第10章:地下層との連携
地上での戦闘から地下層へと戻ったカイとユナ。昇降管を降りると、薄暗い地下空間に低い機械音が響く。瓦礫や管線、点滅する赤い警告灯——地下層はいつも通りの冷たい静寂に包まれていたが、戦闘後の緊張が微妙に残る空気が二人を取り囲む。
「無事か、二人とも」トーレスの低い声が空間に響く。隊長らしい威圧感と同時に、父親のような優しさが含まれている。
カイは深く息を吐き、「ああ、大丈夫だ。ユナも無事だ」
ユナは肩で息をしながら小さく頷く。「……はい……でも、怖かった……」
ナギサがすぐそばに現れ、ユナの脈拍と身体負荷をモニタリングする。「呼吸が速すぎるわ。戦闘後は必ず深呼吸して、脳波の安定を戻して」
ユナは頷きつつ、戦闘中に覚醒した自分の力を思い返す。瓦礫越しに敵を瞬時に排除できた感覚——それは人間離れしていた。しかし、ナギサの目には、その力が同時に危険性として映っていた。
「ユナ、君の能力は本当に特異だ」ナギサは静かに言う。「ただ、使いすぎると脳や体に負荷がかかる。デュアルマインドの二重化は便利だが、制御できなければ暴走する」
ユナは黙って聞き、肩越しにカイを見た。彼は微かに微笑み、「大丈夫だ、俺たちなら呼応できる」と励ます。
地下層の仲間たちも集まり、戦果の報告と状況確認が始まる。瓦礫や配管の隙間を抜け、残党の索敵情報、追跡部隊の動向、電脳世界の異常ログ——すべてが共有され、次の行動の計画が立てられた。
「ヴェイルから情報が届いている」トーレスが告げると、暗い角から無表情のヴェイルが姿を現す。仮面のような顔は淡々としているが、空気には違和感と不穏が漂う。「ユナの異常値は確認済みだ。だが、これをどう扱うかは君たち次第」
カイは鋭くヴェイルを見据える。「どういう意味だ? 危険だってことか?」
ヴェイルの声は冷静だが、含みがある。「危険だ。しかし同時に、未来を変える鍵でもある。君たちはそれを使いこなせるのか——試されている」
ユナは小さく息を吸い、脳内に戦闘中の感覚を呼び起こす。あの瞬間、カイと完全に呼応した力。再び敵が現れたとしても、あの感覚を維持できれば生き延びられる。だが、それには精神と身体の安定が必須だった。
ナギサがカイとユナを見比べ、「地上での戦闘は二人にとって大きな経験になったわ。これからは訓練も兼ねて、呼応と制御の精度を高める必要がある」
トーレスが厳しい目で続ける。「地下層の安全だけでなく、地上への再挑戦も視野に入れる。君たちはここに留まるだけでは終われない」
カイは小さく頷き、ユナの手を握る。「わかってる。俺たち、次はもっと強くなる」
ユナも握り返し、深呼吸を整える。「うん……怖いけど、できる」
廊下の向こうから、低い機械音とともに瓦礫の振動が伝わる。追跡部隊の一部か、それともリーパーズの残党か——いずれにせよ、危険はすぐそばに迫っている。
だが、二人の呼応は以前よりも確実だった。脳波が同期し、未来予測と動作解析が無意識のうちに行われる。地下層の仲間たちも、それを見守り、信頼を置いている。
「これで、次の作戦に備えられるな」トーレスが呟く。
「うん……私、もっと強くなる」ユナが小さく答え、二人は瓦礫の影に立つ。
地下層の薄暗い光の中で、ユナの覚醒とカイとの呼応、仲間たちの信頼——すべてが次の戦いの布石となる。
ヴェイルは静かに姿を消し、残された二人と仲間たちは、新たな決意を胸に次の行動へと歩を進めた。




