Story=3 : Least realize;
「どう? 和樹先輩、美味しい?」
その問いかけに頷くが、和樹は食していたシチューを食べる手を止めた。
「しかし彩姫、今日は大学はどうした?」
「ん? ああ、大丈夫だよ。 普段真面目に顔出してるからね」
そういうもんなのか、と解釈した和樹は再び目の前のシチューにスプーンを伸ばす。
真冬の季節ではあるが、太陽がさんさんと照る真昼間に何故シチューを出されたかという疑問を感じつつも、深夜バイトですっかり失ったエネルギーを回復する事に専念する。
和樹の前に座っている娘は彩姫 枝流という変わった名前の娘であり、和樹の高校時代の後輩である。
黒髪を肩まで下ろし、その箱入りのような清楚な印象とは裏腹に重度のオタクであるのが和樹の考える大きな欠点だ。
本来は和樹の同級生である明沙との友達付き合いから来た延長線上であったが、最近はこの妹の方が和樹は多く会っている。
と、いうのも恋愛関係にあるとかではなく、そもそもとして昼に服屋の仕事をしている明沙との時間が全く合わない事にあるだろうと、少なくとも和樹は考えている。
「そういえばさ、明沙は今日休みじゃないのか? 休みって来る直前まで聞いてたんだけど、何かメールも来ないしさ」
「ああ、お姉ちゃんは急に仕事先から呼び出し受けて、さっき急いで出て行っちゃったよ」
「なるほどねー」
返答しながらもガツガツと食べていたシチューが空になる事に時間を必要とせず、和樹はゆっくりとスプーンを於いてゴチになりやした、と一言伝える。
枝流は上機嫌でその空になった皿を手に取ると、たずねた。
「ところでね、前さ、自己研究の話したよね?」
「最近流行の箱庭だろ、結果なんか正直興味ないな……縁起悪いし」
「んーんー? まだ生きてるよ、でもやっぱりちょっとまわりとは条件を大きく変えてるからね、色々と面白い事になってるよ。 動向を全部保存して、箱庭の技術をサルベージしたら……、もしかしたらノーベル賞も夢じゃないよ!」
「まあ、せいぜい他に先を越されない様にな」
冷たい感じもするが、枝流の和樹への主張とは裏腹に、和樹は枝流に対して余り面白い感情は持っていない。
和樹個人の考えとしては明沙は遊び仲間として、とても親近感を覚える対象であったが、枝流については話がやたら浮世離れしすぎて素直に話を楽しめなかったり、学術関連に於いて劣等感を覚えたり等、あまり良い感情を抱く事が出来ない故である。
だが、枝流自身としてはそれが自分の持ち味であり、得意分野である以上、それを和樹に 必要以上にアピールすることで自分に興味を持って欲しいという考えであった。
勿論、それは逆の効果として成っている事に次第に気付いている枝流としては、混乱と後悔でしかなく、小さな怒りの感情さえ覚える。
そしてつい小さく出てしまった言葉が。
「そんなにお姉ちゃんがいい?」
都会とはいえ、住宅街にそびえるアパートは車の通りも少ない。
ガランとした部屋の中で二人きりでいる以上、いかな小さな呟きだったとしても、それは和樹の耳に強く響いた。
「……、えっと」
困惑しながらも何かフォローをしようと思い立つ和樹が先程まで居た枝流の方を振り向くと、枝流はいなかった。
付く見当といえば、枝流の部屋が道理である。
和樹はため息をつきながらも、枝流を強く傷付けた事に深く後悔しながら席を立つ。
枝流の部屋を示す「研究中! 入ったらボコボコにしてやんよ」と手書きで書かれた札の掛かった扉の前に立つ。
「おい、彩姫!?」
ノックをする。
が、返事は無く。
「あー、ちゃんと話し聞いてやれなくて悪い。 ちょっと仕事で疲れてたみたいで、な」
返事は無い。
耳を当てても啜り泣き等ではなく、キーボードの鍵盤を恐ろしい速度で叩く音だけが聞こえた。
「……あー、実は案外気にして無いって奴か? それとも閻魔帳か……まさかVIPか!?」
想像するとちょっぴりと寒気を感じた和樹はドアノブに手を掛けると、手前側に力を込める。
見事に鍵が掛かっている。
「彩姫、俺が悪かったって!」
「何やってんだ? てめー」
和樹の肩に布キレを当てられる感触。
振り向くと茶髪の長い髪をした女の子が立っている。
明沙が首に巻いたマフラーで、和樹の肩をパシパシと叩いていた。
「お、おう。 れっつカシミア……久しぶりだな、明沙」
「おう、店からギッてきたワイズのマフラーだぜ。 で、何やってんだよ」
姉の方が帰ってきたことに内心ほっとした和樹はその様子を表情に出すことを抑えながら説明する。
「実は、お前の妹泣かせてしまって……」
この時受けたブラジリアンハイキックは和樹に深いトラウマを与えた
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~なぜなにエイリアス~
Q参考にした漫画アニメある?
A同列ジャンルならSerial experiments lainの大ファンですが
比較的ブラムを意識してます気がします
攻殻機動隊について既に一度聞かれましたが、実は時間が無くて、付き添いで映画、イノセンスしか見てないのでよくわかりません