第16章:電脳世界の戦場
電脳世界「ネオン・スフィア」の空は、現実世界の夜空とはまるで異なる光の奔流で彩られていた。人工の星々が無数に瞬き、光の柱が虚空に刺さるように伸びる。カイとユナは、瓦礫と光の交錯する通路を進むたびに、情報の波が直接脳を刺激する感覚に身を震わせた。
「ここが……富裕層の監視領域なのか」カイは囁く。
「うん……すべてが繋がっている。無数の目と、無限の情報が私たちを監視してる」ユナの声は静かだが、その瞳は光を反射し、戦闘への決意で揺れていた。
視界の端で、赤い警告光が次々に点滅する。残留リーパーズの影が浮かび上がり、電脳空間の床に溶け込むように高速で動く。富裕層が管理するAI群も起動し、仮想の槍や光刃を構え、二人の脳波に直接挑戦状を突きつけた。
「カイ……一緒に呼応する」ユナが言い、手を軽く差し伸べる。
「ああ、今度こそ完全に連動だ」カイも応える。脳内で二人の思考波形が絡み合い、情報処理速度と身体反応が限界を超えて増幅される。
最初の攻撃は高速で飛来する光刃の嵐だった。空間を裂く閃光に、二人は瞬時に反応する。ユナの解析人格が軌道を計算し、戦闘人格が体を滑らかに動かす。カイはその呼応を感じ取り、自らの攻撃を重ねる。光の刃を避けつつ、仮想のエネルギー剣で反撃する。
「行くよ!」ユナの声と共に、二人の呼応が一つに融合し、周囲の敵AIが次々と消滅していく。残留リーパーズは機械音を立てながら突進してくるが、ユナの解析が彼らの動きを正確に読み取り、カイと連携した攻撃で瞬時に撃破される。
だが、戦場は単純ではなかった。巨大な情報ノードが光を放ち、富裕層の管理AIが次々と現れる。赤い光の光線が二人を追い、仮想の空間は不規則に変形していく。瓦礫と光の柱が瞬時に位置を変え、攻撃と防御の読み合いが熾烈を極めた。
「カイ……あのノード、中心制御だ!」ユナの声が鋭く響く。
「わかってる……ユナ、周囲を固める!」カイも脳波を集中させ、二人は呼応の精度を最大化する。
二人の意識は完全にシンクロし、瞬間的に未来の動きを予測するかのような感覚が生まれた。ユナの二重人格的解析がカイの戦術と融合し、光の柱を盾にして攻撃を分散させ、反撃のタイミングを作る。
「よし……今だ!」カイの声と共に、二人は同時に攻撃を繰り出す。ユナの指先から飛び出す光刃が情報ノードの防御シールドを破り、カイの剣が中心部を貫く。ノードが崩壊し、巨大な電脳空間の情報流が二人の目の前で暴走する。
情報の奔流の中で、ユナは自分の力に改めて驚いた。デュアルマインドが呼応することで、通常の人間なら数十秒かかる解析と反応が瞬時に行われている。攻撃、防御、回避、戦術判断——すべてが完璧に同期していた。
「カイ……これ、私たち……無敵かも」ユナの笑みは戦闘の興奮に満ちている。
「いや……無敵なんかじゃない。俺たちはまだ始まったばかりだ」カイも笑みを返すが、その目には鋭い光が宿っていた。
戦闘が終わると、電脳空間は再び静寂に包まれた。残留AIの残滓が微かに漂う中、二人は呼吸を整え、情報ノードから抽出したデータを確認する。富裕層の実験記録、電脳世界の構造、そしてカリュプスの残した痕跡——すべてが次なる戦いの鍵となる。
「次は……地上に戻るのか、それともさらに潜るのか」カイが問いかける。
「どちらでもいい……私たちなら、どこでも行ける」ユナの声には迷いがなく、覚醒した力が冷静さと自信をもたらしていた。
二人の足元に微かに光の粒子が集まり、デュアルマインドの呼応が、地下層と電脳世界をつなぐ橋となる。戦闘の興奮は収まったが、その先にはより巨大な陰謀と敵が待ち受けていることを、二人は直感していた。
ユナの覚醒、カイとの完全呼応、そして富裕層中枢への手掛かり——電脳世界の戦場は、二人にさらなる試練と成長を約束していた。




