第12章:能力の極限
富裕層施設の奥深く、崩れかけた配管と瓦礫が積まれた廊下を二人は進む。空気は金属の匂いと埃で重い。カイはユナの手を握り、互いの脳波を微かに同期させた。
「……ここから先、何が待っているかわからない」ユナの声は小さいが決意が宿る。
「わかってる。でも、俺たちなら乗り越えられる」カイが答える。互いの目には迷いはない。
廊下の奥から、低く機械音が響き、影が揺れる。敵──強化リーパーズが姿を現す。全身を黒銀の装甲で覆い、関節には鋭いカッターが付いている。肩や背中には自動追尾型の小型ドローンを複数搭載し、眼部には光学センサーが赤く光る。爪のような先端が振り下ろされるたび、空気を切る音が響いた。
「カイ……やるしかない」ユナが低く言い、脳内で敵の動作パターンを瞬時に解析する。
「呼応するぞ!」カイの声とともに二人の脳波が完全に同期。
ユナの視界には敵の関節構造、装甲の薄い箇所、重心の移動範囲が浮かび、カイもその軌道を瞬時に読み取る。
最初の一体が突進してくる。装甲は厚く、膝関節から放たれる小型ブレードが廊下を削るように振り下ろされる。ユナは体を翻し、瓦礫を盾にして避けつつ、鋭い蹴りで装甲の隙間を破る。
「……すごい……私の力……!」ユナの声は震え、体が自然に動き、反応速度が常人の数倍に達する。
カイはEMPブレードで瞬時に関節を破壊し、金属が裂ける音が廊下に響いた。
二体目が背後から飛び出す。肩のドローンがレーザーを放ち、空間を光の線で裂く。ユナは直感で避け、カイはドローンを掴んで振り飛ばす。破片が壁に激突し、火花が散る。
三体目は四肢を変形させ、爪を拡張して襲いかかる。全身の装甲が光を反射し、まるで動く鉄の悪魔のようだ。
「カイ……これが、デュアルマインドの本当の力!」ユナが叫ぶ。脳波が極限まで高まり、意識の二重化が最大値に達する。
「理解してる。俺たち、ここから先は無敵だ」カイの声が力強く響く。
二人は敵の攻撃を完璧に先読みし、瞬時に位置を変え、致命的な一撃を連続で叩き込む。リーパーズは反応が追いつかず、装甲が次々と裂け、破壊された関節から火花と蒸気が吹き出す。廊下に響く金属の裂ける音、瓦礫に叩きつけられる金属片、機械の悲鳴——全てが二人の呼応によって支配されていた。
戦闘中、ユナの脳裏に過去の記憶がフラッシュする。培養槽、実験室、監視する目——恐怖と怒り、そして覚醒。脳波の二重化は極限状態に達し、彼女の体も心も、人間の枠を超えた鋭敏さを帯びる。
「カイ……私、もう怖くない!」ユナが叫び、前方に飛び出す。
カイも瞬時に呼応し、二人で敵を挟み撃ちにする。攻撃は精密で、瞬時にリーパーズの装甲を切り裂き、瓦礫の影に打ち倒す。
戦闘が終わると廊下には静寂が戻った。粉塵が舞い、金属の匂いが残る。二人は息を整え、互いの呼吸を確認する。
「……やっぱり、すごい力だ」ユナの声には驚きと興奮が混ざる。
「そうだ。これが俺たちの力。覚醒したってことだ」カイは微笑む。
だが、極限まで呼応した能力は同時に精神と肉体への負荷を増大させる。ユナは手を握りしめ、カイを見上げる。
「……私、まだ使えるかな……?」
「大丈夫だ。俺たちなら、この力を制御できる」
廊下の奥から微かな電子音が響く。富裕層システムの警報か、それとも別の追跡者か——未知の危険はすぐ近くに迫っている。
二人は再び刃を握り、互いの呼吸と脳波を呼応させる。能力の極限を知った者たちは、恐怖ではなく確信を胸に、次の戦いへ歩を進めるのだった。




