ある朝目覚めたとき、ウグイスの鳴き声がした
子供の頃、家の近くに公園があった。そこには幅が40センチほどの細い水路のようなものがあった。
東京の下町。緑はすべて人の手が加えられたものであり、自然と呼べる対象は、すべて人工的に作られたものであった。
だが、その水路にはなぜか、カエルとかザリガニとかタイコウチがいた。子供たちにとっては、そこは近所で自然と触れることができる数少ない場所であった。
藻がはり、決してきれいとは言える場所ではなかったけど、夏休みともなるとその場所に行き、ザリガニを捕まえて水槽に入れていた。
やがて、その公園は改修され、その水路もなくなり、カエルやザリガニが生息できる場所もなくなってしまった。
今、私は都会と言える場所に住んでいる。そこは子供のころを過ごした下町よりもさらに自然は少なく、自然は遠くに見に行くもの、そうした対象に過ぎない環境である。
だが、ある朝目覚めたとき、ウグイスの鳴き声がした。
都会というと、自然からは対概念にあるような印象だが、実際にはそうでもないようだ。ウグイスだけでなく、マンションの前を流れる川には、鴨が10羽以上住んでいる。幅は10メートルほどの、コンクリートに覆われた、川というよりはただの水路と呼ぶにふさわしいものだが。
以前NHKで放送していたのだが、近くには屋敷林があって、そこにはたぬきが住んでいるという。緑が限られた都会の中で、線路の下にある溝などにも巣があるとのことだった。
この都心に近い、アスファルトとコンクリートに覆われた人のあふれる街のそばに、野生の命が生きていることに、不思議を感じる。