第2章:リーパーズ襲来
— 崩れゆく日常と、初めての喪失 —
赤い警報灯が地下層の通路を血のように染める。
端末の警告音が鋭く、耳をつんざく。訓練生たちは瞬時に防衛態勢を取る。
「リーパーズ接近! 全員、防衛ラインへ!」
トーレスの冷静な声が通路に響く。
その声には、ただの指示ではなく、生死を分ける重みがあった。
カイはロウと並び、軽量装甲スーツに身を包む。
手首の神経同期グローブが微かに振動し、脳と腕の神経を結ぶ。
手には電磁ブレード、腰には短距離用EMPガンを装着。
胸の奥で、心臓が激しく鼓動する——初めての現実の戦闘。
訓練では味わえない生と死の境界が、今ここにある。
遠方の通路から低く唸る金属音が迫る。
リーパーズ——人型機械化襲撃者が姿を現した。
赤く光るセンサー、肩や背中の動力パック、腕に装着された高周波ブレード。
一歩一歩、接近するごとに地面が微かに振動する。
「全員散開! 防衛ライン、前方を守れ!」
トーレスの指示で訓練生たちは配置につく。
EMバリアを展開する者、タレットを起動する者、前線に向かう者——
地下層の薄暗い空間に緊張が張り詰める。
カイはロウと背中を合わせ、初めての接近戦に臨む。
「カイ、右から回り込め!」
ロウの声に応じ、カイは素早く体を旋回させる。
神経同期グローブが腕の動きを補助し、刃の軌道を計算する。
リーパーズの一体が高周波ブレードを振り下ろす。
金属の軋む音と衝撃が、カイの肩を揺らす。
「ぐっ……!」
しかし、ブレードで瞬時に受け止め、反撃の刃を叩き込む。
火花が散り、金属の臭いと焦げた匂いが鼻を突く。
別のリーパーズがプラズマ射撃装置を作動させ、通路に高温の弾を放つ。
カイは瞬間的に横転し、壁に身を寄せながらEMPガンを撃つ。
放たれた電磁パルスがドローン群を直撃し、爆発音と共に空中で散った。
ロウも別の敵と格闘している。
「カイ、援護するぞ!」
鋭い刃が光り、カイの前のリーパーズに直撃。
金属が削れる音が耳を打つ。
カイの視界に、さらに別のリーパーズが飛び込む。
肩から背中にかけての動力パックが光り、ブレードを振り下ろす。
カイは体を捻り、刃を受け流し、電磁ブレードで反撃。
火花が飛び散る。
ロウの声が遠くから聞こえる。
「カイ、下がれ! そっちは危ない!」
しかし瓦礫の崩落がロウを直撃。
「ロウ!」
カイは駆け寄ろうとするが、次のリーパーズが接近し、回避するしかない。
ロウの叫びが胸に響く——
「カイ……生きろよ。いいな……!」
タレットがプラズマ弾を迎撃するも、リーパーズはナノ修復機構で即座に損傷を修復。
EMバリアも一時的に押し返され、訓練生たちは次々と後退。
煙と粉塵、金属の破片が舞う通路で、混乱が増していく。
カイは再びEMPガンを撃ち、ドローン群を撃破する。
しかし、接近するリーパーズは止まらず、接触戦は避けられない。
一体、二体——刃が交錯し、火花と焦げた匂いが地下層に充満する。
ロウの姿は瓦礫の向こうに消えた。
カイは必死に探すが、視界に入らない。
胸にぽっかり穴が空いたような喪失感——
ナギサが駆け寄り、震えるカイを支える。
「カイ……大丈夫……?」
その声がわずかな救いとなる。
トーレスは冷静に全体を観察する。
「生存の可能性はある……諦めるな」
言葉は短いが、重みがある。
カイは拳を握り、決意を固めた。
——地下層を離れ、地上へ。
——ロウを、残響の正体を、そしてヴェイルが告げた“何か”を確かめるために。
瓦礫と煙に覆われた通路。
焦げた金属の匂いが漂う中、訓練生たちは沈黙の中で恐怖と喪失感を抱える。
カイは目を閉じ、ロウの声を思い出す。
「カイ……生きろよ。いいな……!」
拳を固く握りしめ、心に誓う。
——地下層の歯車のような日常から抜け出し、未知の地上へ進む。
ネオン・スフィアの残響と、地下層の圧迫感。
二つの世界の狭間で、カイの物語は確実に動き出した。




