな?」
俺が今いる場所はフールが神様だった時に会った異空間だった。
『ようやく目が覚められましたか?』
「⁈」
現状を理解できていなかった俺の頭の中に会話をしてくる声に自分は驚いた。
「誰だ!いったい何処にいる⁉︎」
俺は尋ねながら声の主を探す為に辺りを見渡す。しかし、声の主は見当たらなかった。
『誠に申し訳御座いませんが今はまだ貴方様の前に姿を現わすことができません』
「じゃあ、あんたはいったい誰なんだ?どうして俺がここにいるんだ?」
どうやら相手は姿を現わすつもりがなさそうなので他の質問をしてみた。
『誠に申し訳御座いませんが私の正体も今はまだお教えできません。しかしながら、貴方様がここにいる理由につきましてはこれからしますお願いを聞いて欲しいからです』
「お願いですか?」
『貴方様には近いうちに教会に行ってお祈りをしていただきます』
俺の質問に相手はすぐに要求をしてきた。
「お祈りをですか?ただそれだけでいいんですか?」
『はい、できる限り早めにお願い致します』
相手がどうしてそんな要求をしてくるのかが俺には分からなかった。しかし、一つだけ言えるのは相手からはなんの悪意も感じられず、不思議と要求を拒否しようとは思わなかった。
「わかりました。いつになるかはわかりませんが近いうちに教会に足を運びます」
『ありがとうございます。それではその時までお待ちしております』
相手が御礼を言い終えた瞬間、俺の意識が薄くなっていくのを感じた。
『いつまでもお待ちしております。礼治様』
その言葉を最後に俺は意識を完全に失った。
〜〜〜
「あれ⁇」
俺が再び目を覚ました時にはベットで横になっていた。
俺は見覚えのない天井をしばらく眺めてから辺りを見渡そうと上体を起こす。
その際に身体の節々が痛むものの大したことはなかった。
(そう言えば俺はあの時に気を失ったんだよな)
俺はラケルと名乗る正体不明の敵に操られていたナーグに殺されかけたものの家族達が助けてくれたお陰で九死に一生を得ていた。
そんな俺が辺りを見渡すと、俺が横になっているベッドの他にも質素なベッドが幾つか並べられており、前に原因不明で気を失ったマリーさんを抱えて連れて行った医務室だった。
どうやら俺は今までギルドの医務室で寝ており、身体中に包帯が巻き付けられていた。
そんな今の状況を俺の中で整理していた時、俺の視界がベッドの両端で椅子に座りながらベッドに俯せになって寝ている二人の人物を捉えた。
フールとシルフィアの二人である。
どうやら二人は気を失っていた俺の看病をしてくれていたらしい。
(本当に二人には頭が上がらないな)
俺の為に頑張ってくれる二人に俺は心の底から感謝をしながら可愛い寝息を立てて寝ている二人の頭を同時に優しく撫でる。
しばらく頭を優しく撫でていると二人はほぼ同時に目を覚ましてから身体を起こした。
「…いけません。礼治様の看病中につい居眠りをしてしまい……」
「ふあぁ〜?どうかなさいましたかフールさ…ま……」
二人とも喋っている途中で俺に気づき、言葉を止めた。
「…礼治様……」
「夢じゃ無いですよね…」
「おはよう二人とも。色々心配をかけちゃったみたいでごめんね」
二人はまるで石の様に動かなくなったので、こっちから二人に声をかける。
「「礼治様(レイジ様)ーー‼︎」」
その瞬間二人の涙腺が崩壊し滝の様に涙を流しながら勢いよく抱きついてきたので、俺は二人の勢いに耐え切れず、そのままベットに押し倒される。
「礼治様!礼治様!礼治様!礼治様!…」
「良かったです…。レイジ様がお目覚めになられて本当に良かったです……。うぅ…うわーーーん‼︎」
フールは俺の名前を連呼しながら泣き続け、シルフィアは俺が目を覚ましたことが嬉しかったらしく泣くと同時に尻尾を引きちぎれそうなくらい左右に振って喜びを表していた。
ただ、その二人は歓喜のあまり気づいていなかった。
「……二人とも…首…首絞めてるから……」
二人は強く抱き締めるあまり、俺の首を絞めていることに気づいておらず、俺は必死になって二人の背中を叩くも全く気付いてくれなかった。
そして俺は二人に抱きしめられたまま息を引き取り第二の人生の終わりを告げたのであった。
〜〜〜
「はぁ、はぁ…。本当にありがとうございます。マリーさん」
そんなエピローグを迎える間近だった俺はアポロとツクヨミとラッキの三人を連れて食事を持ってきてくれた後に異変に気付いてくれたマリーさんによって一命を取り留めたのである。
因みに二人は自分達のしていたことに気付くと謝罪と称して腰にさしていた解体用のナイフで切腹しようとしていたものの、猫の獣人族であるマリーさんが素早い動きで二人からナイフを取り上げ、それに気を取られていた二人を『水の聖杯』を取り出してから唱えた『水鎖』で二人を縛りあげてから命令を使い床に正座をさせた。
「はあ…はあ…、本当に間に合って良かったですにゃ…」
息を切らしながらもマリーさんは笑顔で対応してくれた。
「三人も心配をかけちゃってごめんな」
マリーさんに御礼を言った後で今度は俺に抱きついて離れようとしない甘え盛りの子供三人に謝る。
「謝らなくていいよレイジ兄さん。私達はレイジ兄さんが無事なだけでハッピハッピハッピー!」
「ハッピハッピー!」
「…ハッピハッピー!」
ラッキは満面な笑顔を向けてくれて、その後アポロは元気よくラッキの真似をし、ツクヨミも少し照れ気味に二人の真似をした。
そんな元気に振舞っている三人であったが、三人の表情はどこか泣くのを必死に堪えている様にも見えた。
「もしかして泣くのを我慢してない?」
そう質問した瞬間、三人の顔は流しそうになった涙を堪えようと必死に我慢し、更にはその顔を見られない様にしようと顔を隠そうとしていた。
〔泣いたらダメ…〕
小さく掠れた声だったけど、アポロがそう呟いた。
「泣いたら…ハッピーが逃げちゃう…」
「レイジ兄さんが傷つくのはもう嫌だ…」
他の二人もそう呟いていたものの、俺は何が何だか分からなかった。
「レイジ様。少しよろしいでしょうか?」
困惑している俺に呼吸が落ち着いていたマリーさんが声をかけてきた。
「どうしたんですか?」
「実はですね………」
それからマリーさんは俺がギルドから連れ去られた後の事を話してくれて、その中でラッキが『泣いたらハッピーが逃げちゃう』っと言った後に三人共我慢しきれずに泣いてしまったらしい。
それからしばらくして、フール達が気を失った状態の俺をギルドまで運んできたときに三人は俺の傷ついた身体を見てしまったのだ。
その時に三人の頭をあの言葉がよぎったのだ。
『泣いたらハッピーが逃げちゃう』
マリーさんが言うには、三人にとってのハッピーは俺の側にいることであり、三人は泣いたから俺は危険な目に遭い、一歩間違えれば自分達の側から俺がいなくなってしまう。
そんな風に自分達が泣いたことがいけなかったんだと思い込んでしまったらしい。
そして、また自分達が泣いてしまったら、今度こそ側にいれなくなると思い込み、泣くのを我慢しているとのこと。
「そうだったんですかー。それにしてもよく分かりましたね」
マリーさんの話を聞き終わった俺は必死に泣くのを我慢している三人には心配をかけたなと反省をすると同時に、マリーさんが三人の気持ちを読み取っていたことに驚いた。
「私には年の離れた弟達がいまして、よく弟達の面倒をみていたら、なんとなくですが子供の考えてることがわかるようになったのです」
「へぇー。なんか凄いですねマリーさんは」
そう言いながら俺は三人の方に顔を向けてから優しく包み込む感じで抱き締めた。
「「「レイジ兄さん…?」」」
三人は涙を堪えながら、不思議そうな顔を向けてきた。
「泣くのを我慢するのはよくないよ。泣きたい時はいっぱい泣いていいんだよ」
「でも……僕達が泣いたからレイジ兄さんはいっぱい怪我したんでしょ?」
「俺達はレイジ兄さんの側にずっといたいんだ。…だから泣きたくない」
「私もレイジ兄さんとずっと一緒にハッピーでいたい。……だからもう…ハッピーを逃したくない」
三人は尚も泣くのを我慢し続ける。
「三人がそれで良かったとしてもお兄さんはハッピーじゃないなー」
その言葉に三人は表情が暗くなっていくのがわかった。
「俺は三人には満面な笑顔でいてほしい。だから今は泣いていいんだよ」
優しく語りかけながら三人をまた優しく抱き締める。
「大丈夫。俺は家族達の前からいなくならないから、三人は思いっきり泣いていいよ」
「レイジ…にい、さん。…うぅ、うえーーーーん!」
「よがっだー!レイジ兄ざんが生きててほんどうに良がったー‼︎うわーーーーん‼︎」
「もう絶対レイジ兄さんの側から離れない!私がレイジ兄さんをハッピーにしてあげるんだ!うわーーーん‼︎」
俺の言葉を最後に三人は今まで溜め込んでいた涙を一気に流す。
三人の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになるも、俺は御構い無しで優しく抱き締める。
(俺は絶対に強くなる)
家族達の為に心から強く誓いながら。
次回の投稿には暫く時間がかかります。




