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十二章

 ――困ってるんだろ? だったら、ついてこいよ。悪いようにはしないぜ、親友としてな。

 選択肢の限られる俺は、促されるままに雷太の後ろに続く。雑木林を抜けて山道を小走り、ツタの絡むフェンスを道なりに進むと食い破られたように網がなくなっている部分を見つける。俺達の頭一つ分も高いフェンスが続いていたが、そこは女子供でも簡単に乗り越えれる高さのものだった。そこを越えれば、ところどころに人が通った跡があった。頻繁に大勢の人が行き来している証拠だろう。

  大狩雷太について行ったそこは、心霊スポットとしても有名な廃病院だった。時間帯も午後七時を過ぎているので、その噂を一層引き立てるようだった。だが、噂が広まるまでには理由があり二十年ほど前に閉鎖が決定し、立地条件や規模の問題で病院の解体工事も進むこともなく閉鎖。普段なら、あまり楽しい場所ではないが、今は文句を言うわけにもいくまい。そのまま、雷太の背中を追いかければ、ぱらぱらと声の雨が降る。

 「おかえり、リーダー」

 「どこいってたの、雷太にいちゃん!」

 「おお、よく戻ったな。雷太」

 いろいろな方向からの声。年齢はバラバラ、明らかに自分たちよりも年上の人もいれば、小学生ぐらいの子供もいる。その雰囲気はどこか管理局に似ているが、それでもこんな笑顔はどこにもなかった。

 なぜ、俺が彼らの表情に気づいたのかというと、病院内ではちらほら豆電球がぶら下がり点灯していた。外から見てもよほど近づかなければ、この灯りに気づく人間はほとんどいないだろう。しかし、こんな灯り以上にここにいる人間たちの表情は眩しく見えた。

 「すごい、人気だな」

 俺がそう言えば、雷太は自慢気な顔をする。

 「おう、一応は俺がリーダーだだからな。ま、詳しくは奥で話す。それに……その子も休ませないとな」

 俺が抱きかかえる少女を見て、雷太はそう言う。

 心の底から心配する声を聞き、安堵する気持ちを胸いっぱいに感じながら返事を返した。

 「ああ、助かる」

 俺のその言葉を聞き雷太は満足そうに、おう、と声を上げた。



                   ※



 背中を追いかけて、二階の雷太の個人の空間と思われる部屋のベッドで少女を寝かせる。雷太からは、元医者だとかいう男を呼んでもらい診断してもらった。ずっと眠っているので心配していたが、命に別状はない、とのことだ。しばらく安静に限る、それが一番の治療になるようだった。

 「さて、どこから説明しようか」

 窓際のパイプ椅子にどっかりと腰を落ち着けると雷太は話を切り出した。

 部屋はところどころにカビが見られ、様々なところに紙の束が積まれていた。クリーム色の部屋には机が一つにベッドが窓際に一つ、その反対側の壁際に一つ。病室をそのままお借りした状態に、雷太の個人の所有物が加わったような感じだろうか。

 「お前は俺をどこまで知ってるんだ」

 雷太はクスリと笑う。

 「管理局のブルー。ナンバー4の上位のヨロイ使い……そして今は、重要人物と逃亡する裏切り者」

 「重要人物ね……」

 「おう、お前が思っている以上にその子は厄介だぜ。お前よりかは、その子には詳しいつもりだ」

 学校ではいつもチャラけたイメージだったが、今の雷太はまるで別人のようだった。鋭利な刃物のようで、常に緊張感と共に生きているように見える。まるで、仕事をする時の俺のように。

 「それはまだいい……お前のことを知りたい」

 ふざけるなよ、と付け足せば。はいはい、と軽い返事。

 「俺も同じヨロイ使いだ。自慢じゃないが、ココでは一番強い。……この辺は言うまでもないかもしれないな。そして、一番の疑問であるココのことだが、管理局に対抗するレジスタンス組織。……そう言うとカッコいいかもしれないが実際のところは、管理局のやり方が嫌になったり、自分のチカラの扱いに困った奴の集まる場所になっている」

 「お前はそこのリーダーてことか」

 「どうだ、スゴイだろ?」

 胸を張る仕草を見せる雷太。その姿に学校での姿が重なり苦笑する。

 「ああ、確かにスゴイな。お前がどうしてこんなところにいるのかは聞かないが、なんで俺を助けたんだ。お前に俺達を助けることで、何かメリットはあるのか。……お前がこの子に危害を加えるようなら」

 俺が身構えるように腰を落とすと、雷太はまてまてと手を上げた。

 「考えすぎだ。その子のことを知っているていっても、何でも知っているわけじゃない。だが、その子はこれからのヨロイを持つ者達の未来を変えるかもしれない。うちのヨロイ使いの中には、そういう出来事に敏感な奴がいてな……そいつが教えてくれたんだ。これからの俺達の未来に変革を与える存在だとな」

 変革、あどけない表情で寝息をたてる少女からは、そんな大げさなものは感じられない。この少女は、いったいどれだけのものをその肩に背負っているのだろう。

 「だからなんだ……」

 じっと睨むと雷太は苦笑い。

 「そう身構えるなよ! まったく、今日の凛渡ちゃんは気性が荒くて困るぜ。恥ずかしいから、一度だけしか言わないぞ……」

 むむむ、と唸ると意を決したように口にした。

 「……友達だから、嬉しかったんだよ管理局に抜けてくれて……それに、もう二度と大切な親友は失いたくないんだ」

 雷太はそう背中を向ける。

 ああ、そうか。と心の中で納得した。雷太も何かを過去に失ったんだ。だから、今戦っている、たくさんのものを背負って自分と世界と。たくさんの出来事が波のように襲ってきた一日だが、少なくとも友という言葉の重さを痛感できた。それだけは、今の俺の救いだろう。

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