第18章「決戦への布石」
地下層の暗い通路を進むカイとユナの前には、普段以上の緊張が漂っていた。粉塵と微かな冷気が交じり、壁に取り付けられた微弱な光源が二人の影を長く引き伸ばす。
戦闘後の余韻はまだ消えていない。だが、二人の視線はすでに次なる標的に向けられていた。
「カイ……ここから先、本当に行くのね?」ユナの声には一瞬の迷いも含まれていた。
「迷いはない……行くしかない」カイは短く答える。彼の胸中には、ロウの行方不明、リーパーズの襲撃、そして富裕層の暗部で見た事実すべてが重くのしかかっていた。
二人は再び電脳世界「ネオン・スフィア」に接続する。空間は前回の戦場よりも広大で、光と影の対比が極端に鮮やかに映える。富裕層の情報ノードが無数に浮かび、監視AIが隙なく巡回していた。
「ここを突破すれば、中枢までの道が見えてくる」カイは解析を始める。ユナも光の粒子を操り、脳内に全情報を投影し、二重人格的解析で敵の配置を瞬時に把握する。
「注意……今、監視AIの数が増えた」ユナが告げる。赤い警告光が二人の脳に直接届き、空間内に無数の仮想刃が浮かび上がる。
「なるほど……布石だな。中枢を守る前哨戦か」カイは拳を握る。二人の呼応が、戦闘準備の全てを瞬時に整える。
しかし、戦闘は単純ではなかった。情報ノードの合間から、新たな敵——“改造人間の監視者”が現れる。二重人格的な反応を持つため、予測が難しく、通常の攻撃では防御に回される。
「……やはり、普通の方法じゃ無理ね」ユナが言い、二重化思考で瞬時に攻撃パターンを解析。カイも呼応して攻撃を重ねる。
仮想の光刃が交錯し、敵は動きを読みながら防御する。だが、二人の呼応はそれを上回る。ユナが光の刃を分裂させ、同時に複数の攻撃角度を作り出す。カイはその隙を突き、敵の防御層に直接ダメージを与える。
「カイ……これでどう?」ユナが問い、さらに攻撃パターンを変化させる。
「完璧だ……俺も加える!」カイの光剣が仮想空間に激しい閃光を放ち、敵監視者は崩れ落ちる。
だが戦いの最中、二人の脳裏に別の警告が走る。富裕層の中枢は、単なる物理的防御ではなく、心理的・電脳的な罠も仕掛けていた。電脳世界内に映る幻影、過去の記憶の残滓、二重人格的解析を狂わせる情報ノイズ——それらすべてが精神を削る。
「ユナ……幻影に惑わされるな!」カイが叫ぶ。ユナは瞬時に現実と幻覚を切り分け、呼応を強化する。二重化思考が彼女の精神を守り、同時に敵を翻弄する。
「もうすぐ……中枢の手掛かりが見える」ユナの声は冷静だが、その瞳には決意が宿っていた。
「よし……行くぞ」カイは力強く頷き、二人は光の粒子を操り、残存する監視AIを撃退しながら中枢への道を切り開く。
電脳世界と地下層——二つの舞台を自在に行き来し、解析と呼応を最大限に駆使する二人。周囲の監視AI、改造監視者、情報ノード——すべてを突破し、富裕層中枢への接近を確実なものにしていく。
「カイ、ここから先は……本当の戦いになるわ」ユナが呟く。
「ああ……俺たちなら、どんな布石でも突破できる」カイも力強く応える。
地下層と電脳世界の狭間で、カイとユナの呼応はさらに強まり、富裕層中枢への決戦の序章が静かに幕を開けた。




