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十六章

 暗部の三人が廃病院内に足を踏み入れれば、アクアとアースは驚きの声を上げる。先に侵入した先行部隊は一人残らず地面に伏せていた。一階の入り口の待合室だった場所がこの状況に加えて、物音一つしないところを見ればほぼ全ての隊員が倒されてるのだと容易に判断できた。

 「へえ、野良ねずみ達にも、それなりの奴がいるんだ」

 アースが口元歪めてそう言えば、足元の隊員の体を蹴飛ばす。子供が帰宅途中に足元の石ころを飛ばすように。

 「そのようだな。そして、この迅速な避難。奴らには優秀な指導者がいるようだ」

 アクアが状況を機械的に言えば、アースは首をかるく振る。

 「そう、ねずみ達てこそこそ隠れて臭くてうっさいよね。ほんとにうっさいよね……アース」

 アースが右手を掲げれば、手前の地面が盛り上がる。そこから現れるの太い巨人の腕。その腕の太さ、160センチで細身のアースの体五人分はある。盛り上がったその腕が二階を貫通する。

 崩れ落ちる瓦礫の中から、そのできたばかりの穴を眺める。

 「ばぁか」

 その穴から落ちてくるのは手にハルバードを構えた雷太。高速でアースに迫る雷太がその刃を振り下ろす。それを拒むのは突如として、地面に現れた土の壁。その壁に刃先が衝突すれば、爆発と炎を散らす。爆撃が土の壁を一枚壊し、二枚、三枚壊す。最終的に土の繭のようになったその姿を見れば、空中で体を反転させて距離をとる。

 「他の奴らと違うな。……お前らが暗部の王てやつか」

 雷太が苦々しくそう言えば。

 「あら、王の話も聞いてるのね。ブルーが話したのかしら。……コレ、アンタがやったの」

 雷太の手に持つハルバードは先ほどまでの玩具のような状態とは違い、槍の穂先と斧の刃の部分は赤く光輝き、まるで新たに作り出しかのようにその輝きで院内を強く照らす。一振り二振り動かせば、地面を火花が散らす。触れるものを爆撃で沈める皆を支えるリーダーとしての強力な矛だった。そして、その姿は凛渡と同じく寄生型のヨロイの証明だった。その赤く輝く武器を強く握り、雷太は黄色に輝く瞳で睨む。

 頬を伝う汗を感じながらも雷太はゆっくりと口を開く。

 「俺が一人でぶちのめしたとしたら、どうすんだよ」

 「嘘ね」

 「嘘だな」

 アクアとアースの言葉がハモる。二人ともその状況に眉を顰める。

 「おい、俺がせっかく状況を説明しようとしているんだ。邪魔をするな」

 「なにを言っているの。アンタの話を聞く暇はないよ。ここは私のターン」

 「君こそ、ごちゃごちゃうるさいな。君は黙っててくれ」

 アクアはイライラとメガネを整える。

 「その動作もなによ、僕は頭がいいです。みたいなソレよ、ソレ。……アンタ、誰にも気づかれてないと思ってるみたいだけど、アンタがバカなことみんな知っているからね。この間の任務でも出口に先回りしろて言われていたのに隣のビルの屋上にいたわね」

 「ぐっ……あれは戦略的なものだ。結果として、俺が目標を仕留めた」

 「確かにアンタが仕留めたわね。……でも、作戦終了時間を五分も延長した。そのアンタのバカみたいな行動でいくらお金が出てるか知っているの」

 「うるさいな、アレは誰がしてもああなるんだ」

 「あらそう、それならこの間の」

 このままでは延々と続くと思われるアクアとアースのやりとりに雷太は小さくため息をついた。奥で顔を包帯だらけにした少女をチラリと窺えば、意を決したように顔を上げる。

 「行けよ、凛渡」

 そう発した直後、玄関手前の用具室から一つの青い閃光が飛び出した。その姿は、青く輝く刀を手にした凛渡の姿だった。

 三人までの距離、わずか五メートル。狙うのは、アクアの首。今の凛渡なら二歩でその距離を詰めることができる。その時間一秒。一人でも多く敵の戦力を潰すためにもっとも手前の敵を討つ、そのために。

 凛渡の刃がアクアの首を切断した。

 

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