十五章
「おお! ここが愛すべきレジスタンス君達の隠れ家か!」
興奮して声を上げる少女、長いツンテールを揺らせばその姿は黒のスーツ。管理局の暗部のナンバー3アース。十五歳の年齢にしては、もう一回り下といってもいいぐらい声は幼いものだった。
現在、アースの立つ場所は廃病院を視認できる林の中。二人の標的を追いかけてきたのだが、アースの心の中は獲物だらけのこの状況に胸を躍らせていた。
早く飛び込み、悲鳴の中に身を沈めたいと祈る所へ一声。
「騒がしいぞ、そのうるさい声を静かにしてくれないとその口を吹き飛ばす三秒前」
横に立つのは、ぶ厚いメガネのレンズの青年も同じくスーツ姿。ただし、首元には真っ赤な蝶ネクタイ。年齢は十九歳。おかっぱの黒髪に太く立派な眉毛をくいくいと動かす。
「三秒前ぇ……アンタ、それ面白いと思ってんの。次言ったら、そのおかっぱ焼け野原にしてあげるからさ、アクア」
呆れた声を出すアース。それをイラついた口調で返答する青年こと暗部のナンバー2アクア。
アクアはひたすらに任務をこなす。実はお笑い番組を見ることが趣味なのだが、周りの反応を気にして公表できないのが悩みである。また、その外見や雰囲気から切れ者のように勘違いをされるアクアだが、実はそれほど頭の回転が早い方ではない。それを認識しているというのも、大きな悩み事であった。
「アース、俺をバカにするな。二秒前」
再びカウントをするアクア。アースのツリ目が怒りを表すように上下する。
「やめろって言ったよね、アクア。……アンタの命が止まる一秒前」
アースとアクアを静寂が襲う。殺意がグッと増していく。視線が交錯し、二人の憎悪が極限まで高まる。
「やめろ」
短い凛とした声、二人の視線がそろりと暗闇から現れた少女を見据える。
長い髪は一つに結っているが、顔を全て包帯で覆っていた。そこから肌を伺えるのは、小さな耳と鋭い二つの瞳のみ。
「やややっ、珍しい。ナンバー1の貴女様が現れるなんて」
芝居のかかった声でアースが言う。
「本当に珍しい、驚きました。……フレイム」
アクアも心底驚いた声を上げる。
そこに立つのは管理局暗部ナンバー1のフレイム。
存在が強大で管理局の持て余すフレイムは判断一つで任務の選択をし、暗部で唯一の仕事を自分で選べる特異な存在である。管理局でも王と呼ばれる存在になれば、ある程度は上層部との接触や任務内容に対してのアクションも可能な人間もいる。暗部となれば、管理局の中でもかなり特殊なポジションといえるだろう。管理局でも行き場をなくしたものの寄せ集め集団と同時に、ヨロイ持ち狩りのプロ集団といっても過言ではない。ここにいるフレイムは、その集団の中でも群を抜いた化け物殺しのプロなのだ。
華奢な体から発せられるのは、重く強い声。
「……行こう、標的は私が仕留める」
口元に笑みを浮かべるアース。
驚いた表情のアクア。
機械のように行動をするはずのフレイムが一つのことに固執する。周りの驚きを感じとりつつ、短い歩幅で歩き出す。
並ぶのは三人、最悪の三人。三人を照らす月夜は怪しく光る。
三人並べば狼男みたいだ。あ、二人は女の子か。と、心の隅っこでアクアはこっそり思った。




