第19章:富裕層中枢への侵入
夜の地上都市、霧のようなネオンが浮かぶ中、カイとユナは巨大な中枢施設の影に潜んでいた。鋼鉄の壁面には赤い警告灯が点滅し、センサーの光が微かに二人を捉えようと伸びてくる。
「……ここまで来るとはな」カイは息を整えながら呟く。
「でも、ここが始まりよ」ユナの目には決意が宿っていた。
施設の外周は無数の警備ドローンが巡回している。光学センサーと熱感知装置、電脳リンクによるAI監視が複合され、どこからでも攻撃が可能な状態だ。
「センサーを迂回するルートは……ここしかない」カイは光の粒子を用いて電脳世界に接続し、仮想の監視データを解析する。ユナも呼応し、二人の脳波が同期することで通常の三倍の情報処理速度が生まれた。
「行くわよ」ユナが低く囁き、二人は影を伝って外壁の隙間から侵入する。
中枢内部は異様な静寂に包まれ、冷たい金属と光の反射だけが支配している。足音を立てれば即座に発見される、そんな緊張感が空間を張り詰めさせる。
「カイ……こっち、センサーが低い」ユナの指示で二人は壁沿いに進む。
途中、監視ドローンが一機、赤い光を放ちながら接近する。カイは光剣を仮想で生成し、電脳世界の攻撃と同期させる。ドローンは瞬時に破壊され、機械音だけが虚空に残る。
「あと少し……」ユナが呟き、電脳リンクを使って防御システムの一部をハッキング。センサーを一時的に無力化し、通路を安全にした。
だが、安堵は短かった。中枢深部への通路で、異形の影が現れる。光の中で人間の形を保ちながらも、身体の一部が機械化された“カリュプス”だ。二重人格的な思考波形が脳を直接揺さぶり、心理的な混乱を誘う。
「……来たな」カイが構えを取る。ユナも呼応し、光刃を生成する。
「私たちなら……やれる」ユナが心の中で自分に言い聞かせる。二重化思考が精神を守りつつ、攻撃精度を増幅する。
カリュプスは冷酷に微笑み、両腕を展開すると、内部に潜むレーザーや衝撃波が無数に飛び出した。
「……この速度は……!」カイは瞬時に身を翻し、ユナとの呼応で攻撃の軌道を読み切る。
光と影が交錯する。仮想の光刃と現実の機械攻撃が同時に迫る中、二人は完全呼応で動き、カリュプスの一撃を回避する。ユナの光刃が右腕を斬りつけ、カイの剣が左脚を狙う。カリュプスは機械の関節音を立てて転倒するが、すぐに再起する。
「くっ……こいつ、本物はやはり強い」カイが息を切らす。
「でも、私たちの連携は揺るがない……!」ユナが叫び、二人の呼応は最大値に達する。電脳世界内の思考波形が直感的に絡み合い、攻撃・防御・回避が瞬時に最適化される。
カリュプスは再度飛びかかり、電脳的干渉で二人の脳波を揺さぶる。しかし、ユナの解析人格がそれを読み取り、カイの行動を補助する。二人の呼応は完全に機能し、ついにカリュプスは仮想の光刃と現実の剣による同時攻撃で倒れ込む。
深く息をつき、カイはカリュプスを見下ろす。「……これで通れる」
ユナも冷静に周囲を確認し、光刃を収める。「中枢への道が見えたわ」
中枢内部は、さらに複雑な電脳・現実の防衛が組み合わさっていた。だが、カリュプスを突破したことで、心理的障壁も一つ消えた。
二人は互いにうなずき、次の段階へ進む決意を固める。
「カイ……ここから先が、本当の戦い」ユナが小さく呟く。
「ああ……俺たちは、まだまだ止まらない」カイの声に、迷いはない。
地下層と電脳世界、そして富裕層中枢——全ての布石が整い、カイとユナの決戦への道が、今まさに開かれた。




