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第5話「始まりの逃避行」

「逃げ出せたの!?あの施設から」と、シオリは思わず声を大きくして、驚きを口にした。


その言葉に、ソラは一瞬だけ息を詰め、慌てるように視線をシオリへ戻す。そして、確認するようにハルへと目を向けた。

ハルもまた、同じようにソラを見返す。


二人は互いに目を見開いたまま、一瞬だけ視線を交わし合い、すぐにシオリへと視線を戻した。


そして、ほんの少しだけ視線を落とし、ハルは静かに告げた。

「まぁ、大変だったけどね......」


その言葉を受け、シオリは驚きが消えないまま、少し俯く。

「まさかほんとに、抜け出せる人がいるなんて......」


その呟きを聞き、二人は同時に違和感を覚えた。

――あの施設のことを、知っている?

そう言いたげに一度だけ顔を見合わせ、再びシオリへと向き直る。


するとシオリは、はっと思い出したように顔を上げ、慌てた様子で言った。

「じゃあ、二人とも、こんなところにいたら、だめじゃないの!追われてるんでしょ?」


ソラは少し考えるように視線を泳がせてから、慎重に口を開いた。

「確かにそうだけど、俺らが逃げたのは一昨日の夜だから、まだそこまで、追っ手は来てないはずだけど......」


ソラがそう言うと、シオリは短く、はぁ。と溜息をついた。

そのまま背を向け、閉まっていた窓のカーテンを指先で少しだけめくり、外を見下ろす。


そして、低く、確信を含んだ声で漏らした。

「やっぱり......」


そう呟いたシオリは、すぐに二人の方へ振り返り、

「ちょっと来て、二人とも」と短く言う。


二人は言われるがまま並んで窓の方へ歩み寄り、シオリの隣に立って下を見下ろした。


そこには、スーツを着た顔の見えない者たちが、あちこちで指をさし合いながら、何かを探すように忙しなく駆け回っていた。

まるで、ここにいる二人を探しているかのように。


その光景を目にした瞬間、二人は同時に目を見開き、言葉を失ったまま立ち尽くす。


背後から、シオリの張った声が飛ぶ。

「さっ!逃げよう!」


ハルは思わず、「えっ」と声を漏らし、二人は弾かれたように後ろを振り返った。


ソラが慌てた様子で言う。

「逃げるってどこに......?東七区域は全て管理区域だぞ?」


その言葉に、シオリは一瞬きょとんとした表情を浮かべ、

「あっ」と小さく反応する。


「そっか、二人は知らないんだ......」


少しの間を置き、シオリは改めて二人を見据えた。


「主に管理されてるのは、関東だと帝都だけだから、その外に逃げるの!」


それに対し再びソラが反応する。

「関東?ってなんだよ、しかも外って、出られるわけないだろ!」


畳みかけるように、疑念を滲ませて続けた。

「それになんでそんなに詳しいんだよ......」

と、言う


するとシオリは一瞬だけ目を見開き、言葉を飲み込むように俯いた。

けれど、その沈黙はほんの刹那で――すぐに顔を上げ、視線を逸らさずに言い切る。


「そうだね、それも踏まえて後で話したいことがあるの。でも今は逃げるのが先!」


続けて、間髪入れずに。

「準備して!二人とも」


その言葉に背中を押されるように、ソラとハルは慌てて身支度を整えた。

部屋の空気が、迷いから切迫へと一気に塗り替わっていく。


そして家を出ようとした、その瞬間。


ハルが足を止め、焦りを滲ませて言った。

「でもどうやって逃げるの?徒歩じゃ追いつかれちゃうよ」


それにソラは確かに......と悩みを口に出すが。

答えを探す間も与えず、シオリがぱっと表情を明るくする。


「大丈夫、私に案がある!」


そう言って扉へと手をかけ、開ける直前に振り返った。


「まずは、私のおばあちゃんの倉庫を目指そ!そこに行けばきっと逃げる手段がある!」


その一言を合図に、三人は追われる身となった現実へと踏み出す。

まだ何も知らないまま――この選択が、少年少女の逃避行の始まりだった。

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