表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊少女エリーゼ  作者: スズシロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/15

第四話

 私の名前はエリーゼ。

 正式な名称は、エリザベート・ルイーゼ・フォン・ハルデンブルグ。

 このアストライア星に二つある巨大大陸、ベネディクタ・テラ大陸の東半分を統治する神聖バハムート帝国にある、ハルデンブルグ伯爵領にある地方都市デレリンに住む女の子だ。現在、10歳っていうことになっている。

 そんなこと言ったって、何のことか分かる?

 分からないよねえ……。


 とりあえずここは、地球によく似た、地球とは違う時空、いわゆる異世界なのね。それも剣と魔法の異世界。

 種族だけでも、人間そっくりの常人オルディナだけではなく、五種族もある。

 地を司る地獣人モフ。

 水を司る青龍人ドラコ。

 火を司る紅魔人ブレス。

 風を司る風精人ウィンディ。

 空を司る空翼人エアリー。


 その中でも、風精人ウィンディはこの神聖バハムート帝国においては過半数の人口を占め、貴族階級となっている。私はその貴族の女の子に転生したことになるらしい。


 転生。そう、あのネット小説なんかで有名な異世界転生。

 私は現代日本の女子中学生だったのだが、何らかの理由があって、事故で、このMMOを模した世界”ないとなう!”の中に転生した……のだと思う。

 不幸にして、ダ女神にも神のような意志にも遭遇していない。だから何の説明も受けていないのだ。それで、私は困ってしまって泣いていた。凄く不安で、仕方なかったのだ。


 と、言うのも。

 私が転生する前、それも志望する時の事情が事情であったため、いきなりキラキラのゲーム世界に転生したとか言われても、どうしていいのか分からないのだ。


 どういうことかというと、順を追って説明したいと思う。

 ちなみに、私の名前は、「エリーゼ」でも「ハルデンブルグ」でもない。最早誰も、私を本名では呼んでくれないけれど、言っておこう。

 私の本名は”友原のゆり”。日本人だ。

 そして私が転生する前は、友原製薬という、日本ではCMをテレビで流せる程度に有名な製薬会社の、3番目の子どもだった。




 友原製薬は元々そこそこ名の知れた会社だったが、三代目の社長だった両親が気合いを入れて大きくしたという側面が大きいと、子どもの私は思う。

 父は社長。母はその秘書をしていた。

 珍しい話らしいのだが、私にとっては、両親なので普通のことだった。父も母も必死に働き、薬を販売することで社会に貢献していると自負していた。良い薬を開発することにも熱心だった。

 その両親に影響されて、兄と姉は進路を決定していたように思う。私と直接、そういう話をしたことはないけれど。


 私には十歳年上の兄と、七歳年上の姉がいた。

 兄は優秀な成績で都内の大学を卒業後、同業他社に就職し、そこで製薬会社の仕事を基本から習っていた。三十歳になる前には友原製薬に戻り、父の跡継ぎのコースをたどるはずだった。

 姉は、私が中学二年生の時に21歳で、都内の薬科大学で才媛と呼ばれていた。将来は薬剤師か、薬学の研究者になって両親を助けるつもりでいた。


 私はその出来のいい兄や姉から大分年が離れていたし、末っ子だったためか、割合放任されていた。両親はいつも仕事に夢中で、夜遅くに疲れて帰ってきたし、休みの日でも接待とかで、出かけてばかりいた。私はそれを不満に思った事はなかった。

 そんな忙しい両親でも、誕生日などの家族行事は絶対忘れることはなかったし、土曜の夜には必ず家族そろって食事をする、などのルールのある家だったからだと思う。

 家族そろっての食事会は、外食のことと、姉の手作り料理のことが半々だった。


 姉。

 私にとって一番身近な家族は、七歳年上の姉だった。

 私は彼女に、料理や家事の基本を教わった。

 自分からすすんでというわけではないけれど。中学校で部活の陸上を終えて帰ってくると、おなかがとてもすいている。

 既に帰宅していた姉に飛びついていって、「おねえちゃん、ごはん!」とねだるのが常だった。

 すると姉は困ったように笑い、「も~、のゆりは、食いしん坊だなあ。ほら、手伝いなさい! 手伝ってくれれば、すぐにご飯できるよ」と必ず答えてくれたのだ。

 私は早くご飯が食べたくて、テキパキ働く姉にまとわりついて料理を手伝った。


 そのほかにも、姉は子どもの時から、生活の基本的な事を教えてくれた人だった。小学校低学年の時に、私が靴の紐を結べない事に気がついたのも姉だった。紐の結び方を教えただけではなく、ひょっとして他にできない事があるんじゃないかと気を配り、色々点検して教えてくれた。

 家事は本来、週に一回家に業者を呼んでしてもらっていたのだが、この件があったために姉は私に教えるために家事に携わるようにしていたらしい。


 中学ぐらいになると、共通の話題も増え、姉は私と少女向けの小説や漫画を貸し借りしたりもしたし、日曜に一緒にショッピングに出かけたりもした。こんなふうに思い返すと、姉は私の母代わりのようだったかもしれない--。私は他の家庭と深く関わったことはないので、わからないんだけど。


 兄は、その姉と違って随分、オタク臭い人だった。オタクってどういう人種か、知ってる訳でもないんだけど……。

 兄といえば、私にとっては、”ないとなう!”と言う同人漫画や同人ゲームの一連と、その原作である日本初のMMO”Ultimate Fantasy”である。兄はそのUltimate Fantasy、通称UFの重度のファンだった。同人漫画や同人ゲームを夏と冬のお祭りに参加して買いあさる程度に。

 兄は、小学校ぐらいからテレビゲームにはまり、特にビッグタイトルのUFは初代からずっとやりこんでいたそうだ。そのMMOというので、どうしてもアカウントが欲しいと高校時代に両親にねだったところ、「子どもがネットをやるのは反対」という理由で、ちっとも承諾してもらえなかった。

 兄は粘り強く話し合いを重ね、「次の高校の期末テストで全科目90点以上を取ったら、UFのアカウントを買ってやってもよい」と父が無茶ぶりするところまで頑張った。

 更に、元は平均点よりちょっとマシな程度の成績だったそうだが、それもこれもUFのためと、本当に全科目90点以上取った答案を父に叩きつけたのだと言う。ドヤ顔で。

 自分から言い出した事なので、父も覆す事はできず、そういうわけで兄は高校時代から、UFのサービス開始と同時にアカウントを取って、学業と両立しながらプレイをしていたらしい。


 私は何しろ、そのとき5歳か6歳であるから、その頃の記憶は薄い。何やら父が、悔しそうに兄を褒め称えて、母が珍しく姉に代わってご馳走を作ってくれた記憶があるぐらいだ……。母は誇らしそうだった。


 そういう兄であるから、金曜の夜は明け方まで本気でゲーム。土曜もゲーム。日曜もゲーム。ゲームじゃないなら勉強か仕事のおさらい。

 平日は両親同様、仕事に熱中していて構ってくれない。

 だが、私は家に兄がいるならもっと構って欲しかった。それで、土日の朝は、寝ている兄のベッドの上にダイブして脇の下をくすぐってみたり、寝ている兄のベッドに色々イタズラして叩き起こした。

 兄は勿論、寝ているところを起こされて怒ったが、大抵は、PCをつけてゲームをプレイしているところを見せてくれたり、有名なプレイ動画やミッション(?)シナリオの動画を見せてくれたりした。


 私は、巨大なモンスターを、兄のキャラクターが、単身突っ込んでいって華麗に勝つところを見るのが好きだった。兄は実際強い方に入るのだと思う。少なくとも私は、兄はUFでは最強のプレーヤーの一人だと信じ込んでいた。

 兄の方も、私が「お兄ちゃん、強いね! 今日もまた勝ったね!」と単純に喜ぶと、非常に喜んでくれた。そうして、私にもっとシナリオが理解できると面白いよと言ってくれたので、私もUFをしたいって両親に言った。

 だが、無理だった。

 私は何しろそのとき、中学一年か二年ぐらいで、基本は子どもがネットをやるなという方針の親が、許してはくれなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ