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幽霊少女エリーゼ  作者: スズシロ
祭の準備

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17/25

第十六話 人違い?

一人称・エリーゼ視点




 アッシュが濡れた髪を拭き終えて、きちんと身だしなみを整え、お父様のところへ行く準備をした。


 私はほっとした。ずぶ濡れの状態で、お父様の執務室へ行くのは流石に気が引けるから。




 それにしても--。


 アッシュのやんちゃ坊主らしい不敵な笑みを見せる顔を見つめて、私は心の疑問を打ち消した。




 アッシュが、”ないとなう! ”の主人公アスランってことは……ないよね?


 アスランの故郷なんかは、同人誌の現実の人間に対する配慮ってことで、細かい設定は作られていない。最初から、”ないとなう! ”のアスランは大人の冒険者で、一人前のキャラクターとして動かされている。それで、大人だから大人向けの事をしてもよいという訳で、結構派手な恋愛経験というか、……あれはなんていうんだ、性愛……?? みたいなネタも非常に多い。




 お兄ちゃんは、私にUltimateFantasyの冒険ミッションやクエストを知って欲しかったので、原作沿いの同人誌を色々貸してくれた。そのときに、ちゃんと選別して濃い同人誌は私に渡さないように気をつけたらしいが、それでもやっぱり大人のネタは入っていた。それで私はしばらく怯えて泣いていたんだけど……。


 泣いていた訳なんですが。




 その、女性に、とっても男っぽくて大人っぽい行為の数々に及ぶ、超モテメンのアスランが、出会い頭に私の頭をごっちんってやった、アッシュ??




 正直、男性向け同人誌の大人なキラキラでフワフワ~なところって、女子中学生だった私には、なんだかとっても……大人っぽくてエグい……ってことしか分からなかったんだけど。絵は綺麗で魅力的だったけどね。


 ちょっとエグすぎて、私が読めたのせいぜい、zennzaiのかいたソフトタッチのBLぐらいだったんだけど……。アスランのBLの相手って、zennzaiの場合は、忍者の甲きのえとか竜騎士のリュウとか色々いたけど……。それはほとんど、お兄ちゃんの配慮で読ませてもらえなかった。私が知っているのはアンソロの1~2冊だけだ。




 その、強引でもソフトでも、大人っぽくてエグくて男っぽい事をするようになるアスランの少年バージョンが、アッシュってことはないよね? って今もちょっと思ったのだった。


 


 確かにアッシュの本名はアスラン・カッツだけど、zennzaiのアスランの本名は、武門の貴族の出で、「アスラン・フォン・ジグマリンゲン」って言う長い名前のはずで、実家は結構な金持ちのはずなんだけど……。


 超名門貴族で武神レベルの武門の出のアスランが、なんでヴィスター村の子どもでガキ大将やってんの?


 名前がかぶってるけど、……あとまあ、風精人ウィンディの美形ってところもあってるけれど……身分というか出身があまりに違いすぎるでしょ?


 でもこれ、私がzennzaiの”ないとなう! ”を勘違いしているだけなのかな?


 確かに、”ないとなう! ”は大好きだったけど、お兄ちゃんが、あんまりにも性愛がハードな同人誌は弾いて私に渡していたのは知っている。


 それで、私の知識は結構飛び飛びなんだけど、UltimateFantasyの重要なミッションなんかは、ないとなう! を読めば分かるはず……ということにはなっている。




 アッシュが、ないとなう! の主人公のアスランだったんだとしたら……あのかっこよくって男前で、王道主人公のアスランがアッシュだとしたら……。




 ごっちんだけじゃなくって。


 最近、一緒に遊んでみて分かったんだけど。


 女子の座る椅子にカエルを仕掛けたり、村のお金持ちの牧場の厩舎に手製の爆竹仕掛けたり、村の星命灯の光を一斉に落としたり(夜中に村中の街灯のブレーカー落としたようなもの)、元が農民だけに動物虐待寸前のいろいろやる、他にもいろいろ、いろいろヤラカシ放題の、目の前のずぶ濡れのガキ大将が




 世界を救済する英雄になるんだ……そっかぁあ……。




 いや、一緒に遊ぶと楽しい事は分かるんだけど、……なんかちょっと……イメージ狂うよね。


 多分、アッシュはアッシュで、アスラン違いだと思うんだけど。




 もしも、zennzaiだけでなく、数あるムックや同人誌で称えられる世界の英雄アスランがアッシュだったら、私なんだかいたたまれない。




「なんだよ、俺の顔に何かついているか?」


 アッシュは、私の眼差しを感じてそう言った。


「ううん。……ねえ、精霊祭にはどんな悪戯やるの?」


 今までの彼のことを考えれば、精霊祭に大人しくしているはずがない。きっと大仕掛けの、大人の頭を悩ませるような、凄い悪戯やりたくて、それで頑張ってるんだと思う……けど。


「悪戯じゃねーよ、冒険!」


 アッシュは怒った。なんか、悪戯と冒険は、全然違うものらしいのだ。


「冒険。精霊祭に冒険するんでしょ?」


「そりゃ当然、するさ」


 アッシュはけろっとしたものだった。


「今、クルトと計画立てているんだ。当日は、エリーゼも協力しろよ!」


「うん。いいわよ」


 世界救済の英雄ではないだろうけど、頭ごっちんってされたけど、アッシュはいいやつだ。一緒に遊ぶと楽しいし、最初のうちは、将来、エロ同人誌みたいなことになるんじゃないかと不安だったけど、全然そんなそぶりは見られない。表で、ケイドロや缶蹴りやメンコやベーゴマ(アストライア星にもあった)をして遊んでいる分には、そういうセクハラや変態な事は考えないですんだ。


 クルトとミラの事もあった。ふたりとも、凄く、お互いを意識して思いやってる事は分かるけど、ぎこちないところのある関係で、子どもとしては普通と思えた。それが将来ねえ、エロ同人誌のような、ピッピッピな事になる……かもしれないけれど、今は想像がつかない。


 毎日、一緒に着せ替え人形や手遊び歌して遊んでいる、黒髪ロングで純情な女の子が、ピッピッピ?




 もしかして自分で、セクハラ変態展開から現実逃避したくて、アッシュをアスランと認めたくないだけかもしれないけれど、実際、ベッドの中でエロエロ無双するような大人の男と、女子のカバンにカエル仕掛けてゲラゲラ笑ってる悪戯小僧が同一人物って、私には思えないよ。




「また、星命灯いじったりするの? 精霊祭は夜中にあるし。あれ、危ないよ。夜道を一人で帰る事になる人だっているかもしれないんだから、星命灯を消すのはやめとこうよ」


「それは、しない。実際、フランツのかーちゃんが、この間の灯りを消した奴で、帰りに野良道から畑に落っこちたんだ。それでフランツが随分心配していたからな」


 屈託ない笑顔で、そんなことを手柄のように言うアッシュ。


 やっぱりね。これが、あの男臭い笑みで美女を籠絡しまくるアスランになるなんて思えないわ。


 まあ、でも、フランツのママの事を心配して配慮するのは偉いと思うので、この路線ですすめよう。村の人が危険にさらされるような冒険をするのは、よくないわ。


 アッシュの相棒で、作戦参謀は、クルトって決まっているけれど、最近、アッシュはよく私に意見や提案を求める。多分、同い年で、私が貴族の本を何冊か読んでいるからだ。そんなガラじゃないけれど、知恵袋と思われているみたい。




「星命灯を全部消すのはないけれど、あれ結構邪魔くさいんだよな……」


「どうして? 街灯がなければ、夜は真っ暗だよ」


「精霊祭で、魔法の風船を飛ばすだろ。それが、街灯で光がよく見えなくなるんだ。魔素の光が綺麗に見えにくくなる。それよりは、周りが真っ暗な方がいい」


「なるほど……」


 光害? そういいたいのかな。


「クルトと考えているんだけどな。精霊祭は、湖のほとりで行われる事になっている。その湖の近所だけ、星命灯消して、村へ帰る道の分の星命灯だけつけておくことは出来ないかって。そうすれば、魔法の風船が星空に浮かび上がるところは綺麗に見えるし、夜の帰り道も安全だ。とーちゃんは、そういうこと考えつかないんだよな」


 村長の息子として忸怩たるものがある、といわんばかりのアッシュ。


 村長のカールさんは、私はまだ会った事ないんだけど、既に二百五十歳を超えた老人……そりゃ、昔の人で頭固いらしく、息子のアッシュとはしょっちゅう、仲良く喧嘩しているらしい。


 風精人ウィンディの寿命は三百歳前後が普通なのだが、二百五十歳を超えているとなると、現代日本の常識で言うのなら、七十~八十歳ぐらいになると思う。




 うん。風精人ウィンディは、大体、二十歳ぐらいまでは、常人オルディナや地球人のように年を取る。その後、ゆっくりと成長(老化)していき、百五十歳ぐらいの年齢までは、女性は出産可能。出産は命がけでしんどいらしいけど。女性が閉経するのが、大体、百七十歳から二百歳ぐらい。男性も、二百歳ぐらいまでは生殖可能なんだって。


 で、二百五十歳ぐらいで七~八十代の風貌になる。


 なんでそういう体の仕組みになっているかは、私、風精人ウィンディだけどよく分からない。他の地獣人モフや青龍人ドラコも、それぞれ、種族によって事情が違うらしい。




「その提案、お父様にもするの?」


「……あ、そうか。伯爵に話すっていう手があるか」


 あ。どうやら、無断で、勝手に村の灯りを落として騒ぎを起こす気でいたな。


 でも、今、お父様に話してイベントに協力してもらうって気がついたみたい。


 カール村長、おじいさんで、すっごく頑固で伝統とか重んじるタイプなんだろうか。息子のアッシュが、そういう話をしづらいって思ってるみたいだけど。


「俺、精霊祭にやりたいことたくさんあるんだ。やっと十歳になって、参加可能になったんだから。だけど、俺だけが楽しいんじゃダメ。みんなで祭に参加して、みんなで魔素の火をともしたい」


「うん、そうだね」


 私も十歳だけど、やっぱり、祭に参加するなら、エマやミラと一緒がいい。八歳の彼女達には参加資格がない。それは、どうだろう。エマなんか、私よりもずっとしっかりしてるぐらいなのに。ミラは、猫のミャウと会いたくて仕方ないのに。


「俺の考えていること、伯爵に話してみる。エリーゼ、お前もついてこいよ」


「分かった」


……というよりも、私がお父様の執務室に、アッシュを案内するんだけどな。だけど、アッシュって大将だから、どうしてもそういう言い方するんだよねー。


 そういうわけで、私はアッシュを伴って、二階にあるお父様の執務室に向かった。


 私の部屋からいきなり村の子どもが出てきたので侍女達はびっくりしていたけれど、私は気にしなかった。




 雨の日のせいか来客とかはいなかったらしく、お父様はあっさり、私とアッシュを執務室に入れてくれた。


「オッサン!」


 アッシュは、書類から顔をあげたお父様の方に一気に歩いて行った。


「オッサン、精霊祭の事なんだけど……」


「アスラン。挨拶ぐらいしなさい。お前、大人同士の礼の仕方とか、見てないのか?」


 お父様もざっくばらんにそんなことを言っている。アッシュはきょとんとしたが、大人同士の礼の仕方と言われて、何かくすぐられたような顔になった。


 お父様は、室内に入ってくる際の、常識に則った礼の仕方や挨拶の仕方をアッシュに教え始めた。アッシュは嫌がるかと思ったら、割に素直に話を聞いて、お父様の仕草の真似をし始めた。……え、これってアッシュなの?




 まあ、精霊祭までに、アッシュも貴族にも通じる挨拶の仕方、覚えた方がいいかもね。




 精霊祭。それは、年に二回、個人の魂が、霊界から人間界に訪れて、2~3日とどまって遊んでいくという、帝国全土にあるお祭りだ。


 貴族学院の教科書に載っている事を信じるなら、神聖バハムート帝国だけではなく、隣国や遠い別の大陸にまで、似たようなお祭りはあるらしい。


 要するに、日本だけではなく、中国とか韓国にもあるお盆かお彼岸って事になると思う。


 その個人の魂の行き帰りの乗り物になるっていうのが、魔法の風船だ。


 私は見た事がないんだけれど、アッシュの言った通り、魔法の魔素の火を、半透明の魔法紙を折りたたんで作った風船の中に入れて、夜空に向けて飛ばすのだ。それに乗って、故人や、親しいペットとかの魂が帰ってくる。そして、霊界に戻る時も、同じように魔法の風船に乗って帰って行くのだ。


 えーと、お盆の迎え火と送り火みたいなもの?


 で、精霊祭の魔法の風船を飛ばすのは、どこの地域でも、一箇所に集まって一斉にやる行事になっていて、その日は、飲めや歌えの大騒ぎになると大体決まっているそうだ。盆踊り……なのかなあ……、どこの地域でも若者を中心に、男女が風船を飛ばした後にペアになって踊り狂って、そこでカップル成立っていうこともよくあるらしい。


 ご馳走も出るし、音楽も出る。田舎では年に二回の、爆発的なお祭りになることが多い、そうだ。


 ご先祖様も、一緒に飲めや歌えで騒ぐ、ということになっている。それが、一日目。


 二日目は朝から、お墓参りって言うしきたりになっているそうだ。お墓参りに行く時は、一番いい服を着て綺麗にしていくんだって。そしてミトラ教会に顔出ししてお祈りして、大人の細かい手順がいっぱいあるそうだ。


 私はまだ子どもだったし、記憶を取り戻して以来は病気ってことになっていたので、まだ一回も参加したことがない。


 だから聞いた事しかないけど、楽しいんだろうなとは思っていた。




 それで、アッシュはもっと楽しくしようと思って、色々な考えを持っていたみたいなんだよね。


 精霊祭まであと一週間しかないけど、それぐらいの間でも出来そうな事はたくさんあるみたい。




 お父様に大人の挨拶の仕方を教わった後、アッシュはその自分なりのプランを次々に矢継ぎ早にお父様に話した。


 お父様は、面白そうな顔でアッシュの話を聞いていたが、色々な角度から突いたり質問したり、ダメだししたりしていた。


 アッシュの考えの2/3ぐらいは、お父様の言う「現実」で玉砕してしまった……。




 だけど、お父様はこう言った。


「既に村長には使いをやっているが、村長は子どもの件にはいい顔をしていないようだな。仕方ない、俺が直接行って、カールと交渉してやろう。それでダメだったら、文句を言うなよ?」


「文句は言わないけど、意見は言う」


 アッシュは即座にそう答えた。


「俺は大人の挨拶の仕方を覚えたんだから、言いたい事を言わせてもらうぞ、伯爵」


「分かった。……一度言い出したんだから、その言葉忘れるなよ?」


 お父様はくっくっと可笑しそうに笑いながらそう言って、アッシュは少し怒ったような顔をしていた。だけど私は、ほっとしたし安心していた。アッシュはお父様を怒らせなかったし、お父様はアッシュのために動いてくださるようだ。


 きっと、うまくいくだろう。


 生まれて初めての精霊祭、どんなふうになるのかな!?

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