第14章:ユナの覚醒と決意
廊下に立ち込める粉塵と焦げた金属の匂いの中で、カイとユナは息を整えていた。二人の体には戦闘の痕が残り、擦り傷や裂傷が光を受けて痛々しく反射する。カリュプスの倒れた装甲の残骸が、まだ微かに光を帯び、彼女の二重人格的残響を空気に残していた。
ユナは手を見つめ、まだ微かに震えている自分の指先を感じた。戦闘中、覚醒したデュアルマインドの力が自身の限界を押し広げ、脳と体がまるで一体化する感覚——恐怖と興奮が入り混じった混沌の中で、彼女は初めて「自分の力」を真に理解した。
「……カイ……私、今……」
言葉が途切れる。胸の内でまだ脈打つ力が、意識の奥で波紋のように広がる。ユナの脳は二重化され、戦闘人格と解析人格が完全に共鳴する瞬間を迎えていた。体は自分の意思より早く動き、瞬間的に周囲の環境を解析する。瓦礫の配置、照明の反射、微かな音の変化まで、すべてが自分の手の内にあるかのようだった。
「ユナ……落ち着け。呼吸を合わせろ」カイが穏やかに声をかける。
その声に応え、ユナは深く息を吸い、カイの脳波に再び呼応を合わせた。二人の呼応は、戦闘中よりもさらに深く、より精密に互いを補完する。まるで二人の意識が一つの流れとして溶け合うようだった。
「わかった……できる……!」ユナは震える声で言った。
カイは微かに微笑む。二人の目が合い、戦闘で得た信頼と呼応の感覚が、今まさに確信となる。
周囲にはまだ危険が潜む。施設内の監視ドローンは完全に破壊されてはいなかったし、カリュプスの残留電脳信号が微かに残っている。ユナはそれを感じ取り、目を閉じて脳波を集中させる。信号の残滓を自身のデュアルマインド能力で取り込み、解析人格が瞬時にその情報を整理する。
「……これが……私の力……!」ユナの心の中で光が弾ける。脳波の二重化が完全に制御下に置かれ、彼女の体と意識が呼応し始めた瞬間、戦闘中の恐怖が逆に冷静さへと変わる。
カイもまた、その力を肌で感じる。ユナの呼応は、戦闘中の極限を超え、彼自身の脳波と完全にリンクする。攻撃、回避、戦術解析──すべてが瞬間的に交差し、二人はまるで一人の意識を持った戦士のように機能する。
「私……私、やる!」ユナが前に踏み出す。
「うん……俺も!」カイも体を前傾させ、呼応を強める。二人の足元の瓦礫が、振動と共に微かに崩れ、粉塵が光の中に舞う。
その瞬間、カリュプスが残した残滓の一部、自己修復機能を持つ小型ドローンが目覚めた。赤い光が点滅し、周囲に飛び出す。だが、ユナは躊躇せず、その飛翔するドローンを脳波で解析し、ブレードと連携した呼応攻撃で次々と撃破していく。
「すごい……!」カイは感嘆の声を漏らす。ユナの成長と覚醒を、目の前で実感する。彼女の二重化された思考波形は、まるで二つの意識が一つに融合しているかのようで、デュアルマインドの本質を体現していた。
戦闘が終わると、施設内は静寂を取り戻す。二人は深く息をつき、互いの目を見つめ合った。ユナの手はもう震えていない。全身から余韻として微細な光が消え、覚醒した力が自分の中で確実に根付いたことを感じる。
「カイ……私、もっと強くなる。絶対に……私たちが、止めなきゃ」ユナの声には迷いはなかった。
「ああ、俺もだ……一緒に行く」カイは力強く頷き、二人の手が再び固く握られる。
カリュプス戦の余波は、二人に深い刻印を残した。覚醒したユナの力、呼応の深化、そして互いに信頼し合う意思──それらが、これから待ち受ける富裕層の陰謀、電脳世界の闇、そして更なる戦いへの確かな礎となった。
廊下の奥から、微かな電子音がまだ響く。次なる危険の予兆だ。だが、二人はもう恐れはしない。互いの呼応があれば、どんな敵も凌ぎ、未来を切り開けることを知ったのだから。
ユナの秘密、デュアルマインドの真実、そしてカイの運命——すべてが、静かに、しかし確実に動き始めていた。




