5話
「一体どんな大事が起きたのかしら、こんな慌てて飛び込んでくるなんて?」
走ってきたせいで息が喉元まで詰まっていた衛兵は、しばらく息を整えてから言った。
「調査のために一時拘束していた身元不明の酒乱が逃げ出しました!」
「はあ…」
ロウェナは報告を聞いて頭痛がするのか、右手を額に当てた。
少し落ち着いた後、彼女は少し苛立った声で言った。
「勤務態度が悪い者を衛兵に配置したのかしら?」
「神に誓って、絶対にそんなことはありません!」
不服そうな表情を浮かべた衛兵は、わざと大げさな口調で答えた。
「奥様のご命令が下った直後、優秀で真面目な者たちを中心に厳重に取り締まりました。以前のような失態はもうないと申し上げます!」
「なら、なぜ…」
独り言をつぶやいていたロウェナは、何かに気づいたような表情を浮かべた。
「まさか…ソードマスターでなければいいけど…」
衛兵には聞こえなかったかもしれないが、俺にははっきり聞き取れた。
「…」
-まさか、本当にソードマスターが現れたのか?-
ソードマスターといえば、流派によって異なるが、たいていは武技の達人で、体術に優れている。
そして全身にマナ回路を構築し、呼吸するようにマナソードやそれ以上のオーラブレイドを発現できる人間兵器のような存在だ。
ロウェナも根拠なくそんなことを言うはずがない。
-普通の衛兵じゃそんな超人を相手にするのはほぼ不可能だな。任務とはいえ、相手が悪すぎる。-
研究が遅れている中、ひょっとすると有能な存在が現れたのだから、俺にとってはいいことかもしれないと少しテンションが上がった。
-人生が思い通りスムーズに進むわけないよな?-
前世でもそうだったから苦労したんだ、と思いながら考えにふけっていると、ロウェナの声が再び響いた。
「すぐに巡回隊を増員して、くまなく捜索しなさい!」
「非番の者もですか?」
「子供の遊びをしてるんじゃないんだから、当然でしょう!」
「し、失礼しました、ロウェナ様!」
「城門の検問も強化して、絶対に見逃さないで!」
「了解しました!」
一陣の嵐が過ぎ去り、気が抜けたロウェナはため息をつきながら椅子の背もたれにだらりと寄りかかった。
「これからどうすべきかわかるよね、デミアン? もっと騒がしくなる前に、早く部屋に戻りなさい。」
「わかったよ、母上。」
執務室を出る途中、実父のフェリックスとばったり会った。
「デミアン、お前の母上は中にいるか?」
「うん。」
「そうか!」
フェリックスは鼻歌を歌いながら執務室に入っていった。
「美しく愛らしい我が妻ロウェナ、今日も昨日より美しいぞ!」
-モミモミ-
フェリックスは頭痛がするほど仕事に追われるロウェナに近づき、疲れを癒すという名目で肩を揉んだ。
だが、マッサージのふりをした行為はすぐにねっとりした手つきに変わり、当初の目的のために動いた。
「フェリックス、今は忙しいからこんな時じゃないわ、後にして。」
「今じゃなきゃいつがいいんだ?」
「あなたまで私をイライラさせるつもり…うっ!」
夫婦仲の良さを証明するかのように、フェリックスはすぐにロウェナと唇を重ねた。
濃厚なキスがしばらく続き、最初は少しもがいたロウェナの抵抗もすぐに静まった。
そして俺は執務室のドアをそっと閉めて立ち去った。
-ぁ…!-
ロウェナがさっき師範の話をした時に心配していた理由がやっとわかった。
実父フェリックスが女好きをたびたび見せていたから、俺が早いうちから同じようになるのを防ぎたかったんだろうな、と推測した。
「夫とはいえ、フェリックスは手に負えない存在なのは事実だ…」
天下の女に手を伸ばすフェリックスみたいになるのはごめんだ。俺は気をつけようと心に誓いながら歩みを進めた。
そんな俺の目に、騎士たちが敬礼しながら通り過ぎる姿が映った。
-さすが男のロマンだな。-
手入れの行き届いた甲冑とキビキビした動きに感嘆していると、俺は二人の騎士の会話から聞き逃せない情報を耳にしてしまった。
私の作品に貴重なお時間を割いて読んでくださる読者の皆様に、心より感謝申し上げます。
また、皆様のご家庭と、貴方が取り組まれているすべてのことや計画が順調に進み、
さらには幸福と健康に満ちあふれた日々となりますよう、心からお祈り申し上げます。




