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《DUAL MIND - デュアル・マインド》  作者: ミストマン


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第6章:ヴェイルの真意

地下層の医療区画は、夜の闇に包まれていた。ユナは静かに横たわり、微かな呼吸を繰り返す。カイはその隣に座り、手を握ったまま動かない。ナギサはモニターを凝視し、ユナの脳波を解析している。外界の音は遠く、時折通路の振動が床に伝わるだけだった。


「……やはり、普通じゃないわ」ナギサが低く呟く。脳波の二重化パターンは安定しているように見えるが、その波形の複雑さは予測不能であり、微かな揺らぎが時折現れる。「このままでは、肉体への負荷が長期的に問題になる。少なくとも一度、電脳世界との同調を抑えた方がいい」カイは頷き、ユナの肩を軽く叩いた。「わかってる、無理はさせない」


その時、医療区画の影から音もなく現れたのは、仮面アバターのヴェイルだった。無機質な仮面に覆われた顔は表情を一切読み取れず、声も淡々としている。だがその淡白な口調の奥には、計り知れない意図が潜んでいる。


「——君たちは、思ったより慎重だな」ヴェイルはゆっくりと歩み寄り、ユナをじっと見つめる。ユナは一瞬目を見開くが、カイの存在に安心して小さく身を寄せる。ヴェイルの声は穏やかだが、空気に違和感を生じさせる。誰もが本能的に、その存在に畏怖を覚える。


「ユナの状態、確認したか?」ヴェイルはモニターを指差す。カイは一歩前に出て答える。「確認済みだ。危険はない……と思う」ヴェイルの仮面の奥で微かな反応が光った気がした。——彼は情報屋なのか、それとももっと深い目的があるのか。


「彼女……特別だ」ヴェイルは低く言う。その声に、カイの背筋がぞくりとする。「特別というのは、どういう意味だ?」問いにヴェイルは答えず、ただ微かに頷く。「今はまだ、君たちに全てを伝える時ではない。だが、覚えておけ——彼女の存在は、地下層の枠を超え、システム全体に影響を及ぼす可能性を秘めている」


カイは唇を噛む。——地下層に潜む守るべき日常、そして地上に広がる未知の世界。ユナの存在はその両方に対して重大な影響を持つ。ヴェイルは意図的に、すべてを断片的にしか伝えない。情報の切り方が巧妙で、彼の本当の思惑は掴めない。


「……じゃあ、俺たちはどうすればいい?」カイの問いに、ヴェイルは一瞬沈黙した後、低く言った。「守ることだ。だが、守り方を誤れば、君自身も、彼女も——破滅する」その一言に、空気が凍る。カイは言葉の重みを痛感し、胸が締め付けられる思いがした。


ヴェイルは医療区画の影に消え、再び静寂が戻る。カイはユナを見つめ、手を強く握った。「大丈夫、俺が守る……必ず」ユナは微かに瞳を細め、安心したように息を整える。まだ記憶の大部分を失ったままの少女だが、直感的にカイを信頼している。


ナギサがモニターに視線を戻し、低く言った。「彼の言うことには真実があるわ。だが、彼の意図は測り知れない。警戒を怠らないで」カイは静かに頷き、ユナの体調を見守りながら、次の行動を考え始める。


地下層の壁に反響する微かな振動。遠くで不意に落下音が響く。外界からの監視、残党のリーパーズ、そして富裕層の影——すべてがこの狭い地下空間に潜む危険として存在する。だが、カイの決意は揺るがない。ユナの安全を第一に、次の一歩を踏み出す覚悟を固める。


静かに流れる時間の中で、地下層の灯りがユナの髪に反射する。——二重化思考波形が微かに揺れるたび、ヴェイルの言葉が脳裏をよぎる。特別な存在としてのユナ、そしてその可能性に絡む、計り知れない危険。カイは自分の手で、その未来を守るしかないと、心に決めた。

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