あの白煙を目指して ~家出をしたら魔導士公爵様に溺愛されました~
読んでいただきありがとうございます。
昨日の投稿間違えて現実世界にしてしまいましたすみません。
3年前に私には新しい母と妹ができました。
父は新しい家族を愛し私には目もくれません。と言うか……。
きっと見えていないのでしょう。
一緒に暮らしていても私はまるで見えない者として扱われています。
父は、ご飯もドレスも妹と変わりなく私に与えてくれますが、声をかけても返事をしてくれません。新しい母も、妹も同じです。
私はいつも一人で過ごしています。
今年で16歳になりましが、学院にも通わせてもらえません。
実の母は、新しい家族が来る少し前に事故でなくなりました。
本当は私も母とその馬車に乗って祖母を訪ねる予定でしたが、朝から熱を出してしまい一緒に行くことが出来ませんでした。
「あの時、一緒に行けばよかった……。」
「アイラ様 どうされました?」
「リナ……。」
彼女は唯一このアンバー伯爵家で私と言葉を交わしてくれる人。
「リナ、私は生きているのかしら?」
「失礼します」
リナが私の手を握る。
「温かいわ……。」
「アイラ様は生きています。私の手にもアイラ様の温かさが伝わってきますよ」
「でも。私は何もできないの、リナ意外と話すことも学ぶことも。何もなくて……。どうしていいかわからないわ」
私はいつもの椅子に座り、毎日見ている景色に眼を向ける。
王都の町並みと、それに続く畑や山。
山のふもとにいつも上がっている白煙。
あの白煙はどうしていつも上がっているのかしら?
私は、心にふと浮かんだこの疑問をどうしても知りたくなった。
「リナ。お願いがあるの、私この家を出るわ」
私は衣裳部屋に入り、すべての宝石や売れそうな小物を袋に詰めてリナに差し出した。
リナは私の突然の行動に眼をぱちくりさせている。
「これをどうするのです?」
「これを売って、ワンピースと保存のきく食べ物を買ってきてくれない?
残ったお金は、リナと半分にしてリナの分は伯爵家の外で信頼できる人に預けて、持っていたらリナが疑われるから」
「お嬢様……。」
リナは私をしばらく見つめていたが、私の意思が固いことを感じ、唇を真一文字に結び頷く。
「少しお待ちください、直ぐに準備します」
リナは袋を受け取りメイド服のスカートに隠すと部屋を出て行った。
1時間ほどしてリナは部屋に何も持たずに戻ってきた。
「アイラ様、荷物は準備できましたが今運び込むと目立ちますので、みんなが寝静まったころお持ちします。朝一番の乗合馬車が出る時間に合わせて裏口から出ましょう、私も明日はお休みを取りましたので馬車まで一緒に行きます」
「ありがとうリナ」
✿ ✿ ✿
明け方に身支度を整えて、16年間暮らした伯爵家を後にした。
リナの準備してくれた大きなリックサックを背負って乗合馬車の端っこに座る。
乗合馬車が出発するまでリナは私についていてくれた。
「アイラ様のこれから始まる生活が素晴らしいものであることを祈ります」
リナは眼にいっぱい涙をためている。
「リナ。これを受け取って」
私はリナに小さな髪飾りを握らせた。
「子供の頃に母がくれたものなの、私とお揃いよ。力になってくれてありがとう」
「昨日あんなに沢山いただいたのに……。でもアイラ様とお揃い。嬉しいです」
馬車は走り出し土煙が上がる。
リナは見えなくなるまで手を振っていた。
乗合馬車は昼過ぎには王都のはずれについた。
私が目指す山のふもとまでは、歩いていくしか方法がないらしい。
「ぽかぽかでいい天気ね」
私は露店でサンドイッチと飲み物を買い畑のあぜ道をどんどん進む。
途中で農家のおじさんに暗くなる前に戻る様に声をかけられた。
「夜になるとこの辺は野犬が出るんだ。早く戻るんだよ」
あたりが夕焼けに照らされる頃、私はようやく森の入り口にたどり着いた。
この森を抜けて、少し上らないとあの白煙の元にはたどり着けない。
「はあ~。私。考えなし過ぎだわ」
私は木の根元にぺたりと座る。
こんなに長く歩くのも、土の道を歩くのも初めてだ……。
座ってしまうと足が、がくがくして動かない。
周りに民家もない。
大きなリックサックを下ろし、サンドイッチを取り出すとひと口かじる。
「はあ。喉もカラカラだ」
飲み物は歩く間に飲んでしまって残っていない。
「せっかく家出したのに、私ここで干からびるんだわ」
ため息をついて空を見上げるともう空には薄く星が見え始めていた。
グルルルル~。
グルゥ~。
何かの唸り声が聞こえる。
視線を空から戻すと、私はすでに数匹の野犬に囲まれていた。
野犬と眼があう。
うううう。おじさんが注意してくれたのに!
私は唇をかみしめ、手に持っていたサンドイッチを野犬目掛けて投げつける。
野犬がサンドイッチに群がる間にリックを背負い、一目散に駆けだしたはずだったけど、足がもつれて転んだところを背中から野犬に押さえつけられた。
「いやだ~噛みつかないで~」
叫んだ瞬間押さえつけていた野犬の重みが軽くなった。
慌てて起きあがると、野犬たちが宙に浮いている。
あれ。助かったのかしら?
ドサッと地面に叩きつけられた野犬は、そのまま森の中へと逃げていく。
「なんだかわからないけど助かった~」
両手を上げて喜び見上げた私の頭上には、真っ白な喉から下顎が見える。
ゆっくり後ろを振り返ると、そこには月明かりにキラキラ光る大きな白狐。
しっぽは三本ゆらゆら揺れていて、尾尻の先は紫色。
眼は金色に輝いている。
死者の国からお迎えかしら……。あれ?なんだか眠くなってきた。
狐の神秘的な美しさに魅せられながら、私は意識を手放した。
✿ ✿ ✿
レイヴィン・コール公爵 視点
スノーがある夜、珍しく出かけたと思ったら。
ボロボロの少女を背負って帰り、俺の足元に転がした。
「スノー。何を拾って来たんだ!」
少女を見下ろし困っていると、スノーはぐいぐいと俺の袖を引っ張る。
「もー。仕方ないな」
俺は少女に浄化魔法をかけ、身なりを整えてから開いている部屋に運ぶ。
「どこで拾ったんだ?」
俺には見向きもせず、スノーは自分の体を小さくし、少女の枕元に丸くなった。
「なんだよ」
俺はスノーを軽くにらんで部屋を出る。
「この研究棟に人を入れたのは初めてだな……。」
俺は生まれつき魔力が強く、小さな頃は良く力を暴走させた。
魔力が強いせいなのか人の感情にも敏感で、何も考えず人の気持ちを言い当てて気味悪がられ、俺自身も他人と関わるのは苦手になった。
暴走する俺の力を心配し両親は、その時一番魔力の強かったゾール爺さんに俺を預けた。
預けうと共に俺に公爵位をつけて降下させた。
ゾール爺さんのおかげで俺は力のコントロールやいろいろな魔法を学び、今は公爵家の当主としても独り立ちもできている。(周囲との関係はほとんど家令に任せているが……。)
この研究棟はゾール爺さんの形見で、ほとんどの夜をここで過ごす。
「はあ~。どこのお嬢さんか……。どうやって帰ってもらえばいいのか」
俺は大きなため息をつき、ベッドにもぐりこんだ。
朝焼けが空に広がる頃に、俺の寝室のドアが大きな音でノックされる。
驚いて飛び起きドアを開けると、昨日の少女がスノーを抱っこして満面の笑みでたっていた。
「おはようございます。コール公爵閣下。
私はアンバー伯爵が娘、アイラと申します。この度家出をしまして、野犬に襲われているところをスノーに助けてもらいました。帰る家がありませんのでこちらで働かせてください」
アイラと名乗った少女は、若葉色の輝く瞳をキラキラさせて俺を見つめる。
視線に耐えかねて返事をした。
「なんで俺の名前もスノーの名前もわかるんだ?」
「なんででしょう?スノーの言葉は耳から聞こえませんが、頭の中に響く感じです」
スノーは小さな頃に森で出会い俺だけに懐いて離れなくなった。
他の人にスノーは見えないし、触れられなはずなのにどうしてアイラにはできるし、懐くんだ……。
どのみちここに住まわせるわけにはいかない。
どうせ親と喧嘩でもしての家でだろう、俺も一緒に伯爵家に送っていくと話すと、彼女は今までの身の上話を始めた。
実の娘を無視し、後妻の家族だけかわいがることがあるか!
直接害を加えないからいいわけでも、暮らしを問題なくさせているからいいわけででもない!
3年間も存在を否定されて……。
俺の幼少期もなかなかにひどいものだったが俺にはゾール爺さんがいたし、公爵家のみんなもいた……。
話を聞いて、俺はアイラを追い出せなくなった。
「ここは俺の実験棟兼仕事場だ、邪魔しなければ住んでもいい」
ぶっきらぼうに答えると、アイラは飛び上がって喜んだ。
「私、唯一話せたリナを見てましたから、洗濯も掃除もできるはずです。ご飯はちょっと無理かもしれないけど、できることをやらせてください」
「もともと俺は魔法で何でもできるが……。自由にしろ」
許可してやるとスノーの手を取りくるくる回って喜ぶ。スノーはあんなことできるタイプだったのか。
アイラの出現に驚きと、なんだか心がわくわくして俺の口角も上がった。
その日からアイラの仕事はなかなか派手だった。
どうやったら、ふろ場を泡で埋め尽くしたり、何度も物を壊したり、ホウキが折れたり、俺のシャツを一回り小さくしてみたりできるのか。
最近は料理にもトライするがほとんどが炭になる。
でも、何度失敗してもあきらめないし、いつも楽しそうにチャレンジを繰り返す。
馬鹿なのか前向きなのか、反省しないのか……。
「ふふ」
最近はアイラを思うと俺も笑顔になる。
「ヴィン様!ヴィン様~。みてみて」
俺を呼ぶ声に外に出てみると、大きなシーツがロープに干され穏やかな風に揺れていた。
「すごいでしょ、真直ぐピンって干せました~」
シーツの前に立ち、じゃじゃーん♪と大きく手を広げるアイラに思わず声を上げて笑った。
「あはははは。上手にできたな」
「もーヴィン様なんで笑うんですか!」
「わるい、わるい」
俺は謝りながらアイラの頭を撫でる。
「ご褒美にお茶にしようか、侍女長がお前にと菓子を持たされた」
「わー。エマさんですね。いつも美味しいお菓子をありがとうございます」
綺麗に干せたシーツの側にテーブルを出しお茶にする。
良く晴れた青い空にシーツの白、その奥に続く緑が美しい。
「ヴィン様。白煙はどうして毎日出ているのですか?」
「ああ。これは俺の仕事で作る薬品と魔力コントロールのためのおまじないだ」
「おまじない?」
「ああ。俺の師匠だった爺さんが、コントロールのうまくいかないときに良く炊いてくれた。
まあ気持ちが落ち着くお香みたいなものだ」
「んー。大きなお香ですね。 でも大きくて良かった」
「大きいといいのか?」
「私……。白煙を目指して家出してよかったです」
「ん?アイラはここを目指していたの?」
「はい。誰にも見てもらえない毎日に。
ちょっとだけですけどお母様と一緒に死んでしまいたかったって思ったんです。
その時になんだかいつも部屋の窓から見えるこの白煙が気になって……。
このまま変わらない毎日よりこの白煙の所に行ってみようと思ったんです。
リナが心配していろいろ準備してくれたのに、私は世間知らずであっという間に野犬に襲われちゃって、スノーに助けてもらうこといなりましたけど」
アイラは膝の上で丸くなっているスノーを撫でている。
「おかげでヴィン様に出会えました。
今までリナしかいなかった世界が大きく広がりました。ヴィン様とスノーのおかげです」
アイラが俺を見てにっこり微笑む。
アイラは……。
俺は立ち上がりアイラを強く抱きしめる。
どうしてあんな悪意の中に暮らしていたのに、こんなにピュアでいられるんだ。
誰を恨むこともなく。
アイラがここに来てから俺は、アンバー伯爵家を調べたが酷いものだった。
アンバー伯爵の資金繰りに困っていて、支援を貰うためアイラの母と政略結婚し伯爵家が持ち直したところで事故に見せかけて助けてくれた妻を殺していた。
直ぐに愛人の男爵令嬢を家に入れるが、夫人が連れてきた娘は伯爵の娘ではなかったことがわかり、消す予定でいたアイラを活かされることになった。
この国では血を引く子息令嬢が家を継ぐ事が第一とされる。
そのため17歳で親との血縁を判断する鑑定が行われ、鑑定には親と子の血液が必要となる。
事情により特例はあり、正当な手続きをすれは養子縁組も可能だが、後妻の子供は特に厳しく鑑定され血縁が確認できない場合は国に虚偽を申し出たこととなり罰せられる。
あいつらは、アイラの血を採るためだけに生かしていたんだ……。
アンバー伯爵は、以前から周囲に妹の方をアイラだと紹介していて、アイラが行方不明になっても公には探せず、こそこそと探し回っているが……。
アイラは絶対に俺が守る。
「んん。ヴィン様いい匂いですけど苦しいです~」
アイラを抱きしめる腕に力が入り、挟まるスノーの足が俺の腹を何度も蹴る。
「すまない。だが今日からアイラの定位置は俺の膝の上だ」
「あわわわわ。そんなの緊張して無理です」
「反論は却下だ」
俺はアイラを膝の上に乗せ座り直し、お茶の時間を楽しんだ。
一度抱きしめたらもう離れられなくなった。
✿ ✿ ✿
アイラ 視点
ご褒美のお茶会から私の生活は一変した。
ヴィン様と常に一緒だ。
そのためコール公爵家にもいくことになって、家令のポールさんや侍女長のエマさんにお会いすることが出来た。
さらにさらに!
私が家出したことでアンバー伯爵家を解雇されていたリナを、私の専属として雇用してくれて先日涙の再開を果たした。
そして今は、公爵家に向かう馬車の中。
「ヴィン様、重たくないですか?」
「重くないよ、スノーの抜け毛より軽い」
「スノーの抜け毛より軽かったら私はお化けじゃないですか?」
ぶっくり膨れた私の頬をヴィン様が両手で挟む。
「もう」
ヴィン様の胸をポコポコ叩いて反撃すると、ヴィン様は私の手を取りしげしげと眺めた。
「だいぶ良くなってきたね」
「はい。ヴィン様のクリームのおかげです」
私は、やったこともない洗濯や掃除に苦戦し無駄に長く時間もかかったせいで、数日でガサガサのパキパキの手になって、ヴィン様に自分を大事にしないとダメだと怒られた。
それから毎日手荒れに効果のあるクリームを塗ってくれだいぶ良くなった。
ヴィン様はやさしい。
良くしてもらってばっかりで……。なにかお礼がしたいな。
公爵家に着くとヴィン様はどうしても外せない会議があり、少しだけ私と離れる。
「アイラ、直ぐに戻るからリナと一緒に居てね。
スノーも頼んだよ、エマもちゃんと見ててよ」
「はい。はい。行ってらっしゃいませ」
ヴィン様はエマさんに追い出されるように部屋を出ていく。
「ヴィン様頑張って」
私も手を振り送り出す。
今日は二人に相談があるのだ。
「ねえねえ。二人に相談があるの、ヴィン様になにか送りものをしたいのだけれど、どんなものがいいかしら、私、プレゼントをしたことがなくて」
「あら。いいですね~初めてのプレゼント。
きっとアイラ様が何か手を加えたものにすると喜びますよ」
「髪を結ぶ組みひもとか、ハンカチに刺繍なんてどうですか?」
「リボンに刺繍なんかもいいですね」
「私、組みひもも刺繍も今まで習ったことがないの、私にできるかしら?」
プレゼントの相談にわいわい盛り上がり、いろいろ話しあった結果。
私の瞳と同じ若草色のリボンに、スノーの顔を刺繍してみることになった。
「じゃあ私は刺繍糸を持ってきましょう。練習用の布もね」
「じゃあ私はリボンを買ってきます。アイラ様が外に出るわけにはいかないので、アイラ様が直接に選べないですが良いですか?」
「リナありがとう。リナが選んでくれるものなら大丈夫。
じゃあこれでお願い」
私は家出する時にリナが用意してくれたお金を袋ごと手渡した。
「こんなにいりません。えっとこの金貨一枚で何本か買えると思います」
「そうなのね。よろしくお願いします」
二人が部屋を出て行く。
一人になって、お茶をいただき一息つくと私はスノーの顔をふにふにと触り考える。
「刺繍ってどんな感じかしら、スノーの顔をどうやって作るのかな?
可愛い感じがいいよね。 あーでもヴィン様に結んでいただくんだから、かっこいいのがいいね」
静かに私の話を聞いていたスノーが突然大きくなって私をくるりと包みこんだ。
「スノーどうしたの?」
バリィン!とガラス窓が割れる音がした。
モフモフのスノーから顔を出して部屋を覗くと、割れたガラスと紙に包まれた石が転がっている。
スノーがするりと小さくなった。
「なんだろう……。」
紙を開いてみるとそこには伯爵家を出る時にリナにあげた小さな髪飾りが入っていて紙には(直ぐに出て来い)とメッセージが書かれていた。
わなわなと手が震える。
「リナ!」
私は急いで部屋を飛び出し、真直ぐに玄関に向かう。
正面の庭を全速力で走り抜け、正面の門をくぐり周囲を見回す。
塀の角におんぼろの馬車が止まっているのを見つけた。
馬車の中にリナが縛られているのが見える。
慌てて駆け寄ろうとすると腕を思いきり引っ張られた。
「お父様」
「やはりここにいたのかアイラ。
リナが公爵家に雇われたと聞いて怪しいと思っていたんだ。さあ一緒に来い。
来ないとリナの命はないぞ、おとなしく来るならリナをそばに置いてやる」
久しぶりに聞いた父の言葉がこれだ……。
「今すぐリナをこちらに寄こして、そうでないと一緒にはいけない」
父が手を上げると馬車がこちらに近づいてくる。
私は父に掴まれた手を振り払い馬車に走る。
「待て! ぐあぁぁぁぁぁ」
叫び声に振り返ると父の足にナイフが刺さっている。
ヴィン様とスノー、騎士の皆さんがこちらに向かって走ってくる。
スノーは直ぐにたどり着き、くるりと私を包み込んだ。
ヴィン様が父を魔法のロープで締め上げる。
「いたた。離して下さい。公爵閣下、私は娘を迎えに来ただけです」
「ほお。お前の娘は他にいるのだろう?この娘はなんという名だ!」
ヴィン様がさらにロープが閉まり、父は泡を吹いて気絶した。
「こいつを王宮騎士団に連れて行け、証拠はすでに提出してある」
「はっ!!」
父達は騎士のみなさんに連れて行かれた。
馬車の方を見ると、リナも助けられて手を振っている。
「よかった……。」
スノーが私の体からするりと離れると、今度はヴィン様に抱きしめられた。
「こら。アイラどうして俺に知らせに来ないの、勝手なことして今日はお仕置きだよ」
「ううぅぅぅ~」
ヴィン様の温かさに、こらえていた涙が溢れだす。
父への怒りや、恐怖、悲しさや、抱きしめられた安心や、いろんな気持ちがごちゃごちゃになって少しの間私の涙は止まらなかった。
✿ ✿ ✿
証拠の見分が行われ、アンバー伯爵夫婦は罪を認めた。
夫婦は私への高額な賠償金命じられ鉱山に送られ。義理の妹は修道院に送られた。
そして未成年であった私は、後見人をつけてアンバー伯爵を継ぐか問われたが、私は爵位を返上することを決めた。
アンバーの名は悲しい事しか思い出さないから。
「アイラ~。今日は良いものを貰って来たよ」
ヴィン様がご機嫌で王宮から戻ってきた。
「俺とアイラの婚約証明書」
「えぇ~。ヴィン様、私は爵位を返上してただの人になったんですよ、公爵閣下とは結婚できません。
それに世間知らずの私は知りませんでしたが、ヴィン様は王弟陛下なのでしょ!伯爵令嬢でも無理です」
「大丈夫。アイラには伯爵位を貰って来たよ、後見人は兄さんがしてくれるって、俺が婚約者を決めるなんてと泣きながら喜んでたよ」
「兄さんとは国王陛下じゃないですか!」
「そうだよ、国王陛下が後見人の伯爵令嬢なんて最強じゃない?」
そう言ってヴィン様は私を抱きしめおでこにキスをした。
「もー。ヴィン様はどんどん一人で決めちゃうんだから」
「いやだった?」
「……。嫌じゃないです」
私は一番うまく刺繍ができた緑のリボンを差し出した。
これから始まる新しい毎日はみんなに囲まれて、にぎやかになりそうです。
~ 終わり ~
誤字脱字などいつもありがとうございます。




